“面倒なことを避ける個人”と“硬直化した国家”に存在する「Knowing-Doing Gap」とは?

HR発イノベーション創出のための対話 ~悩む人事 不安な個人 立ちすくむ国家~:レポート・前編

 経産省の若手たちが、日本が直面している危機について赤裸々に語った「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」。通称「経産省若手ペーパー」と呼ばれる同資料は、異例の100万ダウンロードを突破するなど、大きな話題となっている。この問題提起に応えるべく、HR事業者に在籍する若手メンバーを中心とした有志団体「One HR」が2017年7月11日(火)に開催したイベント「経産省若手官僚×企業人事『HR発イノベーション創出のための対話 ~悩む人事 不安な個人 立ちすくむ国家~』」では、実際に資料の作成に携わった経産省「次官・若手プロジェクト」のメンバーである藤岡雅美氏、高橋久美子氏、前田慶太氏と組織論の研究者である宇田川元一氏が登壇。「経産省若手ペーパー」を糸口として、日本が直面している人事制度の問題について語った。イベントの後半では、次世代の働き方を体現している正能茉優氏と黒田悠介氏を交えたディスカッションも行われた。前編では、藤岡氏、宇田川氏の講演内容をレポートする。

[公開日]

[講演者] 藤岡 雅美 宇田川 元一 [取材・構成] 近藤 世菜 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークプレイス ダイバーシティ AI・機械学習 ロボット 働き方改革 生産性 経産省若手官僚 Knowing-Doing Gap

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人工知能の台頭で重要な生産要素は「資本」から「人財」へと変わっていく

 はじめに登壇したのは件の「経産省若手ペーパー」の作成に関わった経済産業省の藤岡雅美氏。藤岡氏はまず、現在の日本を取り巻く状況について以下のように語った。

藤岡「第四次産業革命を迎えている現在。とくに人工知能の飛躍的な発展による産業構造は大きく変わっていきます。そのなかでよく取り沙汰されるのは『人工知能  VS 人』という構図で『人口知能が人の仕事を奪う』という論調で語られることが多い。でも実際は障がい者や高齢者といったこれまで労働参加がかなわなかった人々もAI技術を活用することでハイパフォーマンスな仕事ができるというメリットがある。問題の本質は『人工知能を使いこなせる人VS人工知能を使いこなせない人』の間に生まれる格差がとてもクリティカルだということなのです」

 藤岡氏いわく、人口知能が発展した世の中は資本よりも人財が重要な生産要素になるのだと言う。

藤岡「第四次産業革命下において、多くの仕事はAIやロボットによって代替することができます。つまり、産業や企業にとって競争力と付加価値の源泉になるのはもはや資本の多寡ではなく人材の質なのです」

 しかし、産業や企業の成長に重要な影響をもたらすはずのその人材、つまり日本で生活する個人が自分たちの将来に多くの不安を抱えているのが現状だ。

 グローバリゼーションや技術革新が進むと、個人のもつ影響力が増し自由な世の中が構築されていく。しかし、自由には責任がつきまとうもので、その分不安も大きくなる。世界的に原理主義やナショナリズムといった権威への回帰を求める機運が高まっているのも、そういった背景がある。

 藤岡氏は、日本が目指すべきは前時代的な権威への回帰ではなく秩序ある自由の構築だと言う。

藤岡「『秩序ある自由』の整備のためにまず頭においておくべきは、現在の日本では『昭和の人生すごろく』をコンプリートできる人がどんどん減少しているということです。男性は新卒一括採用で定年退職まで勤め上げる、女性は結婚出産を経験し主婦として生活する、これが昭和の既定路線でした。ところが現在、この既定路線通りの人生を送る人は明らかに減ってきています。また『人生100年時代』と言われるなか、定年を迎えたあとの高齢者は意欲があっても働けず、生きがいを見失う。しかし、多くの課題を抱えている社会のシステムはなかなか変革しない。ここに大きな問題があるわけです」

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