本屋の新しいカタチを求めて
-- かなり賑わっているんですね。そもそも書店のTSUTAYAさんがこういうカフェを運営している目的は何ですか?
穴沢 スタートアップカフェそのものは、福岡市の政策であるスタートアップ支援事業の一環で、TSUTAYAはそれを受託している立場です。運営の主体は福岡市ですが、TSUTAYAの側からみると、本屋という空間にどういった機能を付け加えていくかという試行錯誤のひとつです。 今、本が売れないと言われていますが、まだまだ本屋は「人と情報が集まる場所」です。そこに、ベンチャーの人やエンジニアのコミュニティが集まるカフェがあって、化学変化が起きれば良いなという考えから始めたものです。
-- カフェでの活動はどのようなものですか?
穴沢 弁護士など士業の先生やコンシェルジュによる個別相談と、やセミナーです。イベントは既に起業した方、最近は弁護士や弁護士による勉強会をおこなっています。セミナーは、最大50名ぐらいの席数になりますが、立ち見になることもありますね。基本的に無料のセミナーが中心です。最近では、ビジネスモデルに関するレクチャーセミナーとか、最近では銀行の方や弁護士の方のレクチャーマーケティングについてのセミナーもあります。 またセミナー以外にも、フリーランスの人の勉強会なんかも多いですね。ロゴのデザインに関するものとか、高齢化の問題地域課題についての勉強会なども多く来場頂いています。
福岡市スタートアップカフェの機能は、コンシェルジュがワンストップの開業の相談をおこない、人材の雇用や斡旋などもおこなう。エグゼクティブコンシェルジュは、地元のVCとしてしられる藤見哲郎氏(ドーガン)、アンバサダーコンシェルジュに市江竜太氏(エニセンス)、村上純志氏(AIP)、段野陽輔氏(DAN)、清水弘一氏(リンクトブレイン)の5名。常時滞在しているコンシェルジュは、穴沢さんほかカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と、ドーガンのメンバーとなる。
個人事業者にもスタートアップノウハウを伝授
-- コンシェルジュにもちこまれる起業の相談は、どのようなものが多いのでしょうか?
穴沢 けっこう気軽にお越しいただくケースが多いんです。事業計画書をビシっと書くというより、「こんなアイデアがあるんですがどうでしょうか?」という感じで皆さん来られます。もちろんそういう形でも、歓迎なんですよ。 コンシェルジュも5名の誰かが、常駐していて、エグゼクティブコンシェルジュの藤見さんやアンバサダーコンシェルジュの方も定期的に来ていただいたますので、かなり本格的な相談にのっていただくこともあります。 いきなりベンチャー・キャピタルに投資の話とか、銀行に融資の話とかではなく、そもそも資金計画をどう考えるのかという基本的なことから相談いただけますから。
福岡市は開業率がナンバーワンだという。その中でも東京のようにイグジットを狙うベンチャーは、それほど多いわけではなく、個人事業主が多いのだという。とくに飲食業は、博多の場合激戦区。東京のチェーン店もなかなか参入できない。しかし美味しい食材には恵まれていて、仕入れルートも豊富。地元の金融機関からの融資も、他県に比べると恵まれているようだ。
-- どのくらいの数の方がいらっしゃいますか?
穴沢 1日5件ぐらい。月間で100数十件ぐらいですね。
-- かなり多いですね。
穴沢 起業といっても、特にイグジット狙いのベンチャーの方ばかりではありません。ここ福岡は、個人事業主が開業しやすいのです。飲食店、美容院からネイルサロンなど、開業の相談が引きも切らずにきます。スタートアップの方法論は、なにもベンチャー企業のマネジメントだけではなくて、そういった個人事業の開業にもすごく役立つものです。
原価、仕入れ、売上といった基本的なお金の考え方とか、ビジネスの考え方とかを知っていただくだけでも、成功の可能性は高まりますから。
スタートアップカフェは現在「スタートアップクラブ」の参加メンバーを募っている。メンバー会員は会員限定のイベントやメールによる情報提供、また協賛企業の特典サービスも受けられる。協賛企業は、アマゾンなどのクラウドサービスベンダや、クラウドワークスなどのクラウドソーシング、freeeなどのクラウド会計、その他B2B系クラウドサービスの割引がある。(http://www.startupcafe.jp/partner/index.html)
-- ブックストアとしてこういうスペースがあると、本業の方との関連でメリットはあるのですか?
穴沢 ここに来られた方に、事業のアイデアになる本をお薦めしたりということはもちろんあります。また「ビジネスモデル・ジェネレーション」のようなスタートアップに役立つ本の勉強会などにも、どんどん利用していただくことで、ブックストアを中心にしたコミュニティスペースが作れれば良いと思っています。読者との交流の場として、著者の刊行記念イベントなどにもどんどん活用していただければと思います。