ライフイズテック流、盛り上がる“ 場 ”の作り方~中高生 × プログラミング × 大学生~

ライフイズテック・水野雄介社長(2)

中高生向けのプログラミング教育を提供するライフイズテック。教育×ITで子供たちがプログラミングを楽しみながら学べる環境を作ることを目指す代表取締役の水野雄介さんに、盛り上がる”場”の作り方についてお聞きした。

[公開日]

[提供元] 異端会議

[タグ] 教育 EdTech

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場を好きになってもらうことで、学ぶことも楽しんでもらえる

薮崎 HPを拝見すると、イベントが盛り上がっているのが伝わってきます。

水野 僕らは、ディズニーランドよりもLife is Techに行きたいと言ってもらえる場所になることを目指しています。ディズニーランドってすごく行きたくて行く場所じゃないですか。だけど、勉強するための学校には行きたくない。この違いは何なのかを意識しています。

ライグイズテック株式会社 社長 水野雄介
1982年、北海道生まれ。慶應義塾大学理工学部物理情報工学科卒、同大学院修了。大学院在学中に、開成高等学校の物理非常勤講師を2年間務める。その 後、株式会社ワイキューブを経て、2010年、 ライフイズテック株式会社を設立。14年に、同社がコンピューターサイエンスやICT教育の普及に貢献している組織に与えられる “Google RISE Awards ” に東アジアで初の授賞となるなど世界的な注目を浴びている。「日本のIT界にイチロー並みの人材を送り出す!を目標に世界を駆け回る日々を送っている。

 まず、キャンプやスクールを『行きたい場所』として思ってもらうために、一緒に学ぶ人や教えてくれる先輩がみんな楽しそうに見えるように工夫しています。たとえば、みんなが好きな色のTシャツを着るところからこだわっています。カラフルなTシャツで自由な雰囲気を感じてもらって、写真に映るテーブルも何もかも『充実している』、『楽しんでいる』ということが伝わるようにしているのです。

 小さなことですが、こうした雰囲気が『ちょっと参加してみようかな』につながるのです。単にわいわい盛り上がっているだけではなく、友達ができそうとか、夏の思い出が作れそうとか、個性を獲得できそうだとか、十人十色な中高生の『楽しそう』につながるようにしています。また、外からどう見られているかも重要です。場に所属することは、自己表現にもつながっているので、どういう見せ方にするのかはHPなどでも気を遣っています。

薮崎 場をあたためるような工夫はされていらっしゃいますか?

水野 初対面同士の中高生が集まるので、お互いに打ち解けるためのイベントもたくさん用意しています。共通の興味について共同で行うことで一気に距離が縮まります。たとえば、プロモーションビデオをみんなで一緒に作ろうということもあります。みんなが好きなアイドルのPVを真似して、動画編集ソフトで作ってみようよ、と。本当にちょっとしたことですが、そうした小さな仕掛けを積み重ねることで、「場を好きになってもらうのです。そしてその結果として学ぶことも楽しいと思ってもらえます。場をどう盛り上げていくかということは、中高生の学びの深度にも密接に関係しているのです。

薮崎 学生はどのような意識でイベントに参加しているのでしょうか。

水野 中高生は、プログラミングで出来ることに興味関心があったり、楽しそうだからといった理由で参加を決めています。どちらかというと『スキル習得のために参加しよう』というよりは、『楽しそう』という思い一つで参加する中高生が多いように感じます。『将来役に立ちそう』という発想は大学生とか、親御さんの考え方かもしれません。

 プログラミングのスキルが身について、しかも学校や自宅では体験できない刺激を受けられるというのが、参加の動機として大きいものがあるのではないでしょうか。たとえば、オックスフォードでの初めてのキャンプでは、1249年からある世界最古のカレッジに泊まるなどの取り組みもしました。

 参加した中高生がコミュニティを作れることも、『楽しそう』と感じてもらえる要素だと思います。教育って即効性がないというか、すぐに成果が目に見えるかたちであらわれるものではありません。なので、何を学ぶかはもちろん大事ですが、中高生当人にとっては、誰と学ぶかやどう学ぶかが重要な要素になってくるのです。たとえば、いかに物理好きだったとしても、学校嫌いだったり、一緒に学ぶ友達や学ぶ先生が嫌いだったりすると、物理自体もイヤになってしまう。だから中高生は、総合的な要素がある学びに惹かれるし、弊社としてもそういう場を提供したいと思っています。

 プログラミングにおける成功体験、一緒にキャンプに参加した同世代の子たちの輪、さらにはメンター(プログラミングを教える大学生)のコミュニティも、不可欠な要素だと思います。特にメンターは、中高生にとって学校における直接の先輩後輩関係ではない、いわば『斜めの先輩』とでもいうべき存在です。『将来こんな先輩になりたいな』と思ってもらう憧れの先輩がいることは大事なのです。

 カリキュラムはもちろん重要ですが、そうした総合的な要素があることが、参加したいと思わせる強みだと考えています。同世代の初対面同士が仲良くなれるアクティビティを用意しているので、プログラミングだけにとどまらず、さまざまな刺激を得られるのが楽しいんじゃないでしょうか。

 今後、各企業と提携して僕らがリソースを使わないかたちで、もっと世代を広げることはあるかもしれません。でも、自社としては中高生にしぼると決めています。そう決意するくらい、中高生に特化しているからこそ、子どもたちが集まってくるのだと思います。

ライフイズテックは女子中高生に合わせて作られている

薮崎 イベントの参加数はどれくらいなんでしょうか?

水野 キャンプ、スクール、提携イベントなどを合わせると、延べ人数で25,000人(※2017年10月時点)くらいです。提携イベントは、地方自治体と協力するものが最近はすごく多いです。地方では、自治体の中で産業を作り出せるような人材を育てて、地方に根付いた活動をしてもらいたいという意識が強くなってきたのかもしれません。ITならそれが可能ですから。大学生が中高生を指導してやっていくというシステムを、広島や福岡、宮古島などで広く展開してやっています。

薮崎 何度も繰り返し受講する中高生はいますか?

水野 リピーターが多いのもライフイズテックのイベントの特徴だと思います。参加者の内訳は、半数がリピーターで、半数が新規です。特にリピーターに個性が出ます。例えば1回目にiPhoneのアプリを作るコースを受講した子がリピーターになり、1年かけてアップルストアに出せるオリジナルのアプリを作ったりします。そうしてストアに出すと、ダウンロード数という目に見える成果が分かるので、もっと作り込んで、とか次はこんなアプリを‥‥と、より深いところまで学んでいくパターンが一つありますね。

 一方で、アプリを作ったら宣伝する動画やウェブサイトがあったらいいんじゃないかとか、もっとデザイン性を重視するべきだよねとなって、違うコースを新しく受講したりする子もいます。リピーターといっても、中高生の興味や関心によって学びたい内容はさまざまなのです。

薮崎 進学校の生徒が多いのでしょうか?また、中1〜高3の割合や男女比などはどうでしょう?

水野 進学校の学生が多いということはありません。高3は受験があるのであまり来ませんが、それ以外の年齢分布は大体均等です。男女比は、6:4もしくは7:3くらい。海外だと女の子は9%くらいなので、これはかなり特徴的な割合だと思います。2014年に、コンピューターサイエンスやICT教育の普及に貢献している組織にGoogleが与える賞『Google RISE Awards』を東アジアで初めて獲得したのですが、この受賞にあたっては女子中高生の積極的な参加というのも、大きな理由になっています。

薮崎 女子中高生が参加しやすい理由について教えてください。

水野 入り口はスマホですね。今は中学生でも自分のスマホを持っている子が多くて、スマホのアプリは彼ら・彼女らにとってとても近い存在なんですね。昔は、中高生にとってプログラミングは遠い存在で『プログラミングでゲームを作れるよ』と言われても、本当にゲームやパソコンが好きな人じゃないと触りたくないというところがあったと思います。中高生が興味があることにプログラミングが役立つ、と理解してもらって、プログラミングを自分に近い存在だと感じてもらうことが大事だと考えています。

 スマホアプリの他にも、YouTubeなどの動画系メディアに関する要望や、PSVRのゲーム作りたい、などのアイデアを出してくる子もいます。絵を描きたい、サッカーをしたいというのと同じ感覚で、プログラミングでやってみたいことが出てくるのです。画一的にプログラミングだけを教えるのではなく、まず興味のあることをフックにして、それをもっと進化させてくれる存在としてプログラミングがあると思ってもらいます。

 実は、弊社のサービス全体の設計は、女子高生に焦点を合わせて作っているのです。女子は特に“場”の雰囲気について敏感だと感じます。それが女子生徒の参加率向上につながっている要因でもあるのではないでしょうか。もちろん、そうした全体設計をベースにして、現場レベルでの細かい変更・対応をしていきます。男子中学生に教えるのが得意なメンター、エンジニア気質の人、デザインが得意な美大生、コミュニケーションに長けた大学生などさまざまな個性のあるメンターがいるので、どんなグループ、個人でも盛り上がれるような配置ができるのです。このアサインは肝となります。盛り上がりに欠けるグループがあれば、その場で配置換えすることもあるくらいです。

 メンターを育成する『ライフイズテックリーダーズ』も、そういった属性を考慮して採用しているのです。やはり科目で技術的な人に教わりたい中高生もいれば、一緒にわちゃわちゃ遊んでくれるお兄さんに教わりたい子もいるので、現場の肌感覚をもとにPDCAを回して、適材適所を見極めていきます。
現場レベルの個別設計と全体の設計を両方やることによって、参加した中高生が誰でも楽しめて、深い学びが得られるようしています。

円滑な運営の鍵は、細分化されたフィードバック

薮崎 教える側である大学生の育成について教えてください。

水野 メンターの育成は『ライフイズテックリーダーズ』という仕組みでやっています。募集はHPで、年1回150人くらい採用します。募集は400人くらいなので倍率は3倍くらいかな。そこから100時間の研修をして、それに受かった人たちだけが現場に出られるという仕組みです。
教える経験やプログラミングの技術はもちろんですが、コミュニケーション力もすごく重視していますね。
研修は土曜日で、8時間×12週間、みっちりやります。社員やすでに現メンターである大学生にも手伝ってもらって、研修中もコミュニティをきちんと作っていきます。宿題もかなり多いこの研修は無給ですが、大学生にとっては自分のための勉強として捉えてもらっています。この研修に受かって現場に出たら、メンターとして日給をお支払いしています。
こうして育てたメンターのマネージメントとして重視しているのは、ミーティングです。メンター総会のほかに、いろいろな役割ごとに情報共有してもらったり、振り返りをして前回こうだったから次はこうしようとか、意見を交換しています。教える現場のメンターのフィードバック、運営側のフィードバック、カリキュラムのフィードバックと、それぞれ振り返りを細分化し、中高生のいい学びのためにすべてを集約させています。

薮崎 大学生にとってメンターになるモチベーションや原動力はなんでしょうか?

水野 将来、就職に役立つと思ってメンターの活動をする学生は多いと思います。協賛企業に優先的に採用されたりもします。うちのメンターは、エンジニア系だけでなく、デザインを学んでいる子や、コミュニケーションをとるのが上手な子など、本当にいろいろな子がいるのです。
コミュニティを作りやすい環境にしているので、大学生はライフイズテックリーダーズにいること自体が楽しいんだと思います。サークルみたいな雰囲気で、なおかつ自分たちが成長していく実感、自分たちで物事を進めていく実感を感じることが出来るのだと思います。勉強会をしたり、テクニカルな話ができたり。技術力を高めて、アプリの大会に出たりする大学生もいます。
薮崎 現場の運営はすべて手がけているのでしょうか。

水野 僕が現場に出ることもありますけれど、副代表がキャンプを全部見ていて、マネージャーがいて、リーダーがいて‥‥という体系を作っていますね。会社は副代表で元同僚の小森と、営業やもろもろを見ている大学時代の友人と3人で立ち上げました。役員、マネージャーとして入っているのも、中高で僕の後ろの席だったやつとか、創業当時に別のベンチャーやっていたやつとか、基本的に仲良くて、仕事ができて役割の違う人に入社してもらっています。尊敬しあうことができれば、これはうまくいく方法だと思います。
友達を入れるとうまくいかないパターンはよく聞きますが、気心が知れていると一緒に仕事していて楽しいですよね。仕事も“場”が楽しいというのは、重要なことだと思います。また、『中高生のために働く』というミッションが明確なので、友人同士でもブレることなく仕事ができているのかもしれませんね。

※インタビュアー:薮崎 敬祐(やぶさきたかひろ)株式会社エスキュービズム代表取締役社長 2006年にエスキュービズムを創業し、IT、家電、自動車販売など様々な事業を展開。「あったらいいな」ではなく「なければならない」領域に、新しい仕組みを提案している。

本記事は提携サイト『異端会議』(http://itankaigi.com/)の一部転載です。

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