サイバーエージェントの最年少執行役員 メディア事業広告部門を束ねる27歳の組織づくりとは?

入社5年目でサイバーエージェントの執行役員に抜擢された山田陸さん。穏やかな人柄で、幅広い年齢やキャリアをもつ社員をまとめる山田さんの言葉からは、新しい時代の組織風土の中のリーダー像を感じることができる。

[公開日]

[著] 伊藤 真美

[タグ] ビジネススキル リーダーシップ

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組織づくりで重視するのは「関係性の質」

——2011年に入社されて、わずか4年半で執行役員とは、サイバーエージェントの中でもかなり早い昇進ですね。どのようにしてステップアップされて来られたのでしょうか

入社当初から、現在所属する自社メディアの広告商品の開発・セールスを行う組織「Ameba統括本部 広告部門(MDH)」の前身の事業部に配属され、広告を中心にメディアのマネタイズをする業務に取り組んできました。周囲の方々のご支援があって、2年目の2012年にマネージャー、2014年に局長を任せていただき、2015年4月にはAmeba統括本部 広告部門(MDH)の統括に就任しました。現在は130人の社員が所属する組織です。そして、同年10月に執行役員に抜擢され1年が経つところです。
10名いる執行役員は、30代以上がほとんど。私も1年目から地道に数字を積み上げてきた自負はあるものの、定量的な評価だけで抜擢いただいたとは考えていません。サイバーエージェントには、年齢に関係なく将来性を期待して抜擢することでリーダーを育てるという組織風土があるからこそ、執行役員という役割を任せられたと思っていますし、会社からは若手代表として、20代を引っ張っていく役割を期待されていると感じています。

——山田さんにとって「リーダーシップ」とはどのようなものですか。また、いつ頃からご自身のリーダーシップを意識されるようになったのでしょうか。

子どもの頃から目立つのは好きだったので、自然とリーダーの役割になっていたような気がします。サイバーエージェントに入ってからもそういう役割を任せていただくことが多かったですね。ですが、最初にマネージャーに昇格した時は、特に年上の方へのマネジメントなどにおいて失敗することもありました。昇格すると、自分の力でどれだけ成果を出せるか勝負したくなって、全て自分でやろうとしてしまいがちです。ですが、それでは結果的に組織の勝率を下げるということに気が付きました。メンバーに任せることはもちろんですが、時には上司を巻き込んで託すことも大事だというスタンスに変わりました。

それからもう1つ、特にリーダーシップを意識し始めたのは、入社4年目で統括に抜擢されたことがきっかけですね。自分にとってはサプライズ人事で、正直戸惑いもありました。抜擢いただいた理由として、社長の藤田からは、「山田を悪く言う人はいない。だから、みんなが安心してついてくる部署をつくれそうだ」と言われたことを覚えています。そんな形のリーダーシップもあるのかなと(笑)

当然、自分にカリスマ性があるなんて全く思っていません。そんな中、自分が人と仕事をする時のスタンスとして大事にしてきたことは「人を信じること」です。人に信じてもらうためには、まず自分が相手を信じなければならないと思っています。相手の発言や行動に対して批判的にならずに、その裏側にある思いや期待などを汲み取って行動すること。その積み重ねで少しずつメンバーとの信頼関係を築くことができたのではないかと思っています。

株式会社サイバーエージェント 執行役員 山田 陸
2011年株式会社サイバーエージェントに入社し、ブログサービス「Ameba」を中心とした自社メディアの広告営業や商品開発に従事。2012年にマネージャー、2014年に局長に昇格し、2015年4月にAmeba統括本部 広告部門(MDH)統括、2015年10月より執行役員に就任。27歳の執行役員は、現在のサイバーエージェントでは最年少となる。

——それはサイバーエージェントのオープンな社風につながるところがありますね。伸びているからという外的要因もあるかと思うんですが、皆さん仕事に対してポジティブでよどみがない。

社員である私が言うのもなんですが(笑)、一緒に働く社員は素直でいい人が多いと感じています。そんなメンバーと働く上で、私が組織づくりにおいて重視しているのは「関係性の質」です。若手が突然上に立つと、普通だと組織に軋轢が生まれてもおかしくありません。さらに、良い関係性ができていない状態で率直な物言いをしてはうまく進まないと思ってます。一対一でしっかりと信頼関係を築くことができていれば、言いたいことも遠慮なく言い合うことができます。実際、当事業部のボードメンバー6名は全員私より年上なのですが、言いたいことは遠慮なくストレートに伝えますし、それは彼らも同じです。年齢や役職、職歴などによる序列がまったくなく、あるのはミッションに対する役割と責任だけです。皆それがわかっているのでスピードが早く、無駄なストレスもありません。

若手社員の抜擢の機会を増やす「YMCA」の取り組み

——実際に執行役員となって、どのようなお仕事やミッションを担われているのですか。

統括としての仕事に加え、執行役員は役員会議に交代で参加し、メディア事業全体の現場情報を経営に報告したり、役員との議論に参加したりしています。現在、メディア事業では、インターネットテレビ局「AbemaTV」に注力していますが、他にもブログサービス「Ameba」や情報メディア「Spotlight」、「by.S」など多くのメディアを運営しています。
その他にも、サイバーエージェントの若手社員(主に20代)の活性化とリーダー育成を目的として発足した全社横断のプロジェクト「YMCA(Young Man Cyber Agent)」を運営しています。社長の藤田も、「20代で起業や上場を経験したことが、自身の成長に繋がった」と話しており、このプロジェクトには力を入れています。
現在「YMCA」での取り組みは、若手社員を対象とした新規事業企画会議、社外の若手社員との交流を目的としたイベントの開催、活躍する若手社員のクローズアップを目的とした社内報の発行など多岐に渡っています。 もともと当社では若手を抜擢する文化がありましたが、「YMCA」の取り組みによって、さらに優秀な若手社員の抜擢・起用の機会の幅が広がっていると実感しています。

社内活性化のための取り組みが組織づくりのカギ

——新しい事業を展開する上で、やはり組織づくり、関係づくりは重要な仕事だと思いますが、具体的にはどのようなことを行われていますか。

事業部のメンバーとは、基本的には毎日同じ場所で仕事をしているとはいえ、それだけで全体の繋がりをつくっていくのは難しいので、いくつか社内活性のための取り組みを行っています。
サイバーエージェント全体では、半期に1回社員総会があり、活躍した社員をたたえる表彰式や懇親会がありますが、事業部でも、毎朝の朝会、毎月の締め会(事業戦略の共有や表彰)、半期に一度社員を労う全員参加のイベントなどを行っています。これらの取り組みによって、大いに士気が向上するように感じています。
他には、定期的にボードメンバーによる合宿も行います。例えば、人の成長をテーマにした「覚醒合宿」では、メンバーの成長やキャリアアップを実現することを目的に、メンバー一人ひとりについて「この仕事を任せるともっと力を引き出せるのでは?」などといった意見を出し、議論します。

——組織づくりといっても、人と人との関係には“感情”も複雑に絡み、なかなか難しい課題です。

そうですね。いくら関係をつくろうとしていても相性はあるので、個人的な感情が入ることは否めません。そこで、「覚醒会議」では、自分のチーム以外のメンバーについても意見を出し合います。他にも、直接の上司に言えない悩みを打ち明けられる人事直結のホットラインが用意されているなど、情報が固定化しないような工夫をしています。
ここでも上司との関係性の質が低い場合、急に「最近どう?」と聞いても腹をわって話してくれないと思うので、仕事以外のプライベートの話など、日々相手に興味をもって良い関係を築いておくことが必要だと思います。そのため、私は会議でも率先して雑談を取り入れるようにしていますね。 初めて役員会議に出席した時にも、会議2時間のうち40〜50分は雑談だったことに驚きました。

——会議は効率的に短くというのが最近の風潮ですが、それとは逆なんですね。

もちろん緊急性が高いものは、必要な情報を効率的に上げてジャッジしていくことが大切だと思います。例えば、現場との数字の確認や進捗の確認は、立ち話で3分。報告のための会議は、それくらいで十分です。
もっと将来的なことを共有する場であれば、アジェンダにのらないような雑談の中に気づきやアイディアがあって、それが将来の事業を大きく拡大させていくこともあります。なので、私はあえて“決めない”会議を設定することもあります。事業以外の話や、すぐには事業に結びつかないような話題、例えばここ1年間どうなりたいかを話す会議や競合の動きを予想する会議、また、事業部のことだけでなく社会のこと、会社全体のこと、自分のこと。とりとめもなく議論します。

信じて任せてくれている、その期待に応えたい

——これから会社を運営していくにあたり、どのようなリーダーを目指されていますか。目標とするリーダー像についてお話しください。

私が考えるリーダー像は、「人格者であり、誠実であること」です。ユーモアや突破力など、人によって異なる強みがあるのは当然だと思いますが、最低限必要なのはこの2つだと思っています。 会社の戦友と飲みながら話していた時に、彼がそれを言語化していたのですが、「人格者」という抽象的な言葉を具現化するとしたら、どんな立場でも「ごめんなさい」と「ありがとう」をきちんと言える人。また、「誠実」とは、自分がやると言ったことをきちんと実行する人だと。 当たり前だと感じる方も多いと思いますが、こういった基本的なことを、どんな状況でも、誰に対しても徹底して行うのは意外と難しいのではないかと感じています。一度冷静に立ち止まって、一緒に働いているメンバーに対して自分がそれをできているかを考えることも、すごく重要だと思っています。

——執行役員となれば、部門だけでなく会社全体に対しても責務を負うわけですが、そこについてはどのような役割を認識されていますか。

経営会議などではでは、他の方が言いにくいようなことをあえて空気を読まずに意見することが若手の役割だと思っています。自分の部署の業績はひとまず置いておいて、新サービスの提案や、事業の進め方に対する客観的な意見などもするように心がけています。幸い経営陣も「意見をどんどん上げてくれ」と言ってくれていますし、やりたいようにやらせてくださっています。サイバーエージェントは、自分の担当事業に関しては、自分の責任範囲であれば自由に企画を実行して良いというスタンスなので「上が通してくれない」という悩みもありません。
はじめに、人に信じてもらうために人を信じるという信念についてお話ししましたが、それはそのままサイバーエージェントという組織が同様の信念を持った仕組みになっていると感じています。もしかすると失敗するかもしれないリスクがある企画や事業を自由に立ち上げさせてもらえるのは、信じられているから。そうなれば、自分も信じていただいている恩を返したいと素直に思いますよね。
これからも、自分を信じて任せてくださっている皆様の期待に応えられるよう、精進していきたいと思います。

——ますますのご活躍を期待しています。本日は誠にありがとうございました。

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