みんチャレ長坂氏が語る「イントラプレナーからアントレプレナー」というキャリア

第10回 エーテンラボ株式会社(A10 Lab Inc.) 代表取締役 CEO 長坂剛氏

 スキルを磨いてやりたい仕事に就きたい。ポジションや待遇もアップさせたい。そのために、自らでキャリアをデザインすることも大切ではありますが、全く違うアプローチで、自分の可能性を高めることができるのではないか。その問題意識のもと、「デザインしないキャリア」の有用性について、その実践者の言葉をもとに検証していきます。連載第10回は、ソニー株式会社にて、法人営業やクラウド音楽配信サービスの立ち上げを経て、スタートアップを起業した、長坂剛さんにお話を伺いました。

[公開日]

[語り手] 長坂 剛 [取材・構成] 佐藤 崇敏 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] プロジェクトマネジメント ワークスタイル キャリアデザイン キャリアドリフト 計画された偶発性

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長坂 剛さんプロフィール

エーテンラボ株式会社(A10 Lab Inc.) 代表取締役 CEO
東京工科大学卒業後、2006年ソニー株式会社入社。B2Bソリューション営業やデジタルシネマビジネスの立ち上げを経て戦略部門マネージャー。2011年、(株)ソニー・コンピュータエンタテインメントにてプレイステーションネットワークのサービス立ち上げに従事、ゲーミフィケーションによる行動変容について学ぶ。2015年、ソニー(株)新規事業創出部 A10 Project 統括課長として『みんチャレ』を開発。2017年エーテンラボ株式会社(A10 Lab Inc.)を設立しソニーから独立。ソフトバンクアカデミア 外部一期生。大企業のイントラプレナーからスタートアップのアントレプレナーに進化した起業家。

キャリアヒストリー

  • 2006年3月 東京工科大学 メディア学部 卒業
  • 2006年4月 ソニー株式会社入社
    映像機器の法人営業、戦略部門を経て、クラウド音楽配信サービス『Music Unlimited』の日本立ち上げメンバーに。その後、自らの発案でスマートフォンアプリ『みんチャレ』を開発しリリース。
  • 2017年2月 エーテンラボ株式会社(A10 Lab Inc.)を設立
    ソニーから独立。代表取締役として『みんチャレ』の事業展開を加速させている。

頭で考えるのではなく行動することを学んだ大学時代。就職先にソニーを選んだのは「業績が悪かったから」

——どのような学生時代を過ごしましたか?

 もともとは東京藝大に行きたかったんですよ。私立の美大には受かったのですが藝大は2浪をしても受かりませんでした(笑)。結局、東京工科大学のメディア学部に進学。当時は、設立3年目の学部で、新しいことはなんでもやっていい雰囲気がありました。加えて、スカラシップ制度に合格し大学からの奨学金で学費を全額まかなえたこともあって、親に学費ではお世話にならない。これは好き勝手にやってやろうと(笑)。映像制作会社に大学1年生にインターンとして入って、そのままアルバイトを経由し、フリーランスのディレクターになりました。自分で映像をつくって、制作費をいただく。これが本当に楽しかった。自分がつくったものに価値を感じてくれる人がいて、対価をいただける。ああ、働くってこういうことなんだ、と実感しましたね。さらに稼いだお金で新しい価値を生み出そうと、自主制作映画をつくっていました。

 もう一つ、学生時代の出来事で今の自分につながっていることがあります。メディア学部の生徒は、卒業後の進路として映像業界に行きたいという人が多かったのですが、3年生になるまで映像制作の基礎技術を教えてくれる講義がありませんでした。3年生になって初めて、カメラや編集機材に触れるのでは、いい映像はつくれません。ですから、「1年生向けの映像技術の講義を、私にやらしてください」と大学側に提案しました。「何を言ってんだ、お前は学生だろ!」と驚かれましたが、何とか提案は通って、半年で十数回の講義を持たせてもらえました。

 ここで気づいたのが、何でもやってみることが大事ということ。あれもやりたい、これもやりたいって言う学生は多いんですけど、実際に行動するのはわずかしかいない。やれない言い訳を探しているんですね。ただ、一度でも触れてみると、一気にテンションが上がるんですよ。プロが使うカメラを扱ってもらったり、機材を持ち込んでノートパソコンで編集してもらったりする中で、やりたいことが形になっていく実感を持てるんでしょうね。映像を深く探求する人、その道での就職を本気で考える人も出てくる。やはり、人は頭で考えることよりも、まずは行動することが大事なんだと気づきました。後で詳しくお話ししますが、このことは、いま私が手掛けているサービスの根っ子にある考え方でもあります。

——そして、ソニーへと就職しますが、どのような経緯でしたか?

 既にフリーランスとして映像制作の仕事に携わっていたのですが、立ち止まって考えたんですよ。自分の中に、「社会への提供価値を大きくしたい」という想いが見つかって、だったら、映像だけにこだわらずに、色々な業界を見てみようと。総合電機メーカーや玩具メーカー、通信キャリア、Webサービスを展開している企業も受けました。その中で選んだのが、ソニーだった。ソフトだけではなくハードもやっていて、事業の幅広さを魅力に感じました。知的好奇心を持った方が多いことにも惹かれましたね。ただ、入社の決め手になったのは、内定先の中で、最も業績が悪かったことです。私は、2006年の入社なのですが、2003年にソニーショックが起きたり、「最近のソニー製品はイマイチ」と言われていたりした時期でした。社内では変革が求められているだろうから、若い自分にチャンスが回ってくると勝手に思っていました(笑)。

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