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人類の課題を解決し、莫大な利益を得るClimateTechの可能性──起業家と東大理事・副学長が語る

「Climate Tech Day 2023」レポート

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 気候変動問題の解決や緩和に寄与するテクノロジーやビジネス、いわゆるClimateTech(気候テック)への期待が高まっている。2023年6月25日に東京大学で開催された「Climate Tech Day 2023」には、東京大学の研究者やスタートアップの起業家をはじめ、この産業分野で最前線に立つ有識者たちが多数登壇し、様々なテーマで議論を繰り広げた。その中から、本稿ではイベントの開幕を飾ったオープニングセッションの様子をレポートする。登壇者は、東京大学理事・副学長の大久保達也氏、そしてClimateTechスタートアップであるエレファンテック株式会社 代表取締役社長兼CTO 清水信哉氏。モデレーターは、東京大学 FoundX ディレクターの馬田隆明氏が務めた。現在の日本におけるClimateTechを取り巻く動向とは。また、これからClimateTech市場への参入を考えている人へ伝えたいこととは何か。

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脱炭素の実現は企業やアカデミアだけでは困難

馬田隆明氏(以下、敬称略):本セッションでは、エレファンテックの代表取締役社長兼CTOである清水信哉さんと、東京大学で理事・副学長を務める大久保達也先生をお迎えして、ディスカッションを行います。

清水信哉氏(以下、敬称略):エレファンテックは、サステナブルな電子回路の製法を開発している会社です。2014年に、東京大学の川原圭博准教授(現在は教授)を技術アドバイザーに迎えて創業しました。

 従来、電子回路は「エッチング」という銅箔を溶解・廃棄する製法で製造されていましたが、弊社ではプリンティングの技術を利用し、必要な部分にだけ金属を印刷するという「エレファンテック製法(ピュアアディティブ法)」を開発・量産化しています。今後、10年から20年ほどの期間を目処に、この製法を業界標準に押し上げ、世の中のあらゆる電子回路をエレファンテック製法で製造するのが目標です。

 2014年の創業から最初の製品が完成した2020年まで、6年間ほど基礎研究に時間を費やし、量産化までには苦労もありましたが、多くの方から事業のポテンシャルを評価いただき、これまで90億円ほどの資金調達を実施しています。

エレファンテック株式会社 代表取締役社長兼CTO清水信哉氏
エレファンテック株式会社 代表取締役社長兼CTO
清水信哉氏

大久保達也氏(以下、敬称略):私は2020年に東京大学の理事・副学長を拝命しましたが、それ以前は3年間、東京大学大学院工学系研究科の研究科長・工学部長を務めていました。現在も化学システム工学の教員であり、10年ほど前には、今で言うところのClimateTech(気候テック)スタートアップの立ち上げを経験しています。我が事ながら、少し時代の先を行きすぎたのかなと悔やまれる思いです(笑)。

馬田:東京大学では、ClimateTechが関わるサステナビリティ領域について、どのような取り組みが行われているのでしょう。

大久保:実は、東京大学は世界で最も早くサステナビリティに取り組んだ大学の一つです。1994年には、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)などと連携して、「Alliance for Global Sustainability(AGS)」というサステナビリティに関する国際学術協力をスタートしています。そして昨年には、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量実質ゼロを達成するための行動計画「UTokyo Climate Action(CA)」を公表しています。

東京大学 理事・副学長大久保達也氏
東京大学 理事・副学長
大久保達也氏

 しかし、2050年までにGHG排出量ゼロというのは、容易ではありません。同計画の策定にあたり、本学の事業活動に関わる事業者や関係者の排出量を指す「Scope3(間接排出量)」が膨大であることが判明しました。我々に関するサプライチェーン、すなわち社会全体が変わらない限り、本学のカーボンニュートラルは実現しないことが明らかになったのです。

 これを受けて、東京大学は当初に主眼としていた「カーボンニュートラル」に加え、「ネイチャーポジティブ」「サーキュラーエコノミー」を合わせた3つの柱を軸に、グリーントランスフォーメーション(GX)を推進しています。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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