ファイナンス人材の不足は人材育成とシステム・データ活用が課題――キリバが発表

「事業のグローバル化に伴う財務・リスク管理体制の実態と課題」の調査結果と考察

 米キリバの日本法人であるキリバ・ジャパン(東京都渋谷区)は、「事業のグローバル化に伴う財務・リスク管理体制の実態と課題(日本CFO協会実施)」に関する調査を実施、結果と考察を発表した。

[公開日]

[著] BizZine編集部

[タグ] ファイナンス 財務

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 「事業のグローバル化に伴う財務・リスク管理体制の実態と課題」調査は、9月から10月にかけて、キリバが調査協力し日本CFO協会により実施されたもので、日本CFO協会会員を主体とした日本企業の財務部門から283の回答を得た。

 主な調査内容は、(1)財務部門の役割について、(2)CFOの考える課題について、(3)現状の財務・リスク管理業務についての3点だった。

 (1) 財務部門の役割について

 回答者が担当している業務範囲については、一部、年金の担当者を含んでいるが、多くの回答者の担当業務は銀行関係管理や銀行口座管理、資金繰り管理、資金運用、資金調達、リスク管理、決済、M&Aサポート等であり、一般的に想定される財務部門が担う役割となっている。

 担当する地域では、国内のみを担当しているとの回答が37%、国内・海外の両方を担当しているとの回答が63%となり、多くの企業で国内と海外の区別なく管理を行っていることが分わかる。これは、昨今の日本企業のグローバル化の進展に伴い海外事業の重要性が増したことにより、個社最適や地域最適から全体最適へと管理が移行している結果であると考えられる。

図1:業務の担当範囲  

 (2) グローバル化においてCFOが対応すべき課題(複数回答可)

 「グローバル化においてCFOが対応すべき課題」という質問において、8割近く(78.28%)の回答者がグローバル化をリードする人材の獲得・育成を課題として挙げている。事業展開がグローバル化していく中で、財務業務やリスク管理業務で求められる知識や経験についてもグローバルなものが求められており、これらの業務の高度化をグローバルで推進していけるような人材が圧倒的に不足している結果であると見ることができる。

 このサーベイでは、ファイナンス人材の育成方法についても質問しているが、その方法として、86.8%の回答者が「OJT重視」と回答している。人材を育成するためには、OJTが有効ということに疑いの余地はないが、見方を変えると、体系だった教育・研修体制が社内で整備されていないか、コストと時間をかけて外部研修を受講させるカルチャーが醸成されていない企業が多いとみることもできる。

 「人材の獲得・育成」とほぼ同程度の割合(76.26%)の回答者が「経営資源の最適分配と収益性の向上」を課題として挙げている。限られた企業のリソースを、企業価値を最大化させる投資先に分配し、企業の収益性向上に寄与するということは、財務部門における最も重要な責任の1つであると言える。

図2:グローバル化においてCFOが対応すべき課題  

 (3) 課題解決をしていく上で必要となる経営資源

 「課題解決をしていく上で必要となる経営資源」という質問においては、「人材」を挙げた回答者が91.4%で、次いで、「IT・情報化」を挙げた回答者が51.5%となっている。この結果は、グローバルに展開する企業の課題解決を担う人材の重要性と、課題を解決していくための「手段」や「ツール」としてのシステムの重要性を表しているものと考えられる。

 課題解決のための「手段」や「ツール」は、必ずしもシステムである必要はないが、CFOの考える課題を解決するために必要な最初の第一歩は、情報の「適時の」見える化であり、グローバルでビジネス展開している企業において効率的かつ適時に情報を見える化するための「手段」や「ツール」としてはシステムの活用が有効であると考え、多くの回答者が「IT・情報化」を挙げたのではないかと推察される。

図3:問題解決をしていく上で必要となる経営資源  

 今回のサーベイの結果、CFOの課題として、人材の獲得・育成、会計・財務オペレーションの効率化、グループガバナンスの見直しといった項目について課題意識を持っている回答者が多いこと、また、これらの課題に対応するためには、適時にグローバル全体の情報を把握し、業務を標準化することで効率化が実現できることに触れた。これは、以下の4つの財務業務の目的を達成できるように業務設計を行うことで実現できるとも言い換えることができる。

  1. 財務リスクの最小化
  2. 資金効率の最大化
  3. 業務の効率化・高度化
  4. ガバナンスの強化

 このような財務業務の目的を達成できるように、今後、日本企業が取り組むに当たっては、まず、グループとして目指す将来像を明確化し、それを実現するための財務・資金管理方針を策定することが有効だ。

 また、当該方針に沿った運営を実現するために必要なインフラを特定し、標準化と集約化を行いながら財務業務およびリスク管理業務の高度化を行っていくといった進め方が望ましいと考えられる。

 日本企業のグローバルでのオペレーションの重要性は増す一方であり、今後、財務業務およびリスク管理業務の高度化を考える場合には、現在の海外オペレーションの重要性だけでなく、将来の重要性も考慮に入れた上で、グローバルでどのように高度化を進めていくかという視点が重要になると考えられる。

こうしたサーベイ結果を受けて、11月9日に開催されてキリバのプレス発表では、PwCあらた有限責任監査法人パートナー福永健司氏によって以下のような総括と報告がおこなわれた。

サーベイ結果から見たCFOの課題認識

1.CFOにとっての重要課題は、「経営資源の最適配分による収益性の向上」「企業価値の最大化」であること

2.収益性の向上と企業価値の最大化を図るためには、「グループガバナンスの強化」と「キャッシュマネジメントの高度化」を進める中で、「会計や財務オペレーションの効率化」を進めると共に、グローバルベースでの資金・為替等に関わる現状とリスク、および今後の見込みなど「事業管理に資する情報」を把握・分析し、経営判断に活かしていくことが必要。

3.ただし、「キャッシュマネジメントの高度化」等をグローバルで進めようとすると、足下、これを企画・実行していけるファイナンス人材が不足しており、人材の獲得・育成が喫緊の課題。

4.各種課題を解決するために必要な経営資源は、企画・実行していけるファイナンス人材ではあるが、現在各国に分散しているデータをシステムにより本社や金融統括会社に集約し、集約されたデータに基づき、システムに備わった機能(ある意味では他社の先進事例)を最大限に活用して経営に活かしていくことにより、人材不足という課題を補完していくことが可能。

今回の調査実態にもとづき、キリバでは企業におけるCFOや財務部門のあり方などに関するセミナーを今後実施するとともに、同社のトレジャリー・マネジメント・ソリューション関連のスターターパッケージの提供をおこなっていくという。