「ダサいか、ダサくないか」に立ち返りたい--福岡でエンジニアリングとクリエイティブを追求するディーゼロ矢野さん

株式会社ディーゼロ 代表取締役 CEO 矢野修作氏

ベンチャーが元気な福岡でデザイン・クリエイティブの分野ではトップクラスと言われる株式会社ディーゼロ。社長の矢野氏は、デザイナーとしての気概を持つと同時に、オリジナルのCMSを用いたWebのテクノロジーを追求する。

[公開日]

[著] BizZine編集部

[タグ] スタートアップ ベンチャー

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福岡でNO.1のデザインカンパニー

――福岡にとどまり、全国レベルの仕事をされていますが、こちらで起業された理由をお聞かせください。

元々福岡出身で、自分自身はいつか東京に行きたいという思いで、デザイナーになったのですが、いざ東京に頻繁に行くようになると、逆に移動の時間や交通の面での時間のロスが気になりだしました。ネットのおかげで情報格差みたいなものは、ほとんど無くなったし、福岡・博多にとどまることで、クリエイターにとって大切なスキルアップの時間が多く使えることがわかったので、このエリアから全国区の仕事をすることにしました。それでもう会社設立15年ですね。 リアルな対面での打ち合わせも、東京だと移動して1日せいぜい3件くらいですけど、こちらだともっと多く持てるし、本を読むとか技術の勉強をするとかの時間を持てる。 学生時代から「Q-com」という九州で一番大きいチャットのコミュニティサイトを運営していたので、そのままコミュニティサイトなどで起業してもよかったんですが、僕はもともとデザインで勝負していきたかったんです。 それに、当時の「クリエイティブな仕事=東京」って決まってる感がなんかつまんなかったんですよね。福岡で良い会社を作れば、きっと良い人材が残り、福岡のクリエイティブも盛り上がると信じて福岡で起業する決意をしました。あと福岡のご飯が美味しすぎるのも決め手でした(笑)。

タイトル株式会社ディーゼロ 代表取締役 CEO 矢野修作
1975年福岡生まれ。WEBデザイナーを目指し大学中退後、福岡の広告代理店に入社しWEB専門の部署を立ち上げる。また、現在副社長の今里光佐とデザインユニット「デザインZERO」を結成し、福岡CG展最優秀賞やMAFデジタル広告賞最優秀賞など受賞。その後23歳でフリーランスとして独立し、2000年の24歳の時にWEB専門の制作会社ディーゼロ設立。他にも福岡から全国、世界への普及を目指すオープンソースCMS「baser CMS」のNPO法人 ベーサー・ファウンデーション 監査役として開発、普及にも勤める。

クリエイティブの面でみると、以前は東京に比べてコストが安いということを期待する発注が多かったのですが、最近は地域の特性を出すことが期待されるようになりましたね。芸能人を使ったクリエイティブやトレンドを追ったクリエイティブなどは、東京の方が有利なのは事実。東京でのクリエィティブは短納期で、チェックも細かいのが常ですが、こちらだともう少し、企画の実施方法を考えたり、クリエイター同士のコミュニケーションに時間が持てます。 僕らがめざすのは、技術のともなったクリエイティブ、いわばエンジニアリングとクリエイティブの両立ですから、こちらの方が適しているのです。

タイトルコミュニケーション重視の社内カフェ「DZERO CAFE」

企画書には徹底的にこだわる

――今現在、Webのクリエイティブに特化して事業を展開されていますが、大手企業を相手にしたクリエイティブ会社の運営のポイントは何でしょうか?

2000年代に僕がWebのデザインで起業した頃は、まだ企業のWebサイトって印刷会社が片手間に受注するようなレベルだったんです。その時期から、Webを中心にどうプロモーションやマーケティングを展開するかを考えて、企画書に思いきり力をいれました。 今でも、サイトの設計、デザインの段階では、企画書づくりに多くの時間を割きますね。

――コンサルティングに乗り出すデザイン集団も増えてきていますが、御社もデザインに先立つコンセプトやビジネスアイデアのコンサルティングにシフトされていますか?

そうですね、付加価値としてそのようなスキルは身につけていきますが、これからも制作プロダクションとしてWebのグラフィックとかクリエイティブそのものにこだわるという方向です。HTMLやCSSの時代から、Flashの時代を経て、グラフィックを追求してきました。Webのテクノロジーの変化にあわせてやってきましたが、ガラケー向けの制作やサービスには乗り出さずにWebに特化してやってきました。グラフィカルな表現が大好きだったので、ガラケーの表現力にかなり限界を感じていたのです。ただ今は、スマホの表現力がかなり上がっているので、重要視しています。

――福岡のWebベンチャーだとマーケティングや通販系が盛んですが。

うちはマーケティングに関するコンサルティングなどはそれほど力を入れていないんです。よく「九州なのに意外」といわれますが、技術集団であり、クリエイティブ集団なので、営業も抱えていないのです。マーケティング、通販支援系の会社とは仲良く交流もありますが、僕ら自身は違ったノウハウを提供していきたいと考えています。

――メンバーの構成についてはいかがですか?

今、30人ぐらいいますが、全員が企画書を書いたり、何らかのクリエイティブなプロジェクトに関わっています。みんな、デザインや企画などのクリエィティブワークが大好きです。営業はとくにしなくても、インバウンドで仕事は来ますし、大手との仕事をしっかりやって、そのノウハウを中小企業にもフィードバックしていくことで地域のクリエイティブ力の底上げに繋がると考えています。

ディーゼロの企画書

それと教育にはかなり力を入れています。メンバーへの教育はもちろんですが、地域貢献という意味で、デジタルハリウッドさんと共同でWebデザイナーを育成する特別講座を実施しています。重視しているのは組織の中でのマッチングです。 一般に、デザイナーやクリエイターはそれとは個人として高いクリエイティブを追求したい志向の人が多いと思いますが、うちの場合はチームとして高いクリエィティブを考えられる人間の方を重視しますね。 そのおかげで、16年の間やってきて辞めた人間はごくわずかです。 デザイン会社としては奇跡的な離職率の低さです。今のWebの仕事って、フリーで個人になっても一人でやれることには限界がありますし、大きなプロジェクトに参加できても全体の中の一部分にすぎないということが、みんなわかっているんだと思います。

国産CMS 「baser CMS」にコミットする

タイトルディーゼロの作品実績 (http://www.d-zero.co.jp/)

―― WORKSという作品の一覧を見るとかなり実績を紹介されていますね。

これでも契約上公開できるものだけで、全体の10%も無いぐらいなんですよ。 想い出深いメジャーな仕事のひとつは、福岡銀行さんですね。それまで、1000ページを超えるような大規模なサイトって、SIerの仕事でした。やはりそれだと、クリエイティブが足りないとクライアントが気づいて、僕らのところに依頼がくるようになった。

――デザイン会社でありながら、大規模なWeb制作をしかも大量にこなせる理由は何でしょうか?

チームとしてのクリエイティブにこだわり続けた結果だと思います。あとは、baser(ベーサー)というオープンソースのCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)へのコミットです。そのbaserCMSを、僕らのプロジェクトを通して開発に協力してきたんです。 一般に既存のCMS、たとえばWordPressなど、簡単に作れるとはいうものの、いったんクライアントに納品した後で、クライアントの側で「使い方がわからない」などの問い合わせが頻繁に来てしまいます。baserCMSを使って、ところん使いやすいインターフェイスを作って納品していったんです。そこでのお客様の要望をフィードバックして、改良していっていきました。

――クリエイティブ集団としてCMSの開発にコミットするというのは珍しいですね。

今、デザイン思考とかUI/UXとか概念的な言葉が先行していますけれど、僕たちはもっとシンプルにもう1歩手前の「ダサいか、ダサくないか」というレベルに、もう1回、戻ってこだわってもいいんじゃないかなって思います。デザイン=メイクアップでないのは確か。でもデザインの仕事をしている限り、他の論理を言い訳にしてメイクアップのスキルを疎かにしたくはないんですね。その上で、問題解決をして、使いやすくて、価値があるクリエイティブの提案をおこなっていくことが大事なんじゃないかと思います。

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