なぜ大企業が“優れているはずの戦略”で失敗するのか-「戦略タイプ」と「競争の型」のマトリクス

『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』刊行記念 特別対談 第3回

 早稲田大学准教授・入山章栄氏の著書『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』の刊行を記念として開かれた入山氏と『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』が好評既刊のデザインファームbiotope佐宗邦威氏による特別対談。経営学とデザイン思考、2つの視点からは実際のビジネスの現場はどのように映っているのだろうか。
 第3回の今回は「戦略論」をテーマに語られた内容をお届けする。

[公開日]

[語り手] 入山 章栄 佐宗 邦威 [画] 清水 淳子 [取材・構成] 土屋 亘 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] デザイン思考 企業戦略 リアルオプション ドミナントデザイン SCP戦略 RBV戦略

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企業がとるべき戦略は「競争の型」で決まる

佐宗(株式会社biotope 代表取締役/イノベーションプロデューサー):
 これまで色々とお話してきましたが、実は入山先生の新刊で書かれていた中で僕が一番面白かったと感じたのが第3章で書かれている「競争戦略」と「競走の型」の関係です。

入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
 「競争の型」の三つのパターンの話ですね。まだ読んでいない人のために少し説明しますね。現在、経営学において代表的な競争戦略の考え方は主に2つあります。1つは、マイケル・ポーターが発展させた「SCP戦略」という考え方。代表的なフレームワークはポーターの「ポジショニング戦略」で、その中身は大きく「差別化戦略」と「コストリーダーシップ戦略」に大別できます。そしてもう1つが、ジェイ・バーニーが中心になって打ち立てた「RBV(リソース・ベースト・ビュー)」という考え方。こちらは優れた経営資源(人や技術など)を持っている方が勝つ、という考え方です。

 一般にSCPとRBVという2つのフレームワーク、どちらが正しいかという議論がしばしばされます。でも実は、「どちらかの方が優れている」というわけではないのです。それぞれ企業が所属する業界に合った「競争の型」というものがあり、その「競争の型」によってフィットする戦略が違うのです。

 「競争の型」には3種類、「IO型」、「チェンバレン型」「シュンペーター型」に分けられます。「IO型」は、寡占的な状況で、各社が規模の経済などを追究しながら競争する業界です。アメリカのコーラ業界、シリアル業界や、化学・鉄鉱石などの資源分野などが挙げられるでしょう。そういう業界だとSCP戦略がはまるのです。なぜならSCP戦略とは「競争環境が寡占化に進む方が、企業は安定して高い収益を上げられる」という前提に立った考え方だからです。

 一方で「チェンバレン型」は、ある程度の数の会社が緩やかに差別化しながら競争する業界を指します。この型では、「差別化力」が大事になります。差別化力の源泉は技術力や人材力などの経営資源となるので、RBV戦略がフィットするのです。ちなみに、日本で国際競争力のある企業を出してきた業界の多くはここにあったと私は考えています。例えば、自動車業界はいまだに乗用車メーカーだけでも8社あって、技術力や人材力で差別化しながら競争しています。

 最後の1つは「シュンペーター型」です。技術の変化や事業環境が激しく変化するような業界だと、SCP戦略、RPV戦略のどちらでも、次の年は業界のトレンドが変わってしまい、全然通用しないという状態に陥ります。そうなると、むしろリーンスタートアップのように、とにかく始めてPDCAをぐるぐると回していくことが重要となります。僕はこれを「リアルオプション戦略」と呼んでいます。今ならIT業界ですね。

タイトル「戦略のタイプ」と「競争の型」
出典:『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』

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