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再現性のあるイノベーション経営の型

RとD、アカデミアやスタートアップをつなぐ存在が鍵となる、再現性のあるイノベーション経営システムとは

【後編】ゲスト:三井化学株式会社 社長補佐/新事業開発センター担当 表利彦氏

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 前編では、ナビゲーターの紺野登氏(多摩大学大学院教授、エコシスラボ代表)とゲストの表利彦氏(三井化学株式会社 社長補佐 新事業開発センター担当)が、研究、オープンイノベーション、事業開発といったステップを経て企業が新たな価値を生み出すイノベーションプロセスを概観し、IMS(イノベーション・マネジメントシステム)の意義について語った。後編では、日本企業のR&Dの問題点やイノベーションに必要なエコシステムのあり方について深掘りする。

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日本企業のR&Dはなぜ衰退したか

──前半では、表さんの考えるイノベーションのプロセスやR&Dの役割などについてお話しいただきました。紺野先生は、日本企業のR&Dをどう見ていますか?

紺野登氏(以下、敬称略):表さんの話にあえて付け加えるとすると、これまで日本企業は社会、顧客の要求やニーズを受けたDに強く、それが長期的視点のRにもつながっていた。そのようなR&Dが非常に強くかつマーケットがしっかりしていたから、社会や消費者のニーズに応える良い製品を作って売ることができていたんですね。実はそのようなR&Dでやっていたのはどちらかといえば技術開発、「インベンション(発明)」です。

 ところが最近は、社会の不確実性が高くなり、顧客自身、何が必要なのか、何を注文すれば良いかが分からなくなっています。需要創造・新価値具現化のためのイノベーションが重要になっているわけです。インベンションだけでは価値を生みません。イノベーションで新しい何かを実現する。それを、IMSで包含してできるようにしていかなければいけないということを、私たちは提唱しています(以下、図)。

 表さんのお話は、サイエンスに近いRとDを分け、Dをもっと見なければいけないし、Dだけでもダメで、新しい機会を掘り起こす仕組みが必要だということでしたね。しかもそれが社内組織として必要だと。また、メディアなどで散見される「0から1を生め」というスローガンには無理がある。それはむしろRの世界。イノベーションではより価値を具現化する「1から30」以降が現実的です。

R&Dとイノベーション
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表利彦氏(以下、敬称略):はい。紺野先生の図でいえば、実は「D」は右の社会(Society)や市場(Market)と一体化していて、ちょうどその境界領域である「D」の部分が三井化学のインキュベーションセンターの活動領域に当たります。

紺野:我々はこれまで図の右側に目を向けてもらい「インベンションからイノベーションへ」と、言ってきました。ところが、最近の日本は全体として基礎研究開発力も落ちてきています。R&DのRの側も弱くなっている危惧があります。「技術に強いのになぜ勝てないのか」という問い自体が陳腐化している。

 理由はいくつかあって、まず日本企業のR&Dは今日のお客さんのためのものが多い。そのほうがリターンはしっかり取れるんです。ですが、新しい価値が創出されるかというとされない。ベクトルとしても小さくて、一生懸命お金をかけてやっても徐々に効率は落ち、新しいマーケットも広がりません。だから、日本の企業は「衰退市場で強いけど成長市場で弱い」状態になるんです。

 イノベーション・マネジメントシステムというのは「イノベーションを上手くやるツールでしょ?」と捉えられがちなのですが、そうではなく、企業全体のイノベーションマインドやアントレプレナーシップを高めるために、R&Dも含んだ経営全体を見渡して考える必要があるのです。表さんがやっていらっしゃるのは、まさに、この全体を見るということですよね。

:そうですね。実際に全体を経験することで分かってきたことなので、40年かかってしまいましたけれど(笑)。基礎的な仕組みを日本社会全体に共有できると、あとに続くビジネスパーソンのスピードを加速させ、日本企業の競争力につながると考えています。

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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