500 Startups Japanのトップが語る、ベンチャーエコシステムとM&A

500 Startups Japan ジェームズ・ライニー氏 & 澤山陽平氏 インタビュー

 「M&Aをもっと身近に」をキャッチコピーとする専門メディア「M&A Online」の協力により、記事転載(再編集)にて、M&Aの注目トピックを紹介する本コーナー。
 米国シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル(以下VC)、500 Startups(ファイブハンドレッド・スタートアップス)が日本向けファンドを立ち上げたのは2015年11月。3000万ドル(約33億円。1ドル110円換算・以下同)規模を目指している同ファンドは、2016年2月時点ですでに1500万ドル(約16億5000万円)の調達を完了、投資家や起業家からの視線も熱い。そこで、日本代表兼マネージングパートナーを務めるジェームズ・ライニー氏とマネージングパートナーの澤山陽平氏に同社の戦略について聞いた。

[公開日]

[語り手] ジェームズ・ライニー 澤山 陽平 [取材・構成] 小林 麻里 [編] M&A Online編集部

[タグ] ベンチャー 事業開発 企業戦略 M&A

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伝統的VCと一線を画す「Lots Of Little Bets」

 2010年に設立された500 Startupsは、世界60カ国の1500社以上に投資。20カ国以上に拠点を持ち、4つのメインファンドに加え、11の地域特化型ファンドと、2つの領域特化型ファンドを設立している。この圧倒的な数字を背景に「世界で最もアクティブなシードVCと自負している」と話すのはライニー氏。

 500 Startupsが投資する際の前提条件となるのが「シード」、つまり起業したてで企業の立ち上がり段階(アーリーステージ)であるということだ。

 しかし、立ち上がり段階ゆえに、そこから成長せずに死んでいく企業も多い。そこで500 Startupsが掲げる方針が「Lots of Little Bets(小さい投資を多数行う)」だ。さらに、生き残った企業に追加投資を適宜行うことで、「リターンを犠牲にせずに伝統的なVCと比べてリスクを低減している」(同氏)という。

 もともと500 Startupsの社名は500社投資するという意気込みを表現したものというが、すでに世界1500社以上へ投資していることからも、同社の勢いがうかがえる。

 そして、世界中で投資を進めるのは、イノベーションはシリコンバレー以外でも起こると見ているからだ。澤山氏は「インターネットやスマホが発展途上国でも普及してきている。我々はシリコンバレーでベンチャーを待つのではなく、世界中に出かけてイノベーションの種を見つけ、支援する」と話す。

理想はハスラー・ハッカー・デザイナー

 その上で、具体的に投資判断をする際に見ている要素は2つあるという。

 1つ目はコンセプトが良いことだ。「スタートアップ時はいろいろな失敗や壁にぶち当たるので一筋縄ではいかない」(澤山氏)中で、大きな方向性が時代の流れに合っているかどうか、そして紆余曲折があっても成長し続けられるコンセプトになっているかを見ている。

 2つ目は経営層がバランスの取れた「チーム」であること。この「チーム」というのがポイントで、経営者1人の場合は投資対象から外すケースも多いという。「ひとりでできるほどスタートアップは簡単でない」と澤山氏は断言する。

 また、アメリカでは理想的なチーム構成を表すものとして「ハスラー、ハッカー、デザイナー」という言葉があるという。これは、ハスラーはビジネスをつくる人、ハッカーはシステムを作る人、デザイナーは人や会社など全体像に関わる大きなデザインを描く人、という役割分担を意味する。

 「もちろん、地域や分野によって必要な能力は変わってくる。そこで必要なスキルセットがそろうことが大事」とライニー氏。例えばBtoBであれば、パワーのある法人営業マンが必要で、さらに日本であれば、“飲みニケーション”もできるような人材がいれば頼もしいだろう。また、役職で表すと、突き進むタイプのCEO(最高経営責任者)、それを固めるCOO(最高執行責任者)やCTO(最高技術責任者)がそろっていることが、良いチームの一例だという。

 中でもITを駆使するベンチャー企業への投資が多い500 Startupsにとって、優秀なCTOは必須の人材と見ている。「技術は外注で」というベンチャーには投資しないこともあるという。一方で、技術面だけでなく、プロダクトの価値をどう売り込むかというマーケティングの視点を持った人材も必須だという。澤山氏は「一番良いプロダクトが勝つとは限らない。技術と同じくらい伝える力も備えておく必要がある」とその重要性に言及する。

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