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投資家への「開示」から「対話」へ

長期的な観点で運用を行う個人の「期待投資家」とは──“一対多のIR”で必要なオンリーワンのストーリー

第3回

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 2023年3月期の決算から、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示が義務化されました。これをきっかけに、未財務情報(非財務情報)の開示が加速しつつあります。その一方で、企業と投資家とのエンゲージメント(≒対話)はなかなか進んでいないのが現状です。第3回では、個人投資家にフォーカスし、企業と個人投資家の対話の重要性やその在り方などについて解説していきます。

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なぜ、日本人は投資意識が低いのか

 「日本人の金融リテラシーの低さ」については、たびたび指摘の声があがっています。日本人は総じて投資に対する意識が低く、「株式投資=ギャンブル」という見方すらあります。これには、戦後の金融教育が少なからず影響しています。戦後の金融教育は、ひと言でいうなら「生活向上のために一生懸命、貯蓄に励もう」というものでした。

 1970年は5.75%だった金利は、2024年現在は1.00%未満となり、貯蓄によって金融資産を増やしていくことは難しくなったにもかかわらず、日本人の「貯蓄が重要」という考え方は根強く、今なお、特に深く思考せず銀行にお金を預けているケースが多く見受けられます。

 日本銀行が公表した資金循環統計(2023年10~12月)によると、12月末の家計の金融資産は2,141兆円で過去最高を更新しました。構成比の内訳は、現預金が52.6%と過半数を占めているのに対し、株式等は12.9%、投資信託は約5.0%にすぎません。

 このような日本人の金融に対する受け身な姿勢が、市場の活性化を妨げている要因の一つともいわれており、政府は金融教育の見直しに着手しました。若年層のうちから継続的な教育を通して金融リテラシーを高めるべく、「金融経済教育を受けた人の割合を、2028年度末をめどに現状の7%から20%に高める」方針を固め、今年4月には官民による金融経済教育推進機構(J-FLEC)を立ち上げました。

貯蓄から投資への流れを加速させた「新NISA」

 政府は、長らく「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げてきました。2024年1月にスタートした「新NISA」は、銀行預金に偏っている個人資産を資本市場に呼び込もうとする、国の意思の表れにほかなりません。

 この新制度は早々に変化をもたらしており、日本証券業協会によると、主要証券会社10社における1〜3月の新規口座開設数は170万件、前年同期比で3.2倍となっています。

企業と個人投資家の「すれ違い」

 「新NISA」の開始により、貯蓄から投資へのシフトが一気に加速し、資本市場界隈は「1億総投資家時代」が到来すると盛り上がりを見せています。こうした中、企業と個人投資家の間に“すれ違い”があると私は考えています。代表的なすれ違いの例をご紹介します。

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この記事の著者

白藤 大仁(シラフジ ダイジ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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