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「いつもマイノリティだった」IBMの人工知能「Watson」エンジニア 村上明子さん

Developers Summit 2016(デブサミ2016)村上明子氏セミナーレポート

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車の開発者への夢は断たれた

 時代は、90年代前半のバブル崩壊後遺症のまっただ中、日産は業績不振に喘いでいた。

修士1年の終わりのとき、そろそろ2年生で、修士論文をまとめているときに、いきなり言われたことが、「ごめんなさい中央研究所には入れません」と。入社したら法人営業として頑張ってくれと言われました。けっこうショックですよね。大学院で勉強して車作るぞ、と思っていましたから。

 この時も村上さんは人に恵まれていた。学費は貸与なので、返せば良い。「研究を続けたいのであればいくつか研究所を紹介するよ」と言われた。
 そして村上さんは就職活動をし、IBMに入社した。

そういえば、いつもマイノリティ

 IBMに入社後、今は閉鎖された中央林間の大和事業所にあった基礎研究所に配属された。この時も、研究者として、「ハードウェアか?ソフトウェアか?」という選択肢が与えられたが、あまり深く考えずにソフトの道を選んだと村上さんは言う。子供の頃にパソコンが好きだったとは言え、その後コンピュータサイエンスとは無縁で、授業で制御系のプログラムを書いた程度だった。同期で入社したメンバーのうち、女性は村上さん以外は、コンピュータサイエンスの専門を極めた人たちだった。
 村上さんはここでも、自分が少数派だと感じた。

考えてみればですね、私いつも集団の中でマイノリティだったなと。女子校の中でコンピュータ好きって言って変だな、って言われて、早稲田でもよく考えたら、女の子って4%しかいなかった。それで私が研究所ですごく心がけたのは、マイノリティだったらマイノリティなりの意見というのを、みんなに伝えることっていうのが私の使命なんじゃないかな、って思ったんですね。

 村上さんが示したチャート。横軸が時間で縦軸が所属している団体の女性の割合を示したもの。女子、中、高、そして女子大は100%だが、大学で4%になり、大学院で1.5%になる。IBMは女性が多い会社だ。とはいうものの研究所では10%ぐらいになる。

「自分はいつもマイノリティとして生きてきた」
 そのことが今の社会では、決して不利にはならない。企業という組織が、ダイバーシティを追求しているからだ。 ダイバーシティには、生得的な性差(ジェンダー)、人種、民族、後天的な宗教、学歴、婚姻状況、そしてLGBTといった性的少数者も含む。 こうしたダイバーシティを重視することは、企業にとっては決して美辞麗句ではなく、多様性を受け入れるということが組織や集団にとっての生存戦略だからだ。そして、個人もまた多様性を受け入れ、自分自身のマイノリティであることを重視する方が「うまくいく」のだと村上さんは言う。

うまくいく方法っていうのは2つあります。自分がマイノリティになってしまったときに。1つは、その場に溶け込む。2つ目は、違うことを認めて、私は違うんだよっていうことをすごく主張すると。私が1つだけ身をもって学んだことは、嫌なのに同調しちゃ駄目だということなんです。

 中学高校のときには、自分がマイノリティである、コンピュータが好きだということを口に出せなかった。勇気を出して「コンピュータ面白いんだよ」って言ったら、もしかしたらあの女子校の中で、コンピュータが好きな女の子が1人か2人増えたかもしれない。自分がマイノリティであるということを周りに伝えて多様性を作ることは、すごく大事なことだと村上さんは言う。

自分が物理の経験を持っているので、コンピュータサイエンスの人には分からない、プロジェクトの進め方の間違いや、研究の新しい突破口を見つけたときに、相手の側の言葉でなるべく伝えていくように心がけました。その結果、研究所の中でいろんな人をまとめるのが得意になったんですね。

 一匹狼が多くコラボレーションが難しい研究所の中で、村上さんが身につけた「多様性の理解」と「まとめる力」は、その後の震災ボランティアの活動の中でも活かされることになる。

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災害後、行動の起こし方がわからなかった。

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