コロナ禍を経て、在宅勤務の普及など働き方が大きく変化する中、多くの企業から社員エンゲージメントの悪化を懸念する声がある。しかし今回、コロナ禍の前後で社員エンゲージメント調査を実施した日本企業10社・約20万人の回答データを基に社員エンゲージメントの変化を分析したところ、社員エンゲージメント自体はほとんど変わらず、むしろ社員エンゲージメントを構成するもう一つの要素である「社員を活かす環境」については向上していることが明らかになったとのだという。
結果概要
20万人全体では社員エンゲージメントはほぼ変化なし(+1ポイント)、社員を活かす環境は+3ポイントの改善となった。企業別で見ても同様の動きとなった企業が多く、下グラフのうち社員を活かす環境=縦軸方向には10社中9社がスコアの改善を示している。過去の調査結果推移を見ても連続する2回の調査の前後比較でここまで類似の傾向を示すことはなく、本変化はコロナ禍による影響が一定程度影響している可能性が高いと言える。この調査データを見る限り、コロナ禍による在宅勤務を経て社員エンゲージメントが低下しているというイメージは、事実と違うということが言える。
調査分析責任者のコメント
「今回の分析結果を通じて、緊急事態宣言下での職場・個人に対する各日本企業の環境整備努力には明らかな効果が見られ、それが社員エンゲージメントの維持ならびに社員を活かす環境の向上につながったと考えられる。コロナ禍後の新たな世界を前にして、改めて自社や事業の根源的な存在意義(purpose)を問い直し、より強固な方向性を示すことで会社に対する求心力を高められるか否かが今後の社員エンゲージメント向上に対する本質的な鍵になるだろう」(コーン・フェリー・ジャパン株式会社Digital部門 シニア ビジネス ディベロップメント ディレクター 岡部 雅仁、アソシエイト コンサルタント 塚越 惇一)
調査対象データ
- コロナ禍前とコロナ禍後にコーン・フェリーと社員エンゲージメント調査を実施した日本企業10社20万人のデータを参照。コロナ禍後のデータは2020年7月~12月に実施した調査のもの
- 対象とする日本企業10社は電機・重工業・製薬・商社など幅広い業種を含む
- 大半の企業の調査は海外関連企業も含めたグローバル調査として行われたが、今回は特に日本在勤者の意識の変化を確認するため、海外在勤者の回答は除いた
- 対象10社は千人未満規模が2社、千人以上1万人未満が3社、1万人以上が5社の結果となり、総人数では20万人の日本在勤者の回答が参照データ元となる。なお、千人以上の企業データについては子会社・関係会社も含めて1社としてカウントしているため、実際の法人数は50社~100社程度
コーン・フェリーの社員エンゲージメント調査設問
- コーン・フェリーが実施する社員エンゲージメント調査の標準74設問は数問ずつのカテゴリーに分類して集計
- 特に重要な結果指標として「社員エンゲージメント」と「社員を活かす環境」の2カテゴリーを設定
- 社員エンゲージメント:会社へのロイヤリティや自発的努力といった“社員の意欲”の指標
- 社員を活かす環境:適材適所や働きやすい環境といった“職場の環境”の指標