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変革の羅針盤:WiLが探る日本企業の未来

AI導入はなぜ頓挫するのか? 日本企業が直視すべき「現実」と変革への5ステップ

第1回

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経営陣やリーダーこそ「自ら手を動かす」べき理由

 ここまで3つの実行ステップを先に示したのは、意図的な順序です。これから述べる2つは、実はすべてのステップを貫く土台であり、一度やれば終わるものでもありません。

ステップ4:AIは長期投資だと腹をくくる

 ツールを展開したあとに受け入れるべき現実。それは、「AIが全社レベルで財務的なリターンを生むには時間がかかる」ということです。

 マッキンゼー『The State of AI: Global Survey 2025』によれば、AIがEBIT(利払前・税引前利益)に全社レベルで寄与したと答えた組織はわずか39%です。また、ボストン・コンサルティング・グループ『BCG AI Radar 2026』では、2026年中に成果が見えなくてもAI投資を続けると答えたCEOは94%に達しています。

 要するに、AI投資は長期戦です。この長期戦を勝ち抜くには、インフラレイヤーから手を打ち、数手先を読む必要があります。具体的には、後回しにしてきたレガシーシステムの刷新に本腰を入れること、そして「特定のLLM提供元に依存しない柔軟なAI基盤」を築くことです。

 業務全体に組み込んだAIの文脈を、途中で別のLLMに切り替える作業は想像以上に骨が折れます。そのため、企業固有の文脈や記憶をLLMやツールをまたいで一元管理する「AIメモリー(Mem0やXTraceなど)」という領域が立ち上がりつつあります。日本企業は、AI投資を四半期決算の尺度で測るべきではありません。初日から特定の提供元に縛られないインフラを設計し、市場の動きに柔軟に対応できる基盤へ投資すべきです。

ステップ5:自ら手を動かして探求する

 学び続けるリーダーだけが、変化を恐れずに組織を前に進められる。私はそう確信しています。

 まずは自分自身でツールに触れてみてください。使い方がわからなければ、ツールそのものに聞けばいいのです。子どもの頃の好奇心を思い出してください。たとえば、あるAIのPowerPointアドインはまだベータ版のリサーチプレビュー段階にあり、本番の業務環境で使うにはセキュリティ面の不安が残ります。しかし、私は古い個人用PCのデータをすべて消去し、AI実験専用のメールアドレスを新たに作り、それを自分だけの実験場として使っています。エンタープライズ向けの正式版が出る前に、こうしたツールが自分の仕事のどこにはまるかを肌で感じておく。その経験の価値は計り知れません。

 すべてのリーダーに伝えたいことがあります。AIが自社をどう変えうるかを理解する責任は、部下に丸投げするものではありません。トップ自らが手を動かし、試行錯誤する姿こそが、組織に対する最も力強いメッセージとなります。「これは本気だ」という意思は、指示ではなく行動で伝わるのです。そして、個人の行動が積み重なったとき、組織が変わり、産業が変わり、国が変わります。

なぜ日本にはそれができるのか

 AIは、日本が自らを再発明するための千載一遇の機会だと私は確信しています。

 OECDの2022年調査とJILPT(労働政策研究・研修機構)の2024年調査を並べると、職場でAIを使っている人の割合は、調査対象国のなかで日本が最下位です。

図1:国別・職場におけるAI利用者の割合(出典:OECD (2025), Artificial Intelligence and the Labour Market in Japan)
図1:国別・職場におけるAI利用者の割合
出所:OECD「Artificial Intelligence and the Labour Market in Japan」(2025)
クリックすると拡大します

 しかし、日本には追い風も吹いています。同じOECD報告書によれば、日本のAI利用者に限ると、雇用が「増える」と期待する人が「減る」と懸念する人を上回っています。もっとも、AIを導入した企業で働く日本人労働者の雇用喪失に対する不安は他国より強いため、楽観一色とは言えません。それでも、少子高齢化による慢性的な人手不足を抱える日本にとって、差し引きでプラスの見方が勝っているという事実は、導入を後押しする現実的な根拠になり得ます。

 AnthropicやOpenAIのような、世界的に知名度のある日本発のLLMプロバイダーがまだないことは事実です。AI人材不足が深刻であり、導入の旗振り役を見つけること自体が容易でない事情もあります。しかし、これほど何度も徹底的に自国を作り変えてきた国は世界にも類を見ません。明治維新、そして戦後復興。幾度となく、私の愛するこの国は立ち上がってきました。

 「失われた30年」が、何世紀にもわたる日本の底力や、独自の文化を守り次世代へ受け継いできた営みを覆い隠してしまうのでしょうか。いや、日本がかつてそうしてきたように、再び腕まくりをして自分たちの未来を自分たちで切り開くはずです。今回もきっと、やれます。

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この記事の著者

Milana Kuzmanovic(ミラナ・クズマノヴィッチ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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