東大発ベンチャーの雄、AgIC杉本氏が語るイノベーションを生む文化

東大発イノベーションエコシステム(2)AgIC株式会社共同創業者・取締役 杉本雅明 氏

 シンク&ドゥタンクのリ・パブリックが、「都市×イノベーション」をテーマに、その本質を探るシリーズ。今回は「Open Pool」プロジェクトや「AgIC(エージック)」など、話題のスタートアップを手がけ、「東大ベンチャー」(東大発スタートアップ・コミュニティの通称)のキーマン的役割をも担う杉本雅明氏。東大ベンチャーの中核となるコミュニティスペース、「Lab-cafe」を立ち上げた人物だ。杉本氏自身の取り組みを例に、イノベーションを生み出すエコシステム(生態系)で大事なことをお聞きした。
(*AgICとは、銀のナノ粒子を含んだ特殊な誘導性インクを使って紙に電子回路が描ける技術を展開するハードウェアスタートアップ。前回記事参照)

[公開日]

[語り手] 杉本 雅明 [聞] 内田 友紀 [取材・構成] 石川 伸明 [編] BizZine編集部

[タグ] スタートアップ IoT ベンチャー 教育 社会・公共 東大発ベンチャー

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部屋に住むのではなく街に住む―文化のギャップを埋めるカフェの存在

内田(株式会社リ・パブリック 共同代表):
 実は、私も大学3年の2006年に、西早稲田に「02cafe(にかふぇ)」を立ち上げたんです。そんな経緯もあって、Lab-Caféが始まった頃に、どんなカフェになるのだろう、と思って遊びに来たことがあるんです。

杉本(AgIC株式会社共同創業者、取締役):
 本当に!? 僕が「Lab-Cafe」を立ち上げたのは2008年ですけど、その時の参考に02cafeを見に行ったんです。02cafe、今もありますよね。カフェ好きの後輩に引き継ぐ仕組みがうまくできているなと感心したんです。

内田:
 02CAFEは、私たち立ち上げにかかわった人間が借金をし、内装をつくって、調理もして、学生がサークル形式で運営を代替わりしています。高田馬場に半年前に学生が立ち上げた「10°bar」も仲良しでした。

杉本:
 大学の周辺にそういうコミュニティ・カフェができたのはmixiが世の中に広がった後くらいだったと思うのですが、内田さんは、どこでそのインスピレーションを得たんですか。

内田:
 私、最初は早稲田の法学部に入って、次の年に理工学部の建築学科に入り直しているのです。入ってみると、同じ大学なのに、キャンパス間の文化ギャップが大きくて驚きました。大学にいろんなリソースが眠っているけれど、互いのダイナミズムを知って混ざる機会がないと感じたんです。それで、こういう普段出会わない人たちが日常的に出会い、お互いに刺激し合い新しいことが生まれる場を作りたいと思ったんですね。サークルで全国イベントとかもやっていたのですが、3年ほど経つと繋がりが薄れることも感じていたので、その次をやりたかったというのもあります。

杉本:
 継続性は大切ですよね。1、2年続けばやった人は満足するけれど、5年くらい波が続かないと社会的インパクトにはならないですからね。

内田:
 もう一つ、直接のインスピレーションをもらっているのは京都に暮らした1年です。京都って1ブロック歩けばユニークなカフェがあちこちにある。自分の居場所と人が繋がる居心地の良いネットワークみたいなものを感じたのですが、東京にはそれがないと思ったんです。

杉本:
 僕も同意見。東京は部屋に住んでいて街に住んでいない人が多いですよね。京都は人が混ざり合うちょうどいい街の大きさなんです。例えば京都のカフェやクラブでイベントをやっている人も、イベント自体も循環している。顔の見える関係性なんですよね。Lab-Cafeは会員制で、メンバーの紹介で初めて会員になれます。これは、人のつながりをどう広げていけるかという社会実験でもあります。きっと誰かの知り合いでしょ、と思っているから、ここにいる人は隣の人に話しかけられても驚かない。匂いが近い人たちだから、フュージョンしやすくなる。コミュニティの一員になるということは、ホスト側になるということだから。その人が誰か一人連れてくるようになったら、その人はもう「こっちの人」なんです。それが町全体で起きているのが京都で、部屋じゃなく街に住むのって、そういうことなんだと思います。

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