福岡市で生まれ広がる「ママグロースハッカー」という働き方

KAIZEN Platformが「Growth Hacker Awards 2017」を発表

KAIZEN Platformは、同社のプラットフォームコミュニティに登録するグロースハッカーを表彰する「Growth Hacker Awards 2017」を発表した。多くの受賞者によるWebサイト改善の知見が発表され、また福岡市の創業特区プロジェクト「Growth Hack for Women」から生まれた「ママグロースハッカー」という新しい働き方の成果も紹介された。

[公開日]

[取材・構成] 京部康男 (Biz/Zine編集部)

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グロースハッカーのネットワークを築いたKAIZEN Platform

KAIZEN Platform Inc. Co-Founder &CEO 須藤憲司
KAIZEN Platform Inc. Co-Founder &CEO 須藤憲司氏

KAIZEN Platformは創業以来「グロースハッカー」をネットワークしてきている。ビジネスモデルとしては、フリーランスなどのクリエイティブ人材のスキルと、クライアントをマッチングさせるクラウドソーシングサービスであるが、特筆すべき点はWebサイトの改善案件にフォーカスしている点だ。グロースハッカーとして登録している人は、業務委託(フリーランス)が多いが、起業をめざすクリエイターやパートナー企業の社員デザイナーなどもいる。
「Glowth Hacker Awards」は2015年から開催され、Webの改善事例の発表の場として、さらに女性の活躍、地方創生、新しい働き方の提唱の場としても次第に認知されてきている。

CEOの須藤憲司氏は今回のオープニングキーノートで、KAIZEN Platformは、仕事をオファーするクライアント(顧客)と、仕事をおこなうグロースハッカー両者をつなぐプラットフォームと説明する。須藤社長によれば、このプラットフォームは、顧客とスキル人材が適材適所でつながり、経験を積むことで成長できるという「事業と人の成長のプラットフォーム」をめざすものだという。

「われわれのビジョンは新しい仕事の創造。2020年には100万人がKAIZENのプラットフォーム上で仕事をするという世界を実現したい」
と語る須藤社長は、グロースハックという仕事のあり方が新しい働き方であると述べる。

Glowth Hacker Awards の受賞者

Glowth Hacker Awards の受賞者
Glowth Hacker Awards の受賞者

今回、Glowth Hacker Awards 2017の受賞者は以下となった。

【スポンサー賞】
・パソナテック グロースハッカーMVP賞 桃井ありさ
・クレディセゾン賞 平野順子 
・スタッフサービスグループチャンスを。賞 片岡彩子 
・いい部屋ネット賞 岩野正史
・DODA“未来を変える”プロジェクト賞 花田貴志
・とらばーゆ タウンワーク賞 ママWebグロースハッカー養成講座 第一期卒業生 

【部門賞】
・求人部門賞 北古賀紀行
・EC・通販賞 鎌刈渉
・自動車・バイク部門賞 岡村しんし
・不動産部門賞、スマートフォン賞 淵上喜弘
・オープンオファー賞 宝寿原実加 
・オープンオファー賞、金融部門 福井渡

【グロースハッカー大賞】
・牧野健太郎

表彰式の後では、受賞者の代表によるサイト改善のポイントや自己のノウハウとして、コメントが語られた。

「ファーストビューでユーザーのベネフィットを訴求し、スムーズな動線を配慮」(ガリバーのサイト改善を手がけた自動車・バイク部門賞の受賞者の岡村しんし氏)

「ユーザーを後押しするコンテンツとしては写真が重要。効果があるのはテーマに即した人物や女性の写真。膨大なストックPhotoからユーザーに安心感を与える画像を選んだ」(求人部門賞の北古賀紀行氏)

「ユーザーのワクワク感を生むために不動産の物件の画像を大きくし、カード型のデザインで見やすくした」(大東建設のモバイルサイトを手がけたスマートフォン&不動産部門賞、スマートフォン賞の淵上喜弘氏)

「当初センターに電話のボタンがあったが、中古車の場合は飲み屋ではないのでいきなり電話する人はいない。夫がネットで中古車を買った経験をヒアリングしながらメリハリのある情報設計をおこなった」(オープンオファー賞の宝寿原氏)

福岡創業特区プロジェクトと「ママグロースハッカー」の軌跡

女性の社会進出が語られながらも、実際には第一子出産を機に半数の女性が仕事を辞め、退職後4割の女性が辞めたことを後悔しているという。 こうした課題を背景に、リクルートジョブズとKAIZEN Platformが2015年に始めたのが「Growth Hack for Women」だった。妊娠・出産時にやめなくてすみ、育児と仕事の両立によるストレスを減らし、 無理なく始められる仕事を作るためには、グロースハッカーという新しい働き方が適している。KAIZEN Platformは福岡市での豊富な実績があり、福岡市の創業特区としての政策の後押しもあった。そして今回、「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」卒業生のママグロースハッカーたちが見事に受賞した。

「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」は、約8ヶ月間、250時間以上の時間をかけてデザインやWebの基礎から学ぶというもので、リクルートの雑誌やWebをはじめ各企業のWeb改善などの課題を通じてデザインやWebづくりのスキルを習得する。

第一期生は12名。年齢は20代から40代で主婦が中心だがシングルの女性を3割いる。前職ではデザイナー、エンジニア、保育士など様々で、はじめてクリエイティブを学ぶママや10年のブランクを経て復帰したママもいる。月収は10万円〜20万円代などで、卒業後半年で目標だった「月収30万円」を達成できている人もいるという。

元プログラマーだった牧本玲子さんは、結婚して専業主婦になったものの物足りなさを感じ、復職したものの仕事に忙殺され、保育園に迎えに行く時間に遅れてしまったことがきっかけで仕事を辞めた。その時は空回りと挫折感を感じたという。
グロースハッカー養成講座に入ったが、昨年の熊本の震災で半年間遅れた。それでも高速バスで2時間かけて熊本から福岡に週2回通うという日々を経て、今では安定的な収入を得られている。

平野実子さんは、イベント会社退職後、孤独を感じベビーマッサージの仕事を始めた。今ではベビーマッサージとしての仕事とグロースハッカーとの仕事で活動範囲は広がっているという。

登壇した二人とも、1日の仕事のスケジュールの自己管理の難しさはあるが、グロースハッカーの仕事そのものは柔軟でやりがいもあり理想的な仕事だと語った。

UXは経営指標

現在、政府でも「働き方改革」が提唱され、自治体や企業を始め様々な取り組みが始まっている。KAIZENの取り組みは「Web改善のクラウドソーシング」というビジネスを通じて、新しい働き方と組織のあり方、コミュニケーションのあり方を提唱している。
さらに「Web改善」を単なるA/Bテストではなく、企業の事業機会を最大化するためのものと位置づけており、須藤社長は「UXは新しい経営指標」と言い切る。

またテクノロジー面では、AIやデータ解析の取組みを進めている。今回、取得したデータから課題のあるページやリンクを抽出する機能や、サイト改善のポイントを特定し簡単に依頼できる新機能を追加したアップデートが発表された。

KAIZEN Platformの事業には人材、組織、社会に対する明瞭なビジョンが織り込まれており、働き方の新しい可能性を提示している。

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