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オトを事業の核にした「成熟市場での成長」と「ベンチャーとの共創」――ヤマハの挑戦

第2回:ヤマハ株式会社 執行役員 小林 和徳 氏 / ニューバリュー推進室 室長 剣持 秀紀 氏

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 ヤマハの新規事業の推進には、総合型/共同体経営を基礎とする日本企業の良さがでやすい運用を見出すことが出来る。創業128年、世界首位の総合楽器メーカーであるヤマハが進める新規事業について、執行役員 事業開発部 部長の小林和徳氏/同開発部ニューバリュー推進室室長の剣持秀紀氏にお話を伺った。

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成熟市場でも着実に成長する――グローバルM&Aの実践

 ヤマハの立ち位置は音・音楽に関して総合的な事業展開を行う、グローバルNo.1の総合楽器メーカーである。しかし、市場全体でみて大きく市場が成長する訳ではないため、市場成長だけに期待するのは難しい。そこで個々の既存市場においてナンバーワンを目指すシェア向上を成長の基盤の一つとしている。
 例えば、事業一つ一つの立ち位置を棚卸すれば、楽器ではピアノ/バイオリン/ギター/エレキギターをはじめ様々な楽器を製造しており、音響ではプロオーディオ/ホームオーディオ、ソフトでは音楽教室/出版、音源に関連する電子部品など、多様な事業を多角的に経営している。この中でピアノは売上金額において世界ナンバーワンだが、ギター/エレキギターなどではナンバーワンではない。だとすれば個別の事業を精査すれば、そこにはシェア向上を通じた「のびしろ」を見出すことが出来ると考えている。

 こうした既存の事業領域に関しては、M&Aを用いた事業拡張も世界的なレベルで進められている。ドイツのスタインバーグ(Steinberg)/フランスのネキソ(NEXO)/オーストリアのベーゼンドルファー(Bösendorfer)/米国のラインシックス(Line 6)、レボラブズ(Revolabs)といったメーカー群は自社の事業領域に隣接する事業を補完するものであり、買収後の混乱もなく円滑に統合されつつある。こういったグローバル規模のブランド統合は教科書的な正解であり、成熟市場における王道を行く増収策と言えよう。

「おもてなしガイド」にみる、“音ビジネス”の最前線

 ヤマハの事業ドメインにあるコアの価値観は、「音と音楽」にあるという。ゆえに楽器の製造から始まり音楽教室の展開に至るまで、ヤマハは常に音と共に歩んできた。そして、現在、実証実験を進めている「音ビジネス」の最前線にある発展形が「おもてなしガイド」に見られる。ヤマハは音楽から音響、音響から音を使ったコミュニケーションの分野へと発展してきているのだ。

おもてなしガイド図1. 音のユニバーサルデザイン化支援システム「おもてなしガイド

 「おもてなしガイド」の原理は少し分かりづらいが、聞けば「なるほど」と感心するアイデアである。まず、スマホに専門のアプリをダウンロードする。ダウンロードしたアプリは鉄道の駅/空港/百貨店/ショッピングモールに流れているアナウンスに混ぜられた音声信号に含まれる「ID」を判別することが出来、それがアナウンスの途中であってもそのIDを判別する。アナウンスの音に含まれるIDを判別したアプリは、内蔵されたデータベースの情報を参照しながら、その内容を外国語/日本語で瞬時にディスプレイに表示する。これならインターネット通信を拾うWi-Fi/データ通信に頼らずとも、「音」だけで消費者に情報を提供出来る。電子通信なら必ず接続設定が必要だが、音なら普通に放送されているのだから、その音をスマホのマイクで拾うだけで良い。接続の難易度をぐっと低くして、手軽にコミュニケーションするには、この方が合理的だ。

 現在、ミラノ万博 日本館での公式採用をはじめ、JAL/イオンモール/東急バス/高島屋京都店/成田と関空/サンリオピューロランド/渋谷センター街で実証実験を進めており、主に海外から日本に来る外国人旅行観光客/難聴者をターゲットとした開発が進められている。専用のシステムと組み合わせる形での普及策を検討しており、将来的にはさらに多くの施設に展開し、グローバルに広げて行くことも想定しているという。
 確かに、これは「音」の活用した事業モデルと言えるだろう。コミュニケーションというと、IoT/IPV6/Wi-fi/5Gといった情報通信技術ばかりを思い浮かべるが、物理的な特性が違うとはいえ「音」も伝送波の一種なのだ。音響と楽器を専業するヤマハ以外に、このアイデアを商業化出来るプレーヤーはいないだろう。

小林和徳ヤマハ株式会社 執行役員 事業開発部 部長 小林 和徳 氏

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