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再現性のあるイノベーション経営の型

なぜイケアは組織カルチャーやバリューに基づく経営ができるのか──変わらないバリューと曲がりくねった道

【第3回・前編】ゲスト:イケア・ジャパン株式会社 代表取締役社長 兼 Chief Sustainability Officer ペトラ・ファーレ氏

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 世界最大の家具量販店であるイケアは、創業者イングヴァル・カンプラードの「より快適な毎日を、より多くの人々に」というビジョンのもと、創業時から今に至るまで数々のイノベーションを生み出してきた。今回は、イケア日本法人のペトラ・ファーレ氏(イケア・ジャパン株式会社代表取締役社長兼CSO)と、Japan Innovation Network(JIN) 理事である大本綾氏(株式会社Laere 共同代表/一般社団法人AIDA DESIGN LAB 理事)の対談が実現。イケアのイノベーションの秘密について議論を重ねた。前編である本稿では、イケアが歴史のなかで生み出してきたイノベーション、それらの背後にある経営哲学と組織カルチャー、そしてパンデミック時のイケアの戦略について聞いた。

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すべては「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョンから

大本綾氏(以下、敬称略):本日はイケアが企業として歩んできた歴史、そしてその過程で生み出してきた数々のイノベーションについてお聞きしたいと思います。まずイケアの原点がどこにあるかについてお聞かせください。

ペトラ・ファーレ氏(以下、敬称略):イケアの創業者、イングヴァル・カンプラードが掲げたビジョンは「より快適な毎日を、より多くの方々に」です。そして、彼は、よりよい家がよりよい暮らしをつくると信じていました。だからこそ、イケアは1943年の創業から現在に至るまで80年以上にわたって、家庭用品全般のホームファニッシング製品とそれを活用したソリューションに焦点をあて、ビジネスを展開してきました。

 イングヴァルはまた、「多くの方々」のためになることに本気で挑戦し、そして多くの人に届ける製品やソリューションはどうあるべきかを考えました。もちろん、まずもって機能的でなければ意味がない。その上、美しいデザインで品質が高く、サステナブルでなければならない。そして何より、できるだけ多くの人の手に届くような低価格でなければならない、と。

 だからこそ、イケアのビジネス理念は「優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニッシング製品を幅広く取りそろえ、より多くの方々に購入いただけるよう、できる限り手ごろな価格で提供すること」なのです。このビジネス理念に則り、イケアは1995年に商品開発の指針を「デモクラティックデザイン」として発表しました。ここに関しては、後ほど詳しく説明します。

 これらがイケアの出発点であり、今後も変わらない指針でもあります。

小売業としてのイケアの変遷

大本:そのようなビジョンやビジネス理念を持つイケアにおいて、イノベーションの取り組みはどんな変遷を経てきたのでしょうか。

ファーレ:小売業者としてのイケアを振り返ると、当初は通信販売会社としてスタートし、実店舗事業に移行し、近年、マルチチャネルになったという大きな流れがあります。そして現在さらにオムニチャネルのリテーラーとしても進化しつつあります。

 イケアが家具の通信販売会社としてスタートした当初、イングヴァルたちは家具の破損率が高いことに気がつきました。また、大きくてかさばる家具を輸送するコストも高く、大きな課題となっていました。そこで生まれたのが「フラットパック」です。脚を外して梱包を小さくすれば、破損率は低くなります。スペースも節約できるので、輸送コストの節約にもなります。当然、流通コストが下がれば販売価格も下げられます。低価格でよりよいものを提供する企業であるためには、低コスト企業でなければなりません。

フラットパック
写真出典:イケア・ジャパン「小さな原点から世界的なブランドへ – イケアの歴史」より

 この例でもわかるとおり、私たちが商品開発の指針とする「デモクラティックデザイン」のためには、ビジネス上のすべての側面を検討する必要があります。使用する素材、加工方法、耐久性、バリューチェーンの安定性など、生産・製造、輸送、販売のすべての側面です。

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

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