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「イノベーションのジレンマ」の大誤解

社内起業家人材は、なぜ大企業を辞めていくのか──イノベーションのジレンマの5原則

「イノベーションのジレンマ」の大誤解:第4回

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 前回は、社内における「人材」にフォーカスを当てました。今回は、その個人を取り巻く「社内」「組織」にフォーカスし、著者グループが日常的に体験している、既存企業の社内で起こっている新規事業、イノベーションの開発活動について解説します。特に、「社内事情」「目利き人材」「既存事業部門や抵抗勢力への調整」などの観点から、なぜ稀有な「社内起業家人材」が大企業を続々と辞めている現象が起きているのか、その要因を整理していきます。

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大企業から新規事業が生まれない、多くの企業に共通する “6つの社内事情”

 そもそも、この連載「『イノベーションのジレンマ』の大誤解」が始まった経緯について触れておきます。著者グループは日常的に多くの既存企業の新規事業開発の支援をしていますが、社内には、「新規事業開発以前の問題」がほとんどであることを痛感しています。話していることの大半は「市場」や「顧客」の話ではなく、「社内の事情」です。実際に起こっている事例を積み上げていくと、会社や業界を超えて、ほとんどが一定のパターンに当てはまっていることに気づきます。

  1. 既存事業部が抵抗する
    →結果、事業部が受け入れられる、下請け的なスモールビジネスしか取り組めない
  2. 役員、経営企画部門、財務部門から合理的かつ確実な成功シナリオが求められる
    →結果チャレンジングな事業は、承認されない
  3. 高コスト構造にフィットする、初めから大きな市場、大きなビジネスばかりに目がいく
    →結果、初めから大きいと見込めるマーケットなどないため、ほとんどが参入できない
  4. 過去の成功体験から、自社は決して潰れないという盲目的な自信がある
    →結果、新規事業開発に対する切迫感やインセンティブが働かなくなる
  5. バブル崩壊後、コスト効率を追求したため、社内にあるケイパビリティを活用しなければならない
    →結果、他者の資源を活用できないため、新規性のある、大きなビジネスは出てこない
  6. 社内のコンセンサスを得、承認プロセスをどのように進めるかが一番の関心事
    →結果、資料収集や作成に時間を取られ、また、他社の事例を非常に気にする

 我々は既存企業の新規事業担当者と面談するたび、同じことを何回も聞いています。最初は「新規事業」の話をしているのですが、結局「社内の課題」に辿り着きます。著者グループは全員が大手企業出身の「起業家」でもあるため、ご担当者のお気持ちは分かる反面、その活動自体がイノベーションに程遠いということも分かります。

 そして、イノベーション創造ができないパターンはクリステンセンの『イノベーションのジレンマ』をはじめとするイノベーション研究の世界ではほぼ分析され、『イノベーションのジレンマ』を読み進めると、“日本企業のイノベーションあるある”が既に提示されていることがわかります。そして、ここからが深刻なのですが、多くの企業の新規事業開発部門の担当者をはじめとして、役職員の方々は『イノベーションのジレンマ』を精読され、そして一度は理解をされているのです。それでも、イノベーションのジレンマにあるパターンに見事にはまり、変化できないのです。

 このことを、慶応大学の村上恭一教授、同書出版元で本連載の掲載メディア・ビズジンの編集長との雑談から端を発し、整理整頓してみようとなったことがきっかけです。クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』を読み、理解していながらジレンマから脱却できないというジレンマ、まさに「『イノベーションのジレンマ』の大誤解」というジレンマ、その真因を探るためにスタートしたのがこの連載です。

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“新規事業経験”のないエース級人材に、新規事業の目利きをさせるジレンマ

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この記事の著者

鈴木 規文(スズキ ノリフミ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

合田 ジョージ(ゴウダ ジョージ)

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村上 恭一(ムラカミ キョウイチ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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