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インテルジャパン元社長が語る“上に立つ者”の矜持

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シャープの事業部長、インテルジャパンの社長を経験し、現在は西岡塾などで後進の育成に力を注ぐ西岡郁夫氏に、一流の仕事の哲学についてお伺いした。

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社長と副社長の差は10倍以上違う?!

薮崎 もともとシャープの事業部長をされてから、1992年にインテルジャパンの副社長、1993年に社長に就任されましたが、役職の違いで感じることはありましたでしょうか。

西岡 社長と副社長での責任の違いは副社長と新入社員の差より大きいと言いますからね。

シャープの時を思い出しても、社長に業績が悪いとドヤサレテモ、副事業部長は頭をスクメテいれば嵐は過ぎ去りますが、事業部長には逃げ場がありませんからね。

西岡 郁夫(にしおか いくお) 1943年大阪市生。69年大阪大学修士課程修了しシャープ(株)入社。コンピュータ事業部長を経て92年インテル(株)入社、93年社長、US副社長、97年会長。 99年NTTドコモ等とモバイル・インターネットキャピタル(株)設立、社長。ベンチャーの経営指導に注力。07年(株)イノベーション研究所を設立し代表取締役社長、西岡塾塾長。現在16期。

  シャープの事業部長だった1990年に、世界最小・最軽量・最薄のノートパソコンを開発したのですが、最終的な利益計画のところでどうしても本社への利益が出せずに本部長の決裁を得られず、窮地に陥ったことがあります。発売さえすれば、想定以上に売れて利益を出せる自信があったので、社長が怖くて決済のできない事業本部長を飛び越えて社長に直談判をしました。

  社長室に一人で行って、『市場に出せば必ず売れます。結果として本社にも利益を出せます。チャレンジをさせてください』と当時の辻晴雄社長に詳しく説明してお願いしたとき、最後に辻さんは『勝手にせい』と言って決済書を床に投げました。私はとっさに、『有難うございます。頑張ります』と言って社長室を出ました。事業部長の社長への説得の結果をこれまで開発に関わってきた多くの社員がどれほど心配していたことでしょう。550名の社員の期待を肩に背負った事業部長の責任を考えると、全社員の生活の掛かった社長の肩はどんなに重いのか想像に難くありませんね。

薮崎 社員からすると社長が何をやっているのかは理解されづらいですよね。定期的に日本の社長の年俸が話題になったりします。

西岡 一般的に言って日本企業の社長の年俸は低過ぎるかも知れません。しかし、一方で業績に直接響くような決定をしていない社長、神輿に担がれて任期を無事に勤めることだけを願っている社長もいますから一概に言えませんが、良い仕事をして自信をもって適切な年俸を取って欲しいですね。年俸が問題なのではなく、仕事の中身が問題です。

 『社員数8万人』と組織が大きいことを自慢できるような時代は終わりました。これからは他社では出来ない価値のある商品、サービスを生み出し提供する中小企業が日本中にいっぱい出来ていくことが重要です。

インタビュアー:薮崎 敬祐(やぶさきたかひろ)株式会社エスキュービズム代表取締役社長 2006年にエスキュービズムを創業し、IT、家電、自動車販売など様々な事業を展開。あったらいいなではなくなければならない領域に、新しい仕組みを提案している。

【アンディ・グローブ回顧録】飛行機の搭乗で感じたインテルらしさ

薮崎 インテルはどのような組織風土だったのでしょうか。

西岡 インテルはフェアな組織風土の会社でしたよ。特に当時CEOだったアンディ・グローブは自身がハンガリーから命からがらアメリカに亡命してきた人で、大学で学んで博士号を取り、インテルのCEOとして出世していくことを受け入れたアメリカという社会に感謝をしていたと思います。だからすべてに亘ってフェアな会社でした。

 一つだけエピソードをお話しますと、ラスベガスでのCOMDEXという当時世界最大の
コンピュータ・ショーからサンフランシスコに帰るとき、たまたまアンディと一緒になって同じ飛行機に乗ることになりました。インテルは社長も新入社員も同じエコノミー席です。
アンディと一緒に後ろの席に向かおうとしていたら、前方のファーストクラスに陣取っていた若い社員がはーい、アンディと言って、アンディに声をかけてきたのです。インテルの若い社員でした。その社員にアンディは『君、アップグレードしてもらったのか、いいなぁ』と声をかけて、自分はエコノミー席に普通に歩いて行ったのです。日本の会社だとなかなか見られない光景だったので驚くとともに、インテルという会社の面白さを感じましたね。

薮崎 ちょっとしたシーンに組織のそうした雰囲気は出ますよね。そのフランクさはいい面も悪い面もあると思いますが、仕事ではいい方に働いていたのでしょうか。

西岡 仕事では社員の尊敬を一身に集めていましたよ。役職は果たすべき職務のためのランクであって、人間の優劣を示すものではありません。『実るほど頭を垂れる稲穂かな』を我々はいつも意識しなければなりませんね。

 ちょっとした小話ですが、アンディと朝打ち合わせをしていたら、守衛さんから内線がかかってきたんです。守衛さんがアンディ、あなたの自転車には車輪が4つ付いているがと電話してきたのです。駐車場がいっぱいだったので、アンディが駐輪場に自分の車を停めたようなのですが、それを見つけた守衛さんは当然のようにアンディに移動を命じました。アンディはゴメン、ゴメンと走って行きましたよ。

 日本だと会長社長の駐車置き場が名前付きであったり、黒塗りの車に運転手付きで、、、ということが常識になっていますね。あれで、週末のゴルフにまで行く人までいますね。

本記事は提携サイト『異端会議』(http://itankaigi.com/)の一部転載です。

 本記事の続きはこちらの「異端会議」のページをぜひご覧ください。


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