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「イノベーターシップ」による事業創造

優良企業が“20年もたない”時代に「ビジネスモデル・イノベーション」に習熟する意味

第3回:多摩大学大学院 教授 / 河野 龍太 氏

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 ビジネスモデルを一枚のマップに可視化して俯瞰し、イノベーション構想をデザインできる画期的なツールとして、世界的に浸透が進んでいる「ビジネスモデル・キャンバス」。9つのブロックのうち、中核となる「バリュー・プロポジション(提供価値)」や「カスタマーセグメント」を深掘りする「バリュー・プロポジション・キャンバス」とともに、欧米では多くの企業で活用・実践され、成果を出しているという。一方、日本でも浸透しつつあるものの、思うような効果が得られていないという声も少なくない。どう活用すれば、組織の改革や新たなビジネスモデルの実現へとつなげることができるのか。「ビジネスモデル・キャンバス」開発者のアレックス・オスターワルダー氏が代表を務めるストラテジャイザー(Strategyzer)の日本で唯一人の公認トレーナーであり、現在は多摩大学大学院のMBAコースで教授を務める河野龍太氏にうかがった。

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イノベーションの共通言語として活用が進む「ビジネスモデル・キャンバス」

――河野先生は「Strategyzer」認定トレーナーとして、「ビジネスモデル・キャンバス」を活用する世界の様々な組織の例をご存知だと思います。特に欧米では既に一般的なツールとして使われていると聞きますが、実際はどうなのでしょうか。

河野:
 Fortune500にランクインするような大企業から、立ち上げたばかりのベンチャーまで幅広く使われていますね。民間企業だけでなく、政府や研究・教育機関などでも活用されています。

 活用法も様々で、「新規ビジネスの立ち上げ」や「既存ビジネスの再構築」が定番だとすると、「異業種間で協業する際の戦略の理解促進」や「M&Aにおける買収先の分析・ポートフォリオの検討」、また「IT企業の営業マンの営業ツールとして」という例もあります。

ビジネスモデルを俯瞰して、自社の価値と顧客の課題をマッチングする

――日本企業が「ビジネスモデル・キャンバス」のポテンシャルを十分に活用するには、どうしたらいいのでしょうか。

河野:
 ビジネスモデル・キャンバスの書き方を理解するといったすぐ習得可能なレベルで終わらせず、組織的で戦略的な活用を目指すべきでしょう。そのためには、経営層の理解と支援がカギになります。日本でもビジネスモデル・イノベーションの重要性を理解する経営層は増えています。しかし、ノウハウやプロセスは、従来のままというケースが少なくありません。ビジネスモデル・イノベーションに組織的に取り組むには、そのための共通言語とツールが不可欠です。GE、P&G、3M、ネスレなどイノベーションをリードする欧米の先進的企業において「ビジネスモデル・キャンバス」が採用されているのは、まさにその理由です。

 そして、自社のビジネスモデルを共通言語として可視化するのが「ビジネスモデル・キャンバス」とすれば、CS(顧客セグメント)とVP(提供価値)に特化して、ビジネスモデルを深掘りするのが、「ビジネスモデル・キャンバス」のプラグインツールとして開発された「バリュー・プロポジション・キャンバス」です。顧客への提供価値、バリュー・プロポジションに特化しているのは、それが「成功するビジネスモデルのカギを握る最も重要な部分」だからです。事業の全体構想をビジネスモデル・キャンバスで俯瞰し、顧客にとっての価値をバリュー・プロポジション・キャンバスで深掘りする。2つのツールをセットで使って、ビジネスモデルをデザインするのです。

河野 龍太株式会社インサイトリンク代表取締役社長
多摩大学大学院 教授 河野 龍太 氏
博報堂、博報堂ブランドコンサルティング、ITベンチャー数社の経営参画を経て現職。マーケティングとイノベーションの戦略コーチとして国内外企業を多数支援。ビジネスモデル・イノベーションの第一人者アレックス・オスターワルダー博士が設立したイノベーション支援企業ストラテジャイザー(Strategyzer)の公認トレーナーも務める(日本人で唯一)。早稲田大学法学部卒業、ウォーリック大学経営大学院でMBA取得。長崎市出身。

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事業創造プロセスの起点となる「バリュー・プロポジション・キャンバス」

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