クリステンセン教授の新刊『Competing Against Luck』で語られた「ジョブ理論」とは

ブックレビュー:“Competing Against Luck: The Story of Innovation and Customer Choice”

 クリステンセンの待望の新刊をご紹介する。2015年の来日講演は記憶に新しいところだが、実はビジネス書は4年ぶりとなる。クリステンセンは商品購入メカニズムを解明した「ジョブ理論」を本書で強化し、最新の事例で紹介している。ジョブ(Job to Be Done)については、クリステンセン以外にもアレックス・オスターワルダーらの『バリュー・プロポジション・デザイン』(翔泳社)、ビル・オーレット『ビジネス・クリエーション!』(ダイアモンド社)、エヴァン・ルーミスらの『巻き込む力』(翔泳社)その他多くの書籍で顧客価値を説明するために紹介されており、事業成功に不可欠な理論という認識が広がっている*。改めて「ジョブ理論」のパイオニアが顧客価値のメカニズムに踏み込んだ新刊“Competing Against Luck”をいち早く紹介しよう。
 *(訳語は「片づけるべき用事」、「顧客の仕事」、「ジョブ」などさまざまです)

[公開日]

[著] 津田 真吾

[タグ] 事業開発 企業戦略 job to be done ジョブ理論 顧客のジョブ 顧客体験

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顧客が製品を買う理由から考える

 既存製品を改良し、新しい製品を開発する担当者は、顧客のニーズを理解している“つもり”だったり、理解したことに“なっていたり”しますが、実際のところ、製品をリリースして世に問うまで不安はぬぐえません。発売後にどうなるか、まるで運に支配されているような感覚です。しかし、人はなぜ製品を購入するのか、というメカニズムを理解することによって以下のことが達成できます。

  • 再現性の高いイノベーションが可能になる
  • 顧客がプレミアム価格を支払うような商品が開発できる
  • 運に任せたまま開発する競合に勝てる
 

 マッキンゼーの調査によると、イノベーションを重要課題として挙げる経営者は84パーセントにのぼる割に、94パーセントは自社の結果に不満足だと答えています。ステージゲート等の仕組みは導入され、顧客データもふんだんに集めているにも関わらず、この結果です。

 「顧客が製品を買う理由」が整理されていないため、膨大なデータを収集しても、イノベーションにつながらないのです。マーケティングデータから得られる情報は、「あの顧客はこの顧客に似ている」「あの製品はこの製品に似ている」「あの顧客は過去にも同じことをした」「68%の回答者はAよりBを好む」という意味合いのもので、製品を買う理由ではありません。

 人が製品を買うのは、「進歩」をしたいためであり、顧客が望む進歩、つまり「ジョブ」を把握することがメカニズムの解明につながるのだ、とクリステンセンは語ります。

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