多様性の意味をデータ交えて伝える
宮森千嘉子氏(以下、宮森):前編では、社員の自律を促すために、髙橋さんと今井さんが直接社員と接し、段階的な変革を起こしているというお話を伺いました。
自律というのは、日本人にとって怖いことだと思います。なぜなら、日本は世界で最も不確実性を嫌う文化を持っています。それに加えて、ゴールを達成しようとする意識が非常に強い。この2つの要素がここまで強い国は他にありません。その結果、「勝たなければいけない」「負けてはいけない」「間違えてはいけない」というプレッシャーの中で戦うことになり、活力を失い、幸せを感じにくくなってしまうのではないでしょうか。
今井のり氏(以下、今井):そうですね。役割意識や「秩序を乱してはいけない」という意識が非常に強い国民性があります。そのため、自律して尖った考え方を持つ人は組織の中で邪魔者扱いされることが多いのです。しかし、そういった人たちこそ、実は組織を活性化する力を持っているんです。このことを社員に理解してもらうというフェーズに今、私たちは取り組んでいます。
宮森:その理解を得るのは難しいと感じる方も多そうですね。
今井:ええ、多いです。でも、「彼らが組織にいる意味はこういうことだ」「多様性とはこういうものだ」とデータを交えて伝えていくんです。多様性というのは、ジェンダーだけではありません。思考のダイバーシティも含まれます。そのような説明をしたり、ワークショップを実施したりすることで、少しずつ理解が広がってきました。
髙橋秀仁氏(以下、髙橋):FFS(Five Factors & Stress)理論を使って経営陣のタイプをマッピングしたものを公開したのは効果的でした。
この図で右上に位置する人たちは、「出る杭」として打たれやすいタイプです。しかし私たちは、そういう人たちが活躍できる組織を目指しています。一方で、「全員が右上のタイプだと会社が潰れる」ということも伝えています。逆も然りで、お互いにできないことをフォローし合えるからこそ、組織が成り立つんです。それが多様性と役割分担の重要性だと思います。
今井:こういった関係性をデータで可視化することで、多様性に対する納得感が生まれてくるのではないかと考えています。