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再現性のあるイノベーション経営の型

イケア流・新規事業の生み出し方──専任部署に任せない、顧客課題起点のプロセスとマインドセットとは?

【第3回・後編】ゲスト:イケア・ジャパン株式会社 代表取締役社長 兼 Chief Sustainability Officer ペトラ・ファーレ氏

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 世界最大の家具量販店であるイケアは、創業者イングヴァル・カンプラードの「より快適な毎日を、より多くの人々に」というビジョンのもと、創業時から今に至るまで数々のイノベーションを生み出してきた。前後編にわたって、イケアの日本法人を率いるペトラ・ファーレ氏、Japan Innovation Network(JIN)の理事である大本綾氏がそのイノベーションの秘密について聞いた。後編である本稿では、イケアにおいてイノベーションが生まれるプロセス、ビジョンに基づいてお客さまの課題を考える方法、そして都心型店舗が多い日本のイケアにおける新たなソリューションなどについて語ってもらった。

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新規事業部門やイノベーション部門に任せきりにしない

大本綾氏(以下、敬称略):「フラットパック」などのイケアでのイノベーションや、コロナ禍における施策などについてさきほどまではご紹介いただきました。イケアにはこれらを生み出すイノベーションを担う部門などがあるのでしょうか。

ペトラ・ファーレ氏(以下、敬称略):イケアでは、イノベーションには皆が取り組むことができます。これもまた、起業家精神がカルチャーの一部だからです。

 規模の小さい会社では臨機応変にコラボレーションをすることができます。しかし、起業家精神にあふれた組織カルチャーがあっても、従業員規模が多くなればコラボレーションは難しくなります。多くの企業がこの課題に直面してきました。いわば「研究開発は特定のチームが実施するべきか、それとも全員で取り組むべきなのか」という永遠のテーマです。

 しかし、イケアではイノベーションには皆で取り組むべきだと考えています。ただ、個々人が各々動くだけではうまくいかないことがあるので、誰がどういった役割を担うかは整理する必要があります。そういう意味での組織化は必要です。その理解を深めるために、イケアでは以下のような図を用いて、静的で縦割りとなる組織構造から権限委譲された部門横断型のチームへという説明をしています。

Cross Competence empowered teams
資料提供:イケア・ジャパン/クリックすると拡大します

 組織として縦割りの部門を作るということはせず、プロジェクトオーナーの周りにそれぞれの分野から人が集まってきてサポートする体制を作るのです。プロジェクトごとに、部署関係なく誰もが責任と権限を持つことができます。この方式を採るからこそ、イケアでは責任を与えたり引き受けたりすることがとても重要です。これは前編で紹介した「イケアのビジョンとバリュー」にも含まれています。

 イケアのすべての業務の出発点は常に、「お客さまが何を課題として、何を必要としているか」です。あるいはコワーカーがアイデアを思いついたら「その人が何を必要としているか」を考えます。周囲にこうした発想を持つ人たちが集まっていて、サポートする文化があるからこそ、誰でも変化を生み出せるという側面もあるかもしれません。もちろん、施策の実現のためには、資金やその他もろもろのシステム面でのサポートも欠かせません。

 なお、イケア内部でも若干の違いはあります。リテール部門では比較的に役割分担が進んでいます。これは特に、イケアがマルチチャネル、そしてオムニチャネルリテーラーとして進化していくなかで、デジタルでの開発が増えたことが背景になっています。

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

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