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琴坂教授と探る、AI時代の経営学の4つの新潮流──ミドルマネジャーの変容と日本企業の逆転戦略とは

ゲスト:慶應義塾大学 総合政策学部 教授 琴坂将広氏

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 AIの進化が指数関数的に加速し、従来の経営のあり方が根底から揺さぶられている2026年。生成AIは人間の認知限界を突破し、ロボティクスは物理的な組織運営の前提を書き換えつつある。このような激動の時代において、経営学の伝統的な知見はもはや無効なのか。それとも、新たな進化を遂げようとしているのか。今回、新著『経営戦略の進化〈理論編〉』(東洋経済新報社)を上梓した慶應義塾大学の琴坂将広教授にインタビューを行った。琴坂氏は、有史以前から続く経営戦略の系譜を丹念にひもときながら、現代の経営者が向き合うべき「4つの新潮流」を提示する。話題は、既存の「ポーター対バーニー」の対立を超え、AIには到達できないプライベートデータの価値、そして日本企業がかつて持っていた強みの再定義へと展開した。不確実性の「乱気流」を乗りこなすための新たな戦略的視座について、Biz/Zine編集部の栗原茂が深く切り込む。

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AIにはアクセスできない「非公開データ」と「現場の判断軸」

Biz/Zine編集部・栗原茂(以下、栗原):新刊を拝読して、大変な力作だと圧倒されました。2018年の『経営戦略原論』から8年、なぜ今このタイミングで「経営戦略の進化」というテーマを掲げられたのでしょうか。

琴坂将広氏(以下、琴坂):動機は大きく二つあります。一つは、2018年時点ではまだ「周辺領域」と見なされていた議論が、2026年の今、経営戦略のトップジャーナル(主要な学術論文誌)においても完全に中核へと躍り出てきたからです。これらを構造化し、現代における「経営戦略とは何か」という問いに、研究者として一石を投じる責任があると感じました。

 もう一つの理由は、AIに対する強いモチベーションです。「AIに負けたくない」というか、AIには絶対に出せない「知識の生産」をしてみたかったのです。今のAIは、公開情報を軸にした既知の答えを平均的な知能指数で回答することには長けています。しかし、私や研究者にはAIがアクセスできないデータが豊富にあります。

 たとえば、厳格な学術研究論文誌や非公開の有料記事はAIのクロールを拒否していますし、私は日々の業務を通じて、数多くの巨大企業の経営相談や「密室の議論」に深く関わっています。そこで得られる「評価軸」や「成果を上げている経営陣に刺さったロジック」は、AIには決して辿り着けないプライベートデータです。こうした密度の高い時間を背景に、「会議室の中で実際に機能している評価軸」に基づいて、人間としての解釈を込めて執筆しました。

琴坂将広
慶應義塾大学 総合政策学部 教授 琴坂将広氏
1982年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、IT・小売・サービス領域で3社の起業を経験。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、オックスフォード大学にて博士号(経営学)を取得。立命館大学准教授等を経て現職。上場企業数社の社外役員や顧問を歴任。専門は経営戦略、国際経営、制度理論。著書に『経営戦略原論』(東洋経済新報社)、『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)、共著に『アジア発のイノベーション』(Springer)など多数。近著に『経営戦略の進化<理論編>』(東洋経済新報社)、『Unleashing Innovation the East Asian Way』(共著、Springer)。2026年夏頃、理論編の続編となる『経営戦略の進化<実践編>』(東洋経済新報社)を出版予定。

有史以前から続く戦略の骨格「組織・目標・道筋」

栗原:経営戦略というと「MBAで学ぶ営利企業の理論」というイメージが強いですが、本書では経営学史のいわば有史以前まで遡って定義されていますね。

琴坂:経営戦略の定義はそれこそ「本の数だけ存在する」と言われるほど十人十色ですが、私はその骨格を「特定の組織が何らかの目的を達成するための道筋」と定義しています。この主語を「複数の個人によって組成される集団」まで広げて考えれば、これは人類が誕生した瞬間から実践してきたことなのです。

 たとえば、40万年前の狩猟集団における役割分担から、1万年以上前のギョベクリ・テペのような巨大石柱の建造プロジェクトには、すでに現代のプロジェクトマネジメントや資源配分の原型が見て取れます。

 多くの実務家が「経営学の理論は役に立たない」と感じるのは、経営戦略を単なる「事前の計画(プラン)」という狭い定義で捉えているからです。しかし、ヘンリー・ミンツバーグが提唱したように、戦略には「過去の事実としてのパターン」や、競合の裏をかく「策略(プロイ)」としての側面もあります。この多義性を理解することで、研究者の視点と実務家の現実に存在するギャップを埋めることができると考えています。

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なぜ「外部」と「内部」という経営学の軸の変遷は起きたのか

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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