「都市空間」という視点で考える、スタートアップ・エコシステムの土壌を豊かにするもの

Supernova, Inc. 栗島祐介氏 × 東京急行電鉄株式会社 加藤由将氏 対談:後編

 『本質的なイノベーションに必要なものは「スタートアップ・エコシステム」にあるのではないか?』。その問いからスタートした本連載は、Supernova, Inc. Co-Founder & Directorの栗島祐介氏と、東京急行電鉄株式会社で「東急アクセラレートプログラム」運営統括を務める加藤由将氏がナビゲーターを務める鼎談連載だ。
 連載のイントロパートとして、栗島氏と加藤氏の対談を前後編でお届けする。前編は2000年代初頭の「ビットバレー構想」を振り返りながら、大企業とスタートアップがどのように付き合うべきなのかを語り合った。後編は、そもそも「スタートアップ・エコシステム」の要素とは何か、そして現状の課題とは何かを見つめ直し、今後の連載につながるキーワードを拾っていく。

[公開日]

[語り手] 栗島 祐介 加藤 由将 [取材・構成] 長谷川 賢人 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] スタートアップ タレントマネジメント コミュニティ ベンチャー エコシステム オープンイノベーション アクセラレーター スケーラレーター 都市開発

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スタートアップ・エコシステムの土壌となる「都市空間」

加藤由将(東京急行電鉄株式会社 「東急アクセラレートプログラム」運営統括):
  私も以前からディスカッションしたかったことですが、「スタートアップ・エコシステム」とはそもそも何かに触れないといけませんね。

栗島祐介(Supernova, Inc. Co-Founder & Director / Community Producer):
 今後はその仕組みを作っている人をあたって、ケーススタディを聞き、境界線を明らかにする、というのがいいかもしれない。個人的にはエコシステムとは「循環する仕組み」で、そこにいるステークホルダーを見たときに、静的でなく動的に再現性を持って回りうるものだと考えています。食物連鎖が成り立つジャングルのようなイメージですね。

 僕はいつもスタートアップが育つ基盤を「土壌」に例えるのですが、その許容量を超え成分がとられていってしまうと土壌が枯れていくので、枯らさず、回復させながら、複数の作物を育てるにはどうすればいいのかを考える。そして、その自然な回復機能を超えた時に、エコシステムが崩壊していくのではないかと。

加藤:
 たしかに。スタートアップ・エコシステムが機能するためには、常に新陳代謝が起こり、土壌自体が新しい文化を受け入れて違うものに変質し続けて進化する生態系というか。

加藤由将加藤由将氏(東京急行電鉄株式会社 「東急アクセラレートプログラム」運営統括)

栗島:
 だとすると、「土壌」は経営資源にあるのでしょうかね。いわゆる、ヒト、モノ、カネ、そして情報。

栗島祐介栗島祐介氏(Supernova, Inc. Co-Founder & Director / Community Producer)

加藤:
 それらに加えてさらに「土壌」の役割を果たすのが「都市空間」かもしれません。様々な属性の新しい人が入ってきやすく、情報が溢れて、アイデアが生まれやすい街の方がイノベーションは起きやすい。

 たとえば、丸の内は「金融」でエコシステムが作られ、効率化と安定化を目指すにはいい街ですが、渋谷は対照的。若者を中心にファッションや音楽の新しい文化が生まれて、常に前進している。それぞれ「都市空間」を歩いて、ビジネスとは直接関係のない文化的な刺激を受けたとき、ビジネスも変化していく。多様性のある都市空間でないと、イノベーションは起きにくいでしょうから。

 「渋谷という街」と一括りに言ってしまいましたが、道玄坂、宮益坂、円山町、桜丘町、神南、宇田川、新泉、松濤と、エリアによって受ける刺激はぜんぜん違いますからね。また、「広域渋谷圏」でとらえた場合、代々木・原宿・神宮前、表参道・外苑前方面、池尻大橋・三軒茶屋方面、代官山・恵比寿・中目黒方面など2駅5分程度のエリアもそれぞれ特徴的ですね。

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