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なぜ味の素グループは攻めの知財戦略を加速するのか──両利きの人財育成と三位一体のIPランドスケープ

LexisNexis PatentSight+ Summit 2025 レポートVol.1:味の素株式会社 泉井裕氏

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 2025年5月28日にレクシスネクシス・ジャパン社のIPソリューションズ部門が主催した知財戦略カンファレンス「LexisNexis PatentSight+ Summit 2025」より、「アミノサイエンス®を核とした知財戦略の進化と価値創造」と題された講演の模様をレポートする。登壇者は味の素株式会社 執行理事 知的財産部長の泉井裕氏だ。4,200件超の特許、5,600件の商標を保有する味の素グループ(ともに2024年時点)。グローバルな製品展開を支える、三位一体の知財戦略、人財育成、IPランドスケープの取り組みなどが語られた。

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味の素グループの「価値の源泉」を支える知財戦略

 1909年のうま味調味料「味の素®」の販売開始を皮切りに、100年以上にわたり世界中の食と健康を支えてきた味の素グループ。創業当初からグルタミン酸を主成分とする調味料の製造法に関する特許と「味の素®」の商標登録を受けるなど、同社グループの歴史は知財を大事にしてきた歴史でもある。

 その象徴が「アミノサイエンス®」だ。アミノサイエンス®とは、アミノ酸に関する研究プロセスや実装化プロセスから得られる素材や機能、技術、サービスの総称を指す。味の素グループの製品群や、それらを支えるコア技術の多くが、アミノサイエンス®から創出されている。同グループの価値の源泉とも言えるだろう。

アミノサイエンス
出典:味の素株式会社『味の素グループの知財戦略を通じた企業価値向上の実現』(2023年9月4日)/クリックすると拡大します

 そのアミノサイエンス®から生まれる広範な技術を権利化し、活用しているのが同社の知財戦略だ。味の素グループは、特許、商標、意匠の権利化、ノウハウ保護などを通じて参入障壁を強化する「守り」、知財の積極活用による事業の創出や拡大などを「攻め」とし、その両面で知財戦略を展開している。

「特に味の素グループは伝統的に“守りの知財戦略”を重点的に行ってきました。一方で、現在は“攻めの知財戦略”にも力を入れており、攻めと守りのバランスを考えて実行し、持続的な成長を実現していきたいと考えています」

 では具体的に、味の素グループの知財戦略とはどのようなものか。泉井氏はまず守りの知財戦略の事例を紹介した。

 その1つが、アミノ酸発酵での事例だ。アミノ酸の生産工程では、アミノ酸生産菌の育種や培養、アミノ酸の精製などに数多くの技術が用いられる。味の素グループでは、これらの技術を継続的に特許化しており、参入障壁を構築してきた。そして、特許権の侵害に対しては断固とした姿勢で臨み、これまでも米国、中国、韓国などの企業と権利侵害をめぐって争い、国内外で勝訴や和解金を獲得することにより、さらにその“壁”を高くしている。

 また、食品事業においては、独自の製品設計のノウハウ「おいしさ設計技術®」を汎用技術として構築。おいしさ設計技術®と原料やレシピ、商標などを組み合わせることで、総合的に参入障壁を築いてきた。事実、味の素グループの食品事業における特許のうち、約4分の3はおいしさ設計技術®に関連したものだ。さらに、商標権を活用した類似品・ブランド不正使用排除も積極的に進めている。

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世界トップシェアを支える「三位一体の知財戦略」

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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