写真:PwCコンサルティング合同会社 副代表執行役 今井俊哉氏/ディールズストラテジーリーダー,パートナー 青木義則氏
日本のCVCは3年経過すると停滞感
PwCアドバイザリーによる国内CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)に対する調査は、国内57名のCVCファンド従事者にたいしておこなわれた。その結果は以下の概要となった。
- 運営が順調と考える担当者の割合は、設立当初の81%から3年経過すると55%まで低下。
- 37%が「適正な投資条件か自信がない」、26%が「ほぼ全案件が投資委員会を通貨してしまう」
- 運用開始から3年通過後、事業シナジー実現の難しさを感じる担当者は4人に1人。
- 追加出資による買収(株式過半取得)まで明確なシナリオを描いているのは20%未満。
これによると、CVCを設立当初は8割が順調で、その後不安を感じているという結果になる。しかし回答者のうち8割がファンド設立3年未満であり、3年以上の回答者は11名ということを勘案すると、現状のCVC案件が尻すぼみと判断するのは早計かもしれない。
これに対して、PwCアドバイザリーの青木義則氏は「1〜2年目は投資案件を通すだけで精いっぱいだが、3年目になると社内での投資の結果が求められ難しくなる」と述べた。
むしろ、CVC案件が社内でほとんど通過してしまうことや、担当者の運用に対する自信の無さといった課題が浮上しているといえるだろう。
またCVCの場合、一般のVCと違い上場によるキャピタルゲインなどの収益だけが目的ではなく、事業シナジーを目的とするケースが多い。
しかし今回の調査では、出資した企業に対して「買収まで想定している」というケースは19%しかない。残りの8割が「持ち分維持するが追加出資の可能性はあるが買収は想定しない」(46%)「個別判断」(23%)「特に方針は決めていない」(12%)という結果だった。
「海外であれば事業シナジーが見込めれば買収する。日本の場合、過半数の出資は見込まないのに、どうやって事業シナジーを作るのか?その議論はあまりなされていない」と青木氏は指摘する。