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入山教授が語る、日本企業に必要な“イノベーションマインド”──AI時代に人間が「知の探索」を担うには

TOKIUM VISION 2024 レポート

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 日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新した。早稲田大学大学院ビジネススクール教授の入山章栄氏は、世界の投資家から日本企業に対して期待が集まっている証だとし、この期待に応え、さらに期待を高めるのに必要なのはイノベーションだと語る。では日本企業はどうしたらイノベーションが起こせるのだろうか。請求書や領収書などの紙業務を経理部から一掃し、未来へつながる「時を生む」、支出管理プラットフォーム「TOKIUM」は、数々の失敗と挑戦によって生まれたイノベーティブなプロダクトである。代表取締役の黒﨑賢一氏が入山氏と、TOKIUM VISIONで語り合った内容を紹介する。

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イノベーションを起こすために必要なマインド

「日経平均株価が34年ぶりに高値を記録しました。ついに、世界が日本に注目しだしたのです。海外投資家から今、日本企業は注目を集めています。その理由は4つです」

 対談の前談として行われた講演で、入山章栄氏はこう話し始めた。1つ目の理由は、円安で賃金も安いために“お買い得感”があることだ。2つ目の理由は、日本株と海外株が非連動となる「デカップリング」である。世界情勢が不安定な時には日本株が伸びる傾向にあるのだ。

 続いて入山氏は、これからデジタル競争が“2回戦”に突入することを3つ目の理由として挙げた。

「“1回戦”はGAFAが勝ち、日本企業は惨敗しました。ただし、この1回戦は大したものではありません。なぜならそれはスマートフォンの中での戦いにすぎなかったからです。スマートフォンという新しいデバイスができ、その“ホワイトスペース”での戦いだったのです。ただ、もうここは完全に飽和状態で伸び代がありません。FacebookがMetaと社名を変更し、メタバースに移行しようとしていることはその証左です。私は、これからくる第2回戦は『IoT』だと考えています」

 IoTでは、ありとあらゆるモノにデジタルが紐づく。となると、モノがよくなければならないため、製造業が重視されるようになる。そして、日本は世界屈指の製造業大国だ。製造業がデジタルにうまく対応できれば、日本は復権するだろう。実際、既に小松製作所やDMG森精機など、デジタルによって世界で再注目されている日本企業は増えてきている。

 4つ目の理由は、コーポレートガバナンスを改革して経営の透明化に着手するなど、日本企業に経営変革の兆しが見えてきていることを挙げた。ただし、日本企業のPER(株価収益率)は低い。PERは株価を1株当たりの利益で割って求めるが、一般的に実績値だけではなく予測値を用いる。つまり、PERは投資家の“期待値”を表すのだが、低いPERは、投資家の「日本企業はイノベーションを起こせない」という考えを反映しているのだと入山氏は指摘する。

 現在は不確実性の高い時代だが、このような時代に現状維持をしているだけでは、業界ごと他業界に飲み込まれて消えてしまう可能性もある。イノベーションは必須だと多くの企業が認識しているにも関わらず、日本企業ではイノベーションが生まれない。入山氏は、その理由を「経路依存性(Path dependency)」にあると話す。

 経路依存性とは、過去の経緯や歴史によって決められた仕組みや出来事に縛られる現象を指す。会社組織は様々な要素が合理的に絡み合って仕組み化されている。そのため、1つの要素だけ変えようとしてもうまく絡み合っていた他の要素に足を引っ張られ、変更が困難になってしまう。たとえば、会社が多様性を重視する方針を出したとする。その場合、採用基準だけ変えても、多様性は担保されない。なぜなら、新卒一括採用終身雇用制や働き方、評価制度が全て多様性を妨げる方向に向いているからだ。

「他の部分を変えずにイノベーションだけ起こそうとしても無理です。全体を変えることをぜひ考えていただきたい」

 入山氏はこう呼びかけた。

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フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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