IoTによるイノベーションの条件「グレーゾーン解消」について経産省に聞く

経産省が主導するIoT推進コンソーシアムは現在2500社の会員企業を集め、マッチングやコンテスト、テストベッド(実証実験)などの活動を積極的におこなっている。「最大の目的はIoTビジネスの支障となるグレーゾーンを解消すること」と経産省の小林氏は語る。

[公開日]

[著] BizZine編集部

[タグ] IoT 経済産業省 IoT推進コンソーシアム

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日本のIoT戦略の全体構想とは

METI 小林
経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐 小林正孝氏

IoT、AI、ビッグデータといった技術の新しい波は、日本のあらゆる産業分野においてチャンスだと言われる。ドイツのインダストリー4.0や米国のインダストリアル・インターネットのような、官民あげての全体的な構想や戦略はどのようなものなのか?

 IoT、ビッグデータ、人工知能の時代に対応するため、企業・業種の枠を超えて産官学で利活用するために、民が主導の組織として設立された「IoT推進コンソーシアム」は現在、2500社程度まで社数が伸びている。会長は慶應義塾大学の村井純氏、副会長はNTT代表取締役社長の鵜浦博夫氏、日立製作所執行役会長兼CEOの中西宏明氏が務めている。

「第四次産業革命といわれているように、IoT、AI、ビッグデータという技術で新しい産業構造の変化が現れてきています。こうした中で経産省としては、2030年までのタームで官民の羅針盤として新産業構造ビジョンを策定しています。IoT推進コンソーシアムはさらにビジネスよりに産業が連携する枠組みです。」

 IoT推進コンソーシアムは4つのワーキンググループに分かれる。「技術開発ワーキンググループ」「先進的モデル事業推進ワーキンググループ」「IoTセキュリティワーキンググループ」「データ流通促進ワーキンググループ」だ。
このうち、2つめの「先進的モデル事業推進ワーキンググループ」が「IoT推進ラボ」の名称でスタートアップやベンチャーを中心にコンテストや企業マッチングや規制改革の環境整備をおこなっている。

中でも「IoT Lab Selection」というビジネス創出のコンテスト事業、「IoT Lab Demonstration」というテストベッド事業、「IoT Lab Conncection」というビジネスマッチングの事業が目玉となる。

 IoT推進ラボの実行組織はIoT支援委員会であり座長は、経営共創基盤代表取締役CEOの富山和彦氏、委員はグローバルなIT企業の経営者が揃う。また地方自治体との取り組みとして地方版IoT推進ラボも展開している。

「IoT推進ラボの支援委員の半分ぐらいは外資系です。なるべく国内の企業で閉じることの無いように海外の方にもきてもらって活動に参加してもらっています。Appleのバイス・プレジデントのトニー・プレビンス氏などにも来てもらいました。」

 具体的な活動目的としては、先進的プロジェクトを選定し「資金」「メンター派遣」などだが、それだけでは民間のベンチャーやスタートアップ支援プログラムと変わらない。経産省として、期待されやるべきことは「規制見直し・標準化」であり、中でも「グレーゾーンの解消」だ。

 実際にIoT Lab Selectionという選定コンテストでファイナリストとして残った企業にとって、グレーゾーンとは何で、どのように解消されたのだろうか?2016年におこなわれた「IoT Lab Selection」の受賞プロジェクトから、その内容を見ていく。

IoTサービスを可能にする「グレーゾーン突破」の例

 グランプリを受賞した(株)Liquidは決済ソリューションを提供するスタートアップ企業。選ばれたプロジェクトは「指紋による訪日観光客の個人認証」のプロジェクト。人工知能によって指紋を超高速で認証する技術を開発した。訪日観光客向けのホテルのチェックインにはこれまでパスポートが必要とされてきたが、現物が必要か、デジタル化されたパスポートで代替可能かは曖昧だったという。

「指紋認証で呼び出されるパスポートで代替可能であることをクリアにするために、厚労省との調整を行いました。これによって、パスポートのICチップを一度読み込ませれば指紋認証でホテルのチェックインが出来ることになったのです」(小林氏)

 現在このシステムは都内の一部ホテルや箱根、湯河原のホテルで実証実験中だという。

 第二回のIoT Lab Selectionに選ばれたユニファ(株)は、保育園の見守り業務をデジタルで支援するサービス。経験の浅い保育士でも園児を安全に見守れるようにするための、スマートフォン/センサー/ロボットなどのテクノロジーだ。
こちらも、これまでは手書きやアナログ主体の見守り記録をどこまでデジタル化できるかが曖昧だった。これらをクリアにすることで、園児のお昼寝の見守りなどを動画カメラやベッドセンサーによるサービスが可能になった。

 また(株)アフロはスマートフォンによるタクシーメーター機能を持つアプリケーションを開発した。スマートフォンでのタクシーメーターによって、走行距離情報取得や運賃情報や日報業務の効率化が可能になる。しかしこれまでは、タクシーメータには改ざん防止のための「鉛封印」を施すことが必要とされていた。これを「電子的封印」の要件を明らかにすることで、サービスが可能になった。

「法律的には明らかになっていても、慣例的に行なわれていなかったり、基準が曖昧なルールがかなりあります。IoTでは、社会や福祉、教育など様々なサービスの可能性がありますが、スタートアップにとってグレーゾーンはリスクでもあります。特に法令的なリスクだけではなく、個人情報や取得データの活用などの契約にまつわるリスクも多くあります。事業の可能性を停滞させないために、こうしたリスクの解消に務めることも官の役目だと思います」(小林氏)

テストベッド実証の成果も規制見直しがカギ

IoT LABテストベッド
IoT推進ラボWebより引用

 IoT推進ラボのイノベーション支援はベンチャー、大企業を問わない。とくに「IoT Lab Demonstration」というテストベッド(実証実験)は、製造業、インフラ・サプライチェーンなどの分野で重点的に行なわれてる。
大きな可能性としては、大手製造プラントの故障検知や予兆保全などがあげられる。

「IoTによる予兆保全はビッグデータ解析などでかなり進んできています。これまでの産業保安の法令では設備のメンテナンスの時期や点検については、かなり細かく規定されてきました。予兆保全が進化することで、従来の規定にとらわれずより長く使用したり、逆により早く交換することで安全性を高めることが可能になりました。このことの経済インパクトは製造業にとってかなり大きい。しかしここでも、従来の産業保安法制も変えていく必要があります。これについても取り組んでいます。」(小林氏)

日本が欧米のインダストリアル政策に遅れをとらない競争プラットフォームをつくるためにも、規制改革、ルール整備、国際標準化などの整備が急務だ。課題解決のためのIoT推進ラボと上部団体のIoT推進コンソーシアムの施策は、今後も持続的に行なわれる。

 ベンチャー、スタートアップはもちろん、企業の事業開発や企画部門にとって、「IoT推進フォーラム」の活動にコミットすることで、ボトルネックとなる問題を解消できる可能性があるかもしれない。たとえばオープン・イノベーションによって起ち上がったプロジェクトを「IoT Lab Selection」に申請するメリットもあるという。

「事業開発に伴うグレーゾーンや、データの流通や活用に伴う契約や同意の取り方などは、IoTの事業を起ち上げるための第一歩です。ここをしっかり固めてもらうために経産省として力を入れていきたいと考えます。」(小林氏)
 IoT推進推進プロジェクトの第四期の募集は2017年2月から開始される予定だ。

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