CVCファンドのメリット、デメリット―「事業シナジー創出」を実現する“5つの視点”

第7回:M&Aインサイト

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[著] 青木 義則 [提供元] M&A Online編集部 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 企業戦略 M&A コーポレート・ベンチャー・ファンド

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4.目標達成までのストーリーを持てているか

 ベンチャー企業と大企業の協業を円滑に進める上でもう一つ考えておくべきことは、協業を本格化するタイミングである。ベンチャー企業の一般的な成長過程は、図表5に示すようなものとなる。立ち上げて最初の1~3年(期間は企業により異なる)は、製品・サービスを開発して市場に送り出し、顧客からのフィードバックを得ながら製品・サービスを進化させたり、ビジネスモデルを確立するために様々な試行錯誤を繰り返したりする時期である。そこで手ごたえを感じたら、成長に向けて投資を行い、勝負をかけるのである。

 協業相手がマイナー出資のベンチャー企業の場合、こちらの思惑とは別に、ベンチャー経営者としては、図表5の流れをいかに作っていくかに重きを置いているであろう。大企業の協業推進担当者としても、このような流れを理解しておくことは重要で、現在、協業相手はどの段階にいるのか。自社との協業を進めるタイミングは、今が良いのか、それとも相手が次の段階に到達するのを待って協業を進めるのが良いのか、協業に向けたストーリーを検討するのである。そして、そのストーリーをベンチャー経営者にぶつけ、双方にとってWin-Winとなる協業までのストーリーを共有するのである。

 もし、協業を急ぐよりも、ベンチャー企業が次のステージに到達するのを待った方が良いのであれば、大企業側は、ベンチャー企業側の成長を促すための支援を考えた方が、目的達成への近道かもしれない。ベンチャー企業が成長して企業価値が高まれば、大企業側としても保有する株式の価値が高まるため、株主としてサポートする意味があるであろう。

 協業推進担当者が真面目であればあるほど、投資をしたからには早期に事業シナジーを実現しなければという意識が働きやすい。しかし、ベンチャー企業側は大企業が思う以上に社内リソース(主に人的リソース)が不足しているものである。まだまだ成長途上で、ビジネスモデルの確立も道半ばで、人的リソース不足の状態であるベンチャー企業に拙速に協業を持ちかけると、双方にとって大きな負担となりうることも十分に理解した上で、より戦略的に協業を行うためのストーリーを関係各位で共有することが、結果として目的達成の近道となるのではないだろうか。

ベンチャー企業の成長過程(概念図)図表5: ベンチャー企業の成長過程(概念図)

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