トヨタの人工知能研究会社CEOが語る、未来の安全なクルマづくりの解「協調的自律制御」

第1回 次世代の人工知能技術に関する合同シンポジウム Vol.3

 もはや我々の生活には欠かせない存在である「自動車」。しかし利便性と引き換えに、渋滞や大気汚染、そして交通事故という大きなリスクを抱えることになった。この課題解決に「人工知能技術」を活用するべく、世界最大の自動車メーカーであるトヨタは新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.(TRI)」を2015年11月に設立。その可能性について、同社CEOのギル・プラット氏が合同シンポジウム(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)主催)で「The Potential of Collaborative Autonomy to Improve Quality of Life(生活の質向上のための協調的自律制御の可能性について)」と題して行った講演を紹介する。

[公開日]

[講演者] ギル・プラット [取材・構成] 伊藤 真美 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] データ・アナリティクス IoT AI・機械学習 データサイエンス 協調的自律制御

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トヨタにおけるAI活動の課題は「安全性向上」と「高齢者アクセス」

 自動車にとって、まず「安全性」は絶対不可欠な要素であることは間違いない。しかしながら、現実には全世界での交通事故死亡者は年間約125万人、米国では3万人、日本では5000人以上にも上る。これは戦争による死者数と変わらぬ規模であり、まさに現代は「交通戦争」のただ中にいるともいえるだろう。

 とはいえ、自動車は「安全性の低い乗り物」というわけではない。事故による死者は10億kmあたり7人という確率からいえば、決して安全性は低くはない。それでも世界規模でみれば、無視できない数字となってしまうのだ。そんな安全性を追求し、限りなく「事故を起こさないクルマづくり」をミッションとしたとき、それは大変レベルの高いものとなることは間違いない。

 そもそもトヨタは年1000万台の車を生産し、使用年数は10年。つまり1億台のトヨタ車が道を走っており、各車が年間1万kmも走行することを鑑みると、トヨタ車は年1兆kmも走行している計算になる。その膨大な利用の中でも事故が数件生じるだけで大きなリコールとなり、時に企業の信頼を、そして売上げを大きく損ねる可能性がある。「安全性の追求」は、トヨタにとっては決して諦められない究極の目標というわけだ。

 そしてもう1つ、プラット氏が課題として掲げるのが「高齢者のアクセス」である。米国はもちろん、日本でも急速に高齢化が進んでいる。そうした高齢者が何かに「アクセス」する、つまり、屋内外いずれでも「どこかに移動すること」が難しくなり、不便を感じることが増えてくる。ここにTRIとして、特に屋内での「Collaborative Autonomy(協調的自律制御)」、つまり「ロボット活用」によって貢献することを考えているという。

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