CVCファンドのメリット、デメリット―「事業シナジー創出」を実現する“5つの視点”

第7回:M&Aインサイト

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[著] 青木 義則 [提供元] M&A Online編集部 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 企業戦略 M&A コーポレート・ベンチャー・ファンド

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3.投資先経営者との信頼関係を構築できているか

 CVCファンドからの出資は、最初の段階ではマイナー投資になることが多いであろう(出資比率が高くなる場合は、CVCファンドではなく大企業本体からの出資となることが多い)。マイナー出資である場合、株主であるとは言っても、ベンチャー企業への影響力というのは、それほど大きくはない。株主なので話は聞いてくれると思うが、その程度なのである。もし役員を派遣する権利を得ていたとしても、多数決では簡単に寄り切られてしまうのである。

 つまり何が言いたいかというと、ベンチャー企業と事業シナジーを追求していくには、(当たり前の話ではあるが)ベンチャー経営者との信頼関係を構築し、ベンチャー企業側にもメリットのある提案をしていかないと協業は進まないということである。そのためには、大企業側の協業推進担当者もしっかりと汗をかくなどして、ベンチャー経営者から個人としても信頼を勝ち得る努力をする必要がある。株主として上から目線で接するようなことがあれば、こちらからの提案は、間違いなく丁重にお断りをされることになるだろう。

 また、もう一つ別の観点として、協業が非常に上手くいった場合について考えてみたい。そのような場合、大企業側では、協業相手(且つマイナー出資先)であるベンチャー企業の買収を検討したくなるであろう。その際に、ベンチャー経営者との信頼関係を構築できているか否かが、買収の成否を決めるといっても過言ではない。

 協業が上手くいき、業績も良くなっているような状況であれば、ベンチャー経営者には様々な選択肢があるものである。新しく別の大企業とも協業を始めることも出来るかもしれないし、資金調達で新しい株主を迎えたり、株式公開を目指したりといったことも可能かもしれない。

 つまり、ベンチャー経営者との信頼関係が構築できていないと、大企業が買収を考えるころには、ベンチャー企業はむしろ大企業から離れる方法を考えているという状況になってしまいかねないのである。もし、ベンチャー経営者が(自分の持株を売却して)お金を得たいと考え買収に応じてくれたとしても、信頼関係が無い状況であれば、買収完了後に、経営者や幹部社員などが相次いで退職するといったことが起こるリスクも出てくるであろう。もちろん、株式売買契約などでそういった事態を回避するための条項を盛り込んだりはするのだが、契約書だけでは現実的には限界があるものである。

 そのような状況を避けるためにも、大企業側は、協業推進担当者に任せっきりにするのではなく、経営陣や幹部社員なども動員し、ベンチャー経営者との信頼関係構築に取り組むことを考えていくべきであろう。

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