クリステンセン教授の新刊『Competing Against Luck』で語られた「ジョブ理論」とは

ブックレビュー:“Competing Against Luck: The Story of Innovation and Customer Choice”

[公開日]

[著] 津田 真吾

[タグ] 事業開発 企業戦略 job to be done ジョブ理論 顧客のジョブ 顧客体験

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「顧客が望む進化=ジョブ」を発見するための“5つのレンズ”

 ジョブを発見するためには、何か特別なことをする必要はないと言います。同じ現場であっても、異なるパラダイム、つまりジョブのレンズを通して観察することでかつて未発見だったジョブを発掘することができます。本書ではジョブを探すために有効な5つの観点が提示されています。

5つのレンズ

  1. 生活に身近なジョブを探す
    ソニーの盛田昭夫氏は、人の生活を注意深く観察しウォークマンの開発に至った。また、事前のマーケティング調査の結果では不調だったものの、発売を決行し大ヒットに繋げた。
  2. 無消費の競合品を探す
    Airbnbの顧客の40%はAirbnbがなければ、旅行をしないという。無消費の状態にあってもジョブはある。
  3. やりくりや代替行動を探す
    「親が子供の貯金を預かる」という代替行動をヒントにING Directは貯金するという作業を簡便化し、誰でもできるようにした。多くの低所得者などの口座を集め、2012年にCapital Oneに900億ドルで売却された。
  4. 人がやりたくないことを探す
    共稼ぎの親なら、風邪気味の子供を病院に連れて行く大変さは身に沁みる。ドラッグストアに併設されたMinute Clinicは診察待ちのイライラを大幅に解消するイノベーションだ。
  5. 予想外の使われかたを探す
    ベーキングソーダ(重曹)は本来調理用の製品だった。各家庭での使われ方を観察したところ、掃除や歯磨き、脱臭など意外な用途で使っていることを発見し、Arm&Hammerは関連商品を数多く開発。オリジナル調理用製品の売上は全体のたった7%となるまで成長した。

製品を雇う「ストーリー」と「ジョブスペック」

 ジョブは身近なところにあるからといって、簡単に見つかるとは限りません。特に、ジョブの感情的、社会的な側面をとらえるのは難しいものです。固定観念が邪魔をしやすく、顧客もめったに口にせず、紐解くのには複雑です。加えて、現状の顧客体験を深く理解していなければ、新しく提案するイノベーションはそれに代わって雇われはしません。しかし、だからこそ、その複雑なジョブを整理し、よりよい顧客体験を提案することで大きなイノベーションにつながると言います。

 複雑なジョブを紐解き、整理するうえで2つの手法が役に立ちそうです。

  • 顧客が製品を現在“雇って”解決しているストーリー
    ジョブを抱えている顧客の現在の体験をストーリーとして深く記述する
  • ジョブスペック
    ジョブの解決策に求められる要件をリストアップする

 そして、そのうえで3つのステップがカギになると言います。

  1. ジョブの発見
  2. 求められる体験の提供
  3. ジョブ中心の統合

 この3つのステップをクリアすることで、IKEAやUBER、ディズニーのような「目的ブランド」、すなわち「◯◯(行為)がしたいときは□□(ブランド名)」という顧客が持つ目的意識とブランドが直結する例をいくつも紹介しています。

バックナンバー