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インダストリーX.0とは何か?

「成果型エコノミー」でのものづくり企業の選択肢──ディスラプターの脅威が増すデジタル変革の時代

第6回

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 第1回から第5回まで、インダストリーX.0の世界観を紹介し、「モノ」から「サービス」へ、「プッシュ型」の供給モデルから「プル型」の成果型エコノミーへのビジネスモデルへの転換の必然性を説明した。伝統的なものづくり企業と、いわゆるスタートアップなどの新興デジタル企業との対比の中で、大企業ならではの取り組みの難しさや、新興デジタル企業ならではの強みなどに触れながら、その実践的なアプローチを紹介してきた。  デジタル化の先にあるインダストリーX.0の世界では、企業が製品・サービスに対する顧客ニーズを的確に捉えて、その価値を最大化した状態で顧客に提供し、その一連の流れが企業単体ではなく、デジタルの世界で有機的に連結されたエコシステムの中で価値創造がされる。最終回となる第6回では、エコシステムから価値を最大化する「ブリリアント・イノベーター」へと変革するために、企業が今から取り組むべきことを紐解きたい。

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アクセンチュアの調査でわかった、改良に終始する“リノベーター”とイノベーションに成功する“リインベンター”の違いとは

 今後、デジタルテクノロジーは、産業全体で新しいビジネスモデルを創出し、大きな価値を生み出し続けるだろう。最近では日本マーケットにおいても、インダストリーX.0が提唱するような「モノ」から「サービス」を含めた総合的価値へのシフトがより注目されるようになってきた。

 たとえば、この1年の間で、従来の「保険会社が病気になったときに保険金を支払う」というプッシュ型の価値提供の概念を捉え直した「健康増進型保険」が出てきた。これは、健康でいることこそが価値であると成果を再定義して、ウェアラブル端末やスマートフォンを活用して活動を計測し、健康であることに対して還付や保険料の値下げを行うもの。保険会社は、従来提供しきれなかったサービスを顧客起点で提供するというビジネスモデルへ変革を実現しているのだ。

 こうしたイノベーションはさまざまなデジタルテクノロジーの進展と、それらの組み合わせによって大きな変化を生み出した結果だ。またそれらテクノロジーが低価格で使用できるようになったことも背景にある。ただし一番大きな潮流は、顧客や消費者が「モノ」や「サービス」そのものではなく、そこから得られる体験や成果に対して合理的な選択を行うという点だ。つまり、「成果型エコノミー」に変化してきているのである。

 顧客は、もはや間接的な声を拾って企画・開発された製品には満足しない。そのため、ものづくり企業は顧客の要求をこれまで以上に正確に捉えるだけでなく、顧客自身が気付いていないようなニーズまで掘り起こさなければいけない。これまでのプッシュ型の「規模の経済」をベースにしていたものづくり企業のビジネスモデルが崩れ出す中で、大規模な生産設備を持たない新興企業が、こうした競争環境の変化に気付き、デジタルテクノロジーを駆使して顧客への提供価値を高め、急速な成長を遂げている。

イノベーションに取り組む際のリインベンターとリノベーターの違いイノベーションに取り組む際のリインベンターとリノベーターの違い

 イノベーションに成功した企業をreinvent(改革する)から“リインベンター”、イノベーションに至らなかった企業をrenovate(改良する)から“リノベーター”と呼ぶことにする。イノベーションに取り組む際の手段として、リインベンターと、リノベーターに関して、アクセンチュアが行った調査で興味深いことがわかっている。

 消費者の動向を確かめる手法について、リインベンターはクラウドソーシングや外部ユーザーからの情報、オンラインリサーチツール、エスノグラフィックリサーチなどのユーザーの「リアルな生の声」を第一に重視している。これに対して、リノベーターは(既存市場における)トレンドの監視と予測を第一に重視し、供給サイドに視点が偏っており、従来のアプローチに依拠しているのを物語っている。リノベーターは製品の特長に改良を加える、という従来のやり方から抜け出せずにいるのだ。

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ものづくり企業が成果型エコノミーのエコシステムで成功する“3つのポイント”

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この記事の著者

花岡 直毅(ハナオカ ナオキ)

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