コードを書く経営者ドワンゴ川上会長「プログラミングこそが基礎教養」

デブサミ2015(2015年2月19日)講演レポート

[公開日]

[取材・構成] 京部康男 (Biz/Zine編集部)

[タグ] ビジネススキル ビジネスIT

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最近の開発って宗教っぽくない?

今のプログラム開発の現場を見て「コンピュータの動作原理を知らない人が作っている」と感じているという。川上氏は、CPUや帯域などの理論から検証するが、今のエンジニアは、実験で計測して原理まで遡らない。川上氏はこれを「宗教的」とコメントした。

アジャイルとか、スクラムとかいろんな方法がありますよね。もちろん方法的には効果があるんでしょうが、ちょっと宗教っぽいなあと。どこが宗教っぽいかというと、宗教の人って、批判すると怒り出すんです(笑)。

自分が考えたり、おこなった結果よりも、誰かがやった結果に頼るエンジニアが増えていると警告する川上氏。最近会った人から得たという、半導体業界の話を披露した。

半導体って過去40年間のムーアの法則で進歩してきた。それで何か生み出したかという問の答えが「膨大な数の二流のエンジニア」なんだそうです。すぐれた回路設計や性能に注入するよりも、新しい工場を作って、さっさと作った方が早かった。すぐれた回路設計者よりも二流のエンジニアの方がパフォーマンス出していたのが、過去の40年。 それで、ムーアの法則が効かなくなった現在は、一流の回路設計エンジニアしか食えない時代になっているっていうんですね。
これって、どこかの業界の未来だと思いませんか ? みなさん。
Web業界は、サーバーの性能の向上、オープンソースの開発基盤の性能向上、AWSにまかせておけば楽ちん。開発基盤とエンジニアの環境は、どんどん良くなっています。 これが何を生み出すのかというと、「膨大な数の二流のWebエンジニア」ではないかと。その生み出している総本山が、このデブサミじゃないかと、そんなことを思うわけです。(会場爆笑)

こういう性能の進化(スケーリング)がいつまで続くのかを意識しておくことが必要だ。性能を今後向上させようとする時に必要なのは、「もっと深いところ、原理的なところへの理解」だと語る。そのことが、川上氏のこれからの仕事への意向につながっている。

これから目指したいのは、理論的な限界でサービス設計をする会社。普通の工業デザインでいうデザイン優先やユーザー体験優先ではなくて、できることの中でベストを尽くすということが本質だと思うんです。制約条件を超えるような基盤で勝負をしていく。そういう方向で舵をとりたいと思っています。 最近は、自社専用ハードウェア、自社専用データセンターといった、基盤のところでの違いで、ユーザー体験を与えられることを考えています。 たとえば自社専用シェアハウス。これに一番力を入れたい。エンジニアが集団で生活するシェアハウスとか作れれば楽しいんじゃないかということを考えています。うちの社員は知らないと思いますが(笑)。そこには、10Gの専用線と野菜室兼用のサーバールームがあればと思っています。

角川の編集者もプログラミング言語を

ここで、時間配分を間違え、早く終わりすぎたという川上氏。会場から質問を受けつけた。会場からの質問は、「技術の立場とユーザーのニーズから企画する立場のバランスを、どうとっていくか」といったもの。これに対して、川上氏は、企画者と開発者の距離が縮まることが重要だと答える。

企画者と開発者の関係については、別の考え方もあって、企画者は開発者のことを知らない方が良いという考え方もあります。これは開発の現場を知ると、企画に手心がはいっちゃうのが良くないという考えです。 そういう面もありますが、やはりビジネスをスケールさせるには、企画者と開発者の距離が近くなければいけないんです。日本のWeb企業の戦略というのは、基本アメリカで流行っているものを真似するものが多かった。そういう時代では、文系の人間が、エンジニアを集めてきて、指示する形でした。そのやり方は、外部にモデルがあって、それをコピーする段階ではうまくいきますが、これからは難しい。新しいものを作ろうとする時は、企画をつくるところと開発の距離が近づかないといけないんです。もっと欲を言えば、開発者が企画するのが一番良いんですね。
なので、うちは今年の新卒なんかでも、普通の企画職でもプログラミングのコースを受けさせているんですよ。来年の4月からは、角川も含めてこれをやります。 角川に編集者として入社する人でも、これからはプログラミングの研修を受けさせられるんですよ(笑)。そういう基礎的な知識がないと、これからのサービス設計は出来ないと思うんです。プログラミングは人類の基礎教養だと思います。

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