「課題先進国」日本がめざすIoT戦略──データ主導社会の実現に向けて

総務省 谷脇康彦氏インタビュー

IoT、AI、ビッグデータ、こうしたテクノロジーの波の中で、日本の産業はどのような可能性があるか?また政府としてはどのようなビジョンを提示するのか?総務省の谷脇康彦氏は「IoT、AI、ビッグデータを社会の抱える課題解決のために実装していく」と語る。谷脇氏に今後向かうべきデータ主導社会のイメージとそのための取組みについて聞いた。

[公開日]

[取材・構成] 京部康男 (Biz/Zine編集部)

[タグ] IoT AI

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IoT、AI、ビッグデータをまたぐ戦略

IoT総合戦略:基本的枠組み(『情報通信審議会 第三次中間答申概要』より)
IoT総合戦略:基本的枠組み(『情報通信審議会 第三次中間答申概要』より)

── 本年1月、総務省情報通信審議会は「IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方」という第三次中間答申を出されました。

谷脇氏:はじめに、IoT、AI、ビッグデータという3つの分野について、相互の関係を示してみたいと思います。

 現実のリアルな社会から、「IoT」によって、様々なセンサーを通じ、従来より安価で効率的にデータの収集ができます。IoTによって収集・蓄積されるのが「ビッグデータ」。そしてそのビッグデータについて「AI」を解析ツールとして活用し、社会課題の解決のためのソリューションを展開していきます。そして、これらのツールを活用して様々なデータをリアル空間とサイバー空間との間で好循環させて経済社会を活性化させていくとともに、日本の社会が持つ課題を解決していくことが重要なテーマだと考えていて、われわれはそれを「データ主導社会」と呼んでいます。

── そこで言うデータとはIoTのデバイスから収集されるデータという意味でしょうか?

谷脇氏:データの種類とその活用目的は多種多様で、ビッグデータといっても様々なものがあります。ひとつは「オープンデータ」です。国や地方自治体の持つデータを機械が読める状態にしていくことです。昨年には国会で「官民データ利活用推進基本法」も成立しました。これに基づき、政府や都道府県はデータ利活用の基本計画を策定し、データ利活用を進めていくことが求められています。

 2つめは「暗黙知を形式知に変えていくためのデータ」です。例えば農業の分野ですが、日本の農家の平均年齢は67歳で、後継者不足の中、高齢の農家の方々の経験はこのままでは次世代に受け継がれなくなります。農業のICT化によって農家の皆さんの経験、つまり暗黙知を構造化し、形式知とすることで社会全体で活用することが可能となります。また高度経済成長期に作られた橋、トンネル、道路などの社会インフラも50年以上を経て老朽化しており、インフラ管理の効率化・高度化が求められています。こうしたインフラの老朽箇所の発見はこれまでベテランの技術者による打音検査に頼ってきました。こうした仕事も、センサーや画像認識技術を使ったデータ活用型に置き換えていく。このように、これまでの経験と勘といった暗黙知を形式知に変えていき、次の世代に伝えていくことが必要です。

 3つめはM2M。車両や機械が生み出す大量のストリーミングデータを使って部品の不具合の検知や人や車の流れの解析などに活用できます。そして4つめがパーソナルデータです。改正個人情報保護法が本年5月に全面施行されますが、個人の許諾を得たパーソナルデータや匿名加工情報をうまく活用することで、利便性の高いサービスを提供していくことが可能となります。

 こうしたビッグデータを活用していくためには、様々な領域のデータを単独で活用するだけではなく、異なる領域のデータを掛け合わせて使っていくことで新しい価値が創造されます。そのためには、データの連携を可能とするデータ様式の標準化も必要です。

──データを活用するための仕組みは具体的にはどういうものでしょうか?

谷脇氏:例えばデータの「取引市場」の創設や、データを仲介する、いわゆる「情報銀行」の仕組みを作ることが考えられます。個人の許諾を前提としたパーソナルデータの活用や匿名加工情報の利用によって、きめの細かいパーソナライズされたサービスを提供していくことが可能となります。しかし個人一人ひとりが自らのデータを提供先に対して個別に約款を理解し、逐一許諾を与えるのは大変な作業になります。仮に個人データを提供して享受できるメリットがあっても、手間というコストを考えればデータの活用が進みません。

 そこでデータを流通させる取引市場を創設するととともに、取引市場等において個人の情報提供ポリシーにそってデータの仲介を行う、いわゆる情報銀行の仕組みについて検討が必要です。しかし、ここで大事なのがプライバシーの確保です。

──個人が自分のデータを銀行口座のように預けて管理してもらうというイメージでしょうか?

谷脇氏:いわゆる情報銀行では、あくまで自分の情報は自分でコントロールすることができる、という事が前提になります。そのためには、個人のポリシーに沿って情報銀行が第三者に個人のデータを提供し、その見返りとして、きめ細かいサービスの提供が受けられるようにすることが必要となります。

──取引市場と情報銀行というと、なかなかイメージしづらいのですが、海外などで事例はあるのでしょうか?

谷脇氏:海外、例えば米国では情報銀行に近いビジネスを展開するベンチャー企業も登場してきています。日本でもデータ取引市場を作る具体的な動きが一部企業において出てきています。総務省としては、こうしたデータ取引市場については技術革新の芽を摘むことなく、優れた取引市場を後押しする任意の認定制度のような環境整備を進めたいと考えています。取引市場で一翼を担うこととなる情報銀行については、個人のパーソナルデータのコントロールの可能性やプライバシー確保の問題が出てくるので、紛争処理など一定の公的な関与が必要になるかもしれません。このあたりは今後、専門家で構成するワーキンググループで議論をしていきます。

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