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茂木健一郎氏が語る、人間とAIのアライメント──AI時代に活きる日本の“特徴”とは

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 人工知能(AI)についての議論が世界中で行われている。10月に行われたSansan Innovation Summitでは、東大でコレクティブインテリジェンスの研究をし、AIの最新技術にも詳しい、脳科学者の茂木健一郎氏が登壇。人間が、日本が、AIのある時代をどう生き抜くかについて講演を行った。「日本はAI開発競争では勝ち目がない。現状起こっていることは見るべきだが、日本、そして日本の個人の勝ちポイントは別にある」と語った茂木氏の講演内容を紹介する。

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AIにはできず人間だけにできること

「日本企業はAIのコアとなる部分の開発競争をするよりも、強みを活かして別の部分に取り組むべきだと思います」

 講演冒頭、茂木氏はそう話し始めた。米アマゾンは9月、AIスタートアップに最大5900億円の出資を行うと発表した。直後に茂木氏はマイクロソフトの社員とその件について話した際、彼らが「AIの投資なら1桁違う」と語り、5兆円規模の支援を当たり前としていることに驚いたという。その規模の投資が当たり前になると、日本企業に勝ち目はない。それよりも日本らしいAIの使い方、共存の仕方を考えていく方がいいと訴える。

 では、何をすれば良いのだろうか。

 AIの発達により、これまで最も大事だと思われていた“脳の働き”が次々に置き換えられている。記憶力や計算力はもとより、ChatGPTやMidjourney、DALL・E2、Stable Diffusionなどの登場によって、文章力や描画力、動画作成力までAIは備えるようになった。そうなると、人間は人間が得意なことをやって、AIとアライメント(調整、協力、連携)しなければならない。

 AIにはできず、人間だけにできること。それは「うまくいくかどうかもわからない状況で、決断・判断・選択すること」だと茂木氏は指摘する。脳科学の研究によると、人間の脳はどんなに重要な事項についても、最終的な“決断”を2秒程度で行うという。その“決断”は、「朝何を着るか」「昼食に何を食べるか」「1つのネット記事をクリックして本文を読むかどうか」など多岐に亘り、1日3,000回にも上るという概算もある。そしてその決断の積み重ねが人生を作っている。

 これは複雑系の科学的発見「バタフライ効果」を考えると、非常に重要なことである。バタフライ効果とは、気象学者のエドワード・ローレンツが発表した、「ブラジルのジャングルで蝶が羽ばたくような小さな変化の影響が巡り巡って、テキサス州でトルネードが生まれるか」という問いかけを元にしたもので、入力するデータの端数処理をほんの少し変えるだけでまったく異なる予測結果につながる可能性があること指す。日々の生活の中で決断する小さな違いが、後に大きな結果をもたらすかもしれない。

 「科学が発展しているのだから、AIを使って結果を予測できないのだろうか」という考えもあるが、科学者は「基本的に予測はできない」という見方をするという。「リアプノフ時間」という、予測が不可能になるまでの所要時間を指す力学系理論での言葉がある。たとえば気象だと、リアプノフ時間は1週間だと言われている。たった1週間で、予測の精度は大幅に落ちてしまう。このような予測が立たない状況で決断・判断・選択することこそ、人間にしかできないことなのだ。

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フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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