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第二創業~両利きの経営の先へ

イノベーションのジレンマと両利きの経営の相違点──鍵を握る「コーポレート・エクスプローラー」とは?

株式会社アクションデザイン 代表取締役 /IESE(イエセ)客員教授 加藤雅則氏:後編

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 前編では、「両利きの経営」の提唱者であるチャールズ・A・オライリー教授、マイケル・L・タッシュマン教授とともにコンサルティング活動も行う加藤雅則氏に、「両利き」に取り組む日本企業の課題を聞いた。後編では、加藤氏が解説を寄せた2023年2月刊行の書籍『コーポレート・エクスプローラー――新規事業の探索と組織変革をリードし、「両利きの経営」を実現する4つの原則』(アンドリュー・J・M・ビンズ、チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン 英治出版)のポイントと、大企業ならではのイノベーションの起こし方について深掘りする。

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スタートアップになく大企業にあるイノベーションの鍵は量産化にある

──前回、書籍『コーポレート・エクスプローラー』の重要テーマの1つが「大企業ならではのイノベーションの起こし方」だというお話がありました。そのエッセンスをお話しいただけますか。

 『コーポレート・エクスプローラー』は、大企業のイノベーションの起こし方を、「1.戦略的抱負」「2.イノベーションの原則」「3.両利きの組織」「4.探索事業のリーダーシップ」という4つの柱で提示しています。そのうちいちばん大事なのが「2.イノベーションの原則」で、その中にアイディエーション、インキュベーション、スケーリング(量産化)という要素が含まれますが、特に大企業の強みになるのが、スケーリングができるシステムを有しているということなんです。

コーポレート・エクスプローラー
図版出典:アンドリュー・J・M・ビンズ、チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン『コーポレート・エクスプローラー 新規事業の探索と組織変革をリードし、「両利きの経営」を実現する4つの原則』(英治出版、2023年2月、P23図Ⅰ-1「コーポレート・エクスプローラー」)を参照し、編集部にて作図/クリックすると拡大します

 アイディエーションもインキュベーションも、手法は様々にありますよね。例えばリーン・スタートアップやビジネスモデルキャンパスなどが代表的です。大事なのは、最後のスケーリングを意図して前段のアイディエーションやインキュベーションを行っているかどうかです。前回お話したように、ハンティング・ゾーンを決めて「イノベーション・ズー」(アイデアの動物園)にならないようにするのも、そのために重要なのです。

 アンディ(『コーポレート・エクスプローラー』共著者のアンドリュー・J・M・ビンズ氏)はアメリカの状況について、「スタートアップはアイディエーションとインキュベーションをやって、最後はGoogleなどに売却している場合が多い。それは、自社ではスケーリングしづらいからだ」と言っています。一方で大企業はスケーリングできる。それが強みになるのです。

──大企業なら、最初から量産化をイメージして始めるべきだと。

 そうです。彼らは「スケーリング・パス」(量産化の筋道)と言っていますが、道筋が見えたら量産化のために社内中から資産や能力をかき集めてこなければいけません。そして、事業化の目途がついたら、探索部門から既存事業へ移管をしていくわけです。

──それを中心になって担うのがコーポレート・エクスプローラー(CE)なのですね。

 はい。スケーリング・パスにおいて必要な要素は、「顧客(Customers)」「組織能力(Capabilities)」「経営資源(Capacity)」という、いわば「新3C」と呼べるものです。顧客は誰で、その顧客に応えるための組織能力は何か、その組織能力を作るために必要な経営資源をどう持ち寄るか、という話です。この3つをいかに、最終目的地(事業化)に向かってパラレルに走らせていけるかがポイントです。

量産化に必要な資産
図版出典:アンドリュー・J・M・ビンズ、チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン『コーポレート・エクスプローラー 新規事業の探索と組織変革をリードし、「両利きの経営」を実現する4つの原則』(英治出版、2023年2月、P135図6-1量産化に必要な資産)を参照し、編集部にて作図/クリックすると拡大します

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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