DXで捻出したリソースをクリエイションに充てる
──はじめに、ネイキッドの事業概要をお聞かせください。
北原(ネイキッド):アートイベントの企画・制作や、クリエイションの知見を活用した企業コンサルティング事業、地域共創事業を手がけています。2025年7月末から、世界遺産の元離宮二条城で開催される夜間アートイベント「NAKED meets 二条城 2025 夕涼み」の企画・演出・制作も我々の仕事です。

──コロナ禍を経て、オフラインイベントはどこも活況を呈しているようです。御社のビジネスを取り巻く環境がどのように変化しているか、お話しいただけますか?
北原(ネイキッド):当社比で見ても、人流はコロナ禍以前の水準まで回復傾向にあります。訪日外国人観光客の数が増えたほか、海外におけるイベント需要の高まりも感じているところです。

──クリエイションを語る上で、生成AIの台頭は無視できません。テクノロジーの進化にともない、御社の制作物に求められるレベルも上がっているのでしょうか。
矢部(ネイキッド):当社のミッションは「最先端のアートテクノロジーを取り入れながら、時代や社会に新たな価値を提案していくこと」です。生成AIも取り入れつつ、人の手によってしか生み出せない価値をいかに作り上げていくか。この点に向き合う必要性を感じています。

矢部(ネイキッド):生成AIをはじめとするテクノロジーは、効率化や時短というメリットをもたらします。DXで捻出したリソースを、クリエイションや価値の創出に充てられる体制も構築しなければなりません。
CRMツールを用いた案件管理に限界を感じた
──DXの話題が出たところで、バックオフィス業務の課題をうかがえますか?
北原(ネイキッド):管理会計の非効率性が課題でした。月次決算の遅延がその代表例です。以前は担当の税理士に毎月の決算を委託していたのですが、報告のタイミングが翌月の半ばにずれ込むため、前月の収支を把握するしかない状況でした。これでは事業の状況把握に遅れが生じ、戦略や方針の意思決定においても時期を逸してしまうリスクがありました。柔軟な戦略実行やタイムリーな意思決定を可能にするためにも、売上や収支をリアルタイムに把握できる環境が必要でした。
矢部(ネイキッド):案件管理に費やされるリソースやコストも課題の一つでした。これまでは、CRMツール上で案件に売上や原価を紐づけて、プロジェクトごとの収支を管理していました。イベントの企画・運営やコンサルティングサービスは非定型商材のため、プロジェクトごとに原価や収支が異なります。その管理に用いていたCRMツールがコスト増の要因になっていたのです。元々高価な製品だったことに加え、仕様の複雑さゆえにシステムの改修や機能追加には外部ベンダーへの委託が必須でした。それらに費やされる費用や手間は少なくなく、コスト増につながっていました。
──いまお二人からうかがったようなバックオフィス業務の課題は、同業他社でも生じているのでしょうか?
木之下(フリー):私は日頃から広告代理業/コンテンツ制作業のクライアントと対峙していますが、案件管理にまつわるコストは、非常に多くの企業で共通する経営課題としてよく耳にします。矢部さんが指摘されたとおり、この業界ではプロジェクトごとの収支管理が欠かせません。しかし、その管理を統合的に行えている企業は、実は多くありません。

木之下(フリー):ネイキッド様のケースとは異なりますが、売上と原価を別のシステムで管理していたり、スプレッドシートの案件管理のデータを手作業で会計システムに連携していたりする企業は少なくないです。こうした非効率の解消は、バックオフィス業務の負担を軽減し、企業の競争力を高める上で避けて通れない課題だと考えます。