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宇田川先生がNTTドコモの新事業開発責任者に聞く、“起業家のように考え自己決定する人材”の育成とは?

株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 笹原 優子氏、金川 暢宏氏、埼玉大学経済経営系大学院 宇田川 元一氏

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 既存産業の成熟化と将来の人口動態の変化を受けて、国内の大手企業の多くが新規事業開発に対する取り組みを進めている。しかし、十分な成果が創出できていないと悩む企業も多いという。新規事業開発とその支援を企業の成長のために活かすにはどうしたらいいのか。著書『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』で、組織におけるナラティヴ(双方にある、解釈の枠組み)の溝が何かを説き、組織での対話を促進する考え方を研究する宇田川元一氏と、NTTドコモで新規事業創出を目的としたプログラム39works®、docomo LAUNCH CHALLENGE(以下、LAUNCH CHALLENGE)を運営する笹原 優子氏、金川 暢宏氏が議論した。その内容を2回に分けて紹介する。

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想定外の事態を“意味づける力”が、新規事業を推進する

宇田川 元一氏(埼玉大学経済経営系大学院 准教授、以降敬称等略):笹原さん、金川さんはNTTドコモで新規事業創出を支援されていますね。どんなことを重視して事務局を運営なさっていますか?

笹原 優子氏(株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 グロース・デザイン担当部長、以下敬称等略):現在行っている新規事業創出プログラムとしては、R&D社員向けの39worksと、全グループ社員向けのLAUNCH CHALLENGEがあります。アイデア自体をみるのはもちろんですが、最近は、特にLAUNCH CHALLENGEについては、提出した人がどんな人かとアイデアが初期の提出からどれだけ変わったかも視野に入れ、選別しています。

宇田川:「人物」と「アイデアの変化率」を見るわけですね。ドコモに限らず、私は新規事業創出プログラム担当者とお話しすることが多いのですが、新規事業開発をやりたいという社員が「いいアイデアなのに、どうしてこれがわからないんだ!」とかたくなになってしまう事例をよく聞きます。新規事業をやりたい社員は、何らかの形で理想と現状のギャップを感じて不満を持っている。それは起業家精神と言えるとは思うのですが、アイデアに固執してかたくなになってしまう状況は損だと思うんです。

 これは私の研究の大きなベースである、カール・E・ワイクのセンスメーキングの理論と関連しています。ワイクは不測の事態に対して、様々な手がかりを結びつけながら、そこに意味を生成していくことが重要であると主張しています。

 ワイクの研究に、航空母艦の甲板や原子力発電所など、小さなミスが大事故につながるリスクが高い組織についてのものがあります。大きなアクシデントが起きない高信頼性組織 (high reliability organization)には、想定外のものに対して、それを例外として無視するのではなく、そこに何か大きなアクシデントにつながる予兆を読み取って意味づけようとしたり、小さな失敗の報告をむしろ積極的に大事故を防いだと評価したりするマインドが日々形成されていると述べています。つまり、想定外の出来事に対して、むしろ積極的に向き合い、意味を生成していこうとすることが重要だというわけです。

 だから、周りがアイデアに対して疑問を差し込んだり、反対したりして逆風があるのは、新しい意味を発見する希望だとも言えると思うんです。想定していた自分の延長線上の世界はいったん途切れるけれど、まったく違う視点で世界を見る手がかりが得られるわけですから。

金川 暢宏氏(株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 事業創出・投資担当課長、以下敬称等略):そうですね。LAUNCH CHALLENGEは今回で3回目の開催ですが、実は2回目まではアイデアを評価していました。でも、最初の提出時点のアイデアは、どんどんピボットしていくべきものなので、3回目は「アイデアの変化率」を評価ポイントにしました。初期にいいアイデアと思えるものでも、インタビューやヒアリングなどの市場調査の結果などを受けて、内容を柔軟に変化させていける人は、事業化の確率が増すと考えています。

宇田川:この後じっくり、ドコモでの取り組みや新規事業創出が企業に与えるメリットについてお聞かせください。

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