リーダーが「哲学を説き、プロセスを教える」組織が、“外資系金融の常識”を打ち破る理由

第4回:鼎談ゲスト コムジェスト日本法人 マーケティング&IRマネージャー 渡邉敬氏 後編

 埼玉大学の宇田川元一准教授は前回のコラムにて、イノベーティブでありつつ組織としての合理性をもつ「協働する共同体」の一例として、コムジェスト・グループに触れた。1985年にフランスで設立された独立系の投資運用会社である同社は、世界5地域に拠点を持ち、20以上の国籍を持つ約140人の社員が在籍する。従来型の投資運用会社のイメージとは真逆の実態を持ち、常識に流されず自らの信じる道を進む組織は、どのように実現しているのか? 宇田川氏と、コムジェスト日本法人のマーケティング&IRマネージャーである渡邉敬氏、日本でいち早くホラクラシー経営に取り組んできたダイヤモンドメディア株式会社の武井浩三代表取締役が語り合った。前編に続き、今回は後編をお届けする。

[公開日]

[語り手] 渡邉 敬 宇田川 元一 武井 浩三 [取材・構成] やつづかえり [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークスタイル 事業開発 組織開発 ホラクラシ―

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ディスカッションできる組織にするために、スペシャリストではなくジェネラリストを育てる

宇田川:
 コムジェストにおいて、ポートフォリオマネージャーの採用や育成はどのような方針でやっていますか?

宇田川元一埼玉大学 人文社会科学研究科 准教授 宇田川元一氏

渡邉:
 会社には新卒で入って現在チームリーダーをしている人もいますし、他の会社での経験が長い人もいます。チームを強化する方法として、生え抜きと外から来た人を混ぜることで刺激を与え合う環境を作っているのです。採用にあたっては「自分よりもスマートな人を採用しましょう」という方針があります。

渡邉敬コムジェスト・アセットマネジメント株式会社 マーケティング&IRマネージャー 渡邉敬氏

宇田川:
 それは、スタープレイヤーがいるタイプの組織では難しいことですね。

渡邉:
 はい。重要なのは会社の哲学への理解と、個人ではなくチームのサクセスにフォーカスできることなんですね。例えば、この1年以内に入社した人で業界経験は30年、以前は大手ファンドのナンバー2だったという人がいますが、うちにはアナリストとして入り、まだポートフォリオマネージャーという肩書きはありません。そういう肩書きでもアクセプトできるようなパーソナリティを持った人でないと入ってもらえないんです。

宇田川:
 通常、アナリストというと「若手の仕事」というイメージがありますが。

渡邉:
 そうですね。ファンドマネージャーやポートフォリオマネージャーに対して調べてきた情報を提供するのがアナリストの仕事です。ただ、うちの会社は運用担当者全員が企業リサーチをするというポリシーで、ポートフォリオマネージャーも、アナリストを兼務します。そこには、スペシャリストではなくジェネラリストを育てたいという意図もあるんです。スペシャリストになってしまうと、「この人がそう言うならそうなんだ」ということで、全員でディスカッションができなくなるからです。チームとしてどう強くなるかと考えると、フラットで、各自の担当領域を超えてディスカッションが生まれる環境が重要だったのです。

宇田川:
 普通に考えると、自分が調べてきた投資先に対して反対意見が出たりするのは受け入れがたいこともあるんじゃないでしょうか。そこはどういう風に受けとめられているのでしょうか。

渡邉:
 運用チームが集まったときによくリマインドするのが「投資先の企業を好きになりすぎないこと」です。運用会社が一番大事にすべきなのはお客さんのお金を増やすことなので、会社を好き嫌いで判断してはいけないんですね。特にヨーロッパなんかは投資銘柄数も少なく、15年以上に渡って投資を続けているような会社もあるので、どうしても好きになってしまうのですが、それで判断が鈍ってしまってはいけません。そのため、違う担当者があえて売る材料のレポートを書いてみて、それを元にディスカッションしてみるようなこともやっています。

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