IoTビジネスは、まず課題より始めよ

武下真典(エスキュービズム)連載第一回

エスキュービズム 武下真典氏がIoTのトレンドと最新ビジネス動向を分かりやすく解説。第一回は、どのような課題からIoTのビジネスを発想するかを実際の製品プロジェクトを通じて紹介します。

[公開日]

[著] 武下真典

[タグ] IoT 事業開発

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

武下真典 武下真典

エスキュービズム 取締役。
“UsableIoT” をコンセプトに、IoT製品を多数リリース。WirelessWire Newsで「日本のIoTを変える99人」にも選出された。

 みなさんは、「IoT」という言葉をご存知でしょうか。ソフトバンクがARMを買収したことでも話題となりました。IoTとは、Internet of Things(モノのインターネット化)のことですが、実はきちんとした定義はまだありません。そのため、人によってはM2M(Machine to Machine)のことであったり、ビッグデータやセンサーのことを指す人もいます。
 あくまで私のとらえ方ですが、「今まではスタンドアローンだったけれども、ネットワーク(インターネット)につながることで新たな価値を生み出せるようになったモノ(や仕組み)」というくらいの認識でいいのではないかと思っています。
※もし「IoTとは」をもう少し詳しく知りたい方は、弊社のサイトをご覧ください。

 それではなぜIoTが最近話題なのでしょうか。
IDC JAPANによると、国内IoT市場は2014年時点では5402億円ですが、2020年まで年間平均成長率16.9%で成長し、13.8兆円に達するという予測があります。IoTは、今後数年で、あらゆる産業のあらゆる領域に活用されるようになると考えられているのです。

 そうした世界において、私たちはIoTとどう関わっていくことになるのでしょうか。
すでにIoTプロジェクトに関わっている方もいらっしゃるとは思いますが、まだまだ多くの方が、ご自身とは直接関係のない領域だと考えているのではないかと思います。IoTをITと同じようなものだと思っていらっしゃる方もいるかもしれません。しかし私はIoTとITでは大きな違いがあると考えています。
ITの時代では、ITがわかる人(リテラシーのある人)だけが関わっていれば問題ありませんでした。しかし、モノ×ネットワークとなるIoT時代においては、提供する側も享受する側も、すべての人にIoTについての理解が求められるのです。

 みなさんは下記のような様々な課題に対して、日々取り組んでいるかもしれません。IoTによってこれらの課題が解決できるとしたらどうでしょうか。もちろんすべて解決出来るとは言えませんが、IoTという手段を検証してみても損はないと思います。


・顧客満足度の向上
・機会損失の低減
・人件費の削減
・人材不足の解消
・業務オペレーションの効率化
・新たなマネタイズ手法の開発
・新たなプロモーション手法の模索

   
など

 具体的なIoT製品を挙げてご説明しましょう。弊社ではeCoPAという、スマホアプリを使って、駐車場の満車・空車を事前に把握出来たり、予約や決済が出来るIoTを提供しています。駐車場であればあらゆる小売業、流通業の企業様に関係があるのではないでしょうか。仮にアパレルメーカーであれば、「服にセンサーを付けたりネットワークにつないで、移動記録や臭い検知などの機能を持たせられないか」という発想もあると思います。しかしさらに思考を広げると、eCoPAを導入することで、駐車場の空き具合に合わせたタイムセールの実施などのプロモーションを行うことができるかもしれません。スマート宅配ボックスというIoT製品(スマホで開閉できるBOX)を導入することで、裾直し後の受け渡しを自動でできないか、なども考えられるでしょう。

 製造過程、組織管理、プロモーションなどあらゆるところにIoTは活用できるのです。
これからは、IoTをビジネスに活かす未来が来る、と言っても過言ではないと思っています。

 それではそんなIoT時代にどういう発想をすればよいか、という本題に入りましょう。
IoT(モノのインターネット化)という言葉から、ついつい「モノをどうにかして何かに使えるようにしなければ」と考えてしまいそうになりますが、それではIoTプロジェクトをなかなか前に進めることはできません。重要なのは「どういう課題を解決すべきか」なのです。下記の図はゴールデンサークルと言われていますが、IoTを考える際には、Why⇒How⇒Whatの順番で明らかにしていくようにすれば、考えやすい上に、課題の本質を捉えたIoT開発へとつながるはずです。

ゴールデンサークル

 経営部門や情報システム部だけでなく、人事部、労務部、経理部、マーケティング部などあらゆるところで課題はあるはずです。例えば、労務部であれば、社員の健康管理をきちんと行うという課題があるでしょう。そういった課題には、もしかすると社員の椅子にセンサーを取り付けることで、長時間座っている人に対しアラートを送れるようになるかもしれませんし、ストレス度などのデータをリアルタイムで把握できるかもしれません。
先ほどのスマート宅配ボックスを事業課題に活用した例をご説明します。弊社の顧客に株式会社ビジョン様がいらっしゃいます。ビジョン様は空港にて海外渡航者向けにWiFiを提供していますが、wifi受け取りに課題を抱えていらっしゃいました。混雑期になると受け取りのための行列が伸びてしまい、お客様が何十分も列に並ばなければならないのです。そこで弊社のスマート宅配ボックスを導入することで、貸し出しの事前予約が入ると、事前に従業員がグローバルWiFiをボックス内にセットしておき、後は予約者が自分のタイミングで来て、スマホで開けてピックアップしていけるようにしました。
そうすることで数十分かかっていた受け取りがわずか数秒で完了するようになったのです。

 私は、自身の「不便」な体験こそが発想のヒントとなると感じています。お客として、従業員として、生活の中で「不便」だと思う瞬間こそが、企画の始まりなのです。前述したeCoPAは、実際に「家族とショッピングモールに行った際、駐車場がいっぱいで入れなくて困った」という私の実体験から開発に着手しました。またスマート宅配ボックスも、弊社はオムニチャネル構築パッケージを販売しているのですが、「注文はいつでもどこでもできるようになったのに、受け取りはまだまだ不便だな」という思いから開発しました。

その他に顧客を意識した際に IoTに使えるフレームワークとして「カスタマージャーニーマップ(CJM)」があります。うまく使えば、顧客がなにを求めていて、どういうものを作ればそれを解決できるかを浮き彫りにできるのです。ペルソナ、フェーズ、タッチポイント行動、思考、感情、インサイトの空欄をディスカッションしながら埋めていくと、完成します。

引用:Web担当者Forum(http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/11/14/16305

他にも「ビジネスモデルキャンバス」、「共感マップ」など、課題を考える際に役に立つフレームワークがあります。ぜひそれらを使って現状の課題を明確にしてみてください。

次回は、成功するIoTをどうやって発想するかについて述べたいと思います。

本記事著者の本 『はじめてのIoTプロジェクトの教科書』刊行


いざ実際にIoTでビジネスを始めようとしたとき、何から始めればいいのかわからない人が多いのではないでしょうか。この本は、「IoTの教科書」としてではなく、IoTビジネスを成功させるためのポイントから、プロジェクトを進めるためのフロー、事業の成功実例まで、実践的な手法を盛り込んだ一冊となっています。
Amazonへのリンク

タイトル 【10/18開催】エスキュービズムIoTカンファレンス~2年後の未来を今体感せよ!~
IoT第1人者の小泉耕二氏(IoT NEWS)、八子知礼氏(ウフル)や、堀江貴文氏、青木俊介氏(ユカイ工学)、吉本芸人(板尾創路氏、レイザーラモンRG氏、トレンディエンジェル)等豪華メンバーが登壇。10/18に開催のIoTを体感して理解できる、エスキュービズム主催のIoTカンファレンスです。ぜひご応募ください。登録サイトはこちら


バックナンバー