シェアリングエコノミーが日本で“浸透しにくい”理由、大企業が戦略的に活用する方法

【特別インタビュー】『シェアリングエコノミー』著者アルン・スンドララジャン インタビュー

 シェアリングエコノミー研究の第一人者アルン・スンドララジャン氏(ニューヨーク大学経営大学院教授)が来日し「シェア経済サミット」でスピーチを行ったほか、メディア取材に応じた。11月に発行された邦訳『シェアリングエコノミー』について、Takramのデザインストラテジスト、佐々木康裕氏がインタビューした。(2016年11月25日)

[公開日]

[語り手] アルン・スンドララジャン [聞] 佐々木 康裕 [取材・構成] 有須 晶子 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークスタイル 事業開発 テクノロジー 企業戦略 シェアリングエコノミー Uber Airbnb

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日本にシェアリングエコノミーが“浸透しにくい”理由

佐々木(Takram デザインストラテジスト):
 日本はアメリカと比べるとシェアリングエコノミーの浸透が遅れています。その理由についてのお考えをお聞かせください。

スンドララジャン(ニューヨーク大学経営大学院教授):
 中国やインドネシア、ベトナムと異なり、日本は成熟経済で消費者が異なるステージにいます。オーナーシップエコノミー(消費・保有型経済)や中間層が確立しています。そのため、変化のスピードは他のアジア諸国より遅くなるでしょう。

 同じく成熟経済であるアメリカでシェアリングエコノミー的な動きが日本より活発な理由は、企業家文化がアクティブであることでしょう。起業家精神の根幹には「何かを始めて失敗するのはいいことだ、失敗は学びを得る機会なのだから」という失敗を受け入れる文化があります。日本社会は、失敗に対する抵抗が大きいと思います。起業家精神の少なさと成熟経済、この組み合わせがシェアリングエコノミーの浸透を遅らせているのでしょう。

佐々木:
 シェアリングエコノミービジネスは、既存のビジネス慣習や規制、コミュニティと少なからず摩擦を生じながら発展していきます。この領域で事業を興すには、どのように対応すればよいでしょうか。

スンドララジャン:
 シェアリングエコノミービジネスに対する規制の程度は、以前の携帯電話やソーシャルメディア、検索エンジンに比べ、はるかに厳しいのが現実です。シェアリングエコノミーは、100年もの歴史と確立した規制が存在するあらゆる種類の既存ビジネスをデジタル化しようとしているからです。

 規制の変更は、スタートアップが大きくなって十分なリソースを獲得してからなされる場合がほとんどです。小企業には無理なのです。

佐々木:
 何十億ドルというレベルの資金調達が必要になってきますね。

スンドララジャン:
 そうです。Uberの資金調達額は150億ドルを超えています。そのうちのかなりの額をロビー活動に費やしています。

佐々木:
 その点は日本で見過ごされているように感じます。Uberが多数のロビイストを雇っていることは日本ではあまり知られていません。

スンドララジャン:
 不動産と交通は、特に規制の厳しい分野でもありますからね。Uberのライバル企業のLiftも設立されてまだ5年未満ですが、従業員の10%が対政府折衝担当だった時期があったと記憶しています。Googleが設立5年未満のときには、政府の担当者なんていませんでした。

 草の根的なロビー活動の方法もありますが、従来は、数十億ドル規模の資金調達があってから、規制が取り除かれています。日本も同様でしょう。ソフトバンクなどの大口投資家がシェアリングエコノミーを推進すれば、規制の変更が進むでしょう。

アルン・スンドララジャンアルン・スンドララジャン氏(ニューヨーク大学経営大学院教授)

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