SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

翔泳社の本 (AD)

世界の一流企業人がリーダーシップを習得する人気メソッドが書籍化、『12週間MBA』で学べること

  • Facebook
  • X
  • Pocket

 従来のMBA取得プログラムから時代遅れの理論や現場で役に立たない知識を徹底的に排除し、目の前のビジネスシーンで使えるメソッドを12週間で習得できるAbilitie社の人気プログラム「the 12-week mini-MBA program」。このMBAプログラムをまとめた書籍『12週間MBA』が、Biz/Zineを運営する翔泳社から発売中です。今回は本書で何が学べるのかを紹介します。

  • Facebook
  • X
  • Pocket

 本記事は『12週間MBA 現代のビジネスをリードするために必須なコアスキルを身につける』から抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。

序章

 航空機エンジン、医療機器、風力タービンにはどんな共通点があるだろうか? 十分と言えるほどの共通点はない。ゼネラル・エレクトリック(General Electric:以降GE)の取締役会は2021年11月にそう判断して、アメリカを象徴するこのコングロマリットを3つの会社に分割した。

 GEほどアメリカ企業を象徴する会社はない。1892年に創業されたGEは、ダウ・ジョーンズ工業株価平均指数の最初の構成企業の1つであり、当時のほかのメンバー企業とは違って、100年以上そこにとどまっていた。2000年には株式市場評価額が6000億ドルを超え、世界で最も価値の高い会社となった。

 GEの絶頂期にCEOを務めたジャック・ウェルチに対し、同世代の意欲的な経営者たちは畏敬の念を抱いた。ウェルチの指揮のもと、GEは卓越した経営の見本とみなされた。そしてGEのリーダーシップ開発カリキュラムは、幹部研修のゴールドスタンダードとして高い評価を受けていた。2008年、私たちはウッドパネル張りの会議室で、トレーニング・ソリューションの1つをGEの企業リーダーシップ開発チームに売り込んでいた。まるでジュリアード音楽院のオーディションを受けるティーンエージャーのように、膝を震わせながら。

 だが、その時点(2008年)でGEの絶頂期はすでに過ぎていた。2000年のドットコム崩壊のあと、株価が最高水準に戻ることはなく、世界金融危機によってさらに落ち込んだ。Stock Analysisのような市場データによると2000年から2020年のあいだにGEの株式市場評価額は6000億ドルから1000億ドルにまで減少した。CEOのラリー・カルプと取締役会が会社を3つに分割したのは、この価値崩壊の状況を打開するためだった。

 この分社化は、はたして正しい経営判断だったのだろうか?

 意見は分かれるだろう。おそらくGEの取締役会でもそうだったはずだ。本当の答えは知りようがない。3つの後継企業のすべてが、その後見事な業績を上げたとしよう。だが、分社化していなかったらもっと業績がよかったのではないだろうか?

 あるいは最終的にどの会社も失敗するにしても、もし1つにまとまったままだったなら、その終焉がもっと早く訪れていたかもしれない。また「業績が上がる」とは何を意味するのだろうか?

 分社化が正しい選択だったかどうかを判断するために、後継企業3社の業績を個別に、あるいは全体として測定するのに使えるような評価値はあるのだろうか? 株式市場評価額? もし市場評価額が評価値となるのなら結果はいつわかるのだろうか?

 こうした疑問に対する簡単な答えはない。だがそうした疑問そのもの、 それとGEが直面した決断が「事業経営とは何か?」という本質を表している。GEの下したようなビジネス判断には、以下のような事柄が関わっている。

(1)価値を創造するための調整

 マネジメントの基本的な役割は、多くの、おそらくは数十万人の人々の行動を調整することで、個人としてよりも多くのことが達成できるようにすることだ。コングロマリットとしてのGEの歴史を見ると、全体が個々の総和よりもつねに大きいのが当然とは言えないことがわかる。そうであるときもあれば、そうでないときもある。GEの取締役会は2021年に、「そうでない」と判断したのだ。

(2)他者を通した実行

 取締役の決定は、第一歩にすぎない。それを実行するのは何年も掛かる大変な仕事だ。その決定に同意していようがいまいが、何千もの人たちが部門の分割に関与した。分割をうまく実施しないと顧客の喪失や訴訟といったあらゆる種類の問題に直面することになる。その過程で、独創的な新しいソリューションを必要とする新たな問題も発生した。そしてそうした仕事はすべて、通常の業務(ジェットエンジン、医療機器、パワータービンの製造というささいな仕事)を中断せずに続けながらこなさなければならなかった。

(3)不確実な状況下での決断

 GEの取締役会が決断を下す前に結果を予測することは不可能だった。そして決断を下したあとも、別の選択肢を取っていたら結局はよくない結果に終わっていたと確実に知る方法もない。

(4)勝者と敗者の指定

 決断を下した人たちが最悪の結果に直面することはなかった。移行にともなう軋あつ轢れきのなかで、新しい仕事を見つけなければならない人もいたかもしれず、前職よりいい仕事が見つかるとは限らなかった。定年を先延ばしにしなければならない人もいたかもしれない。それでも、もし取締役会が分社化しない道を選んでいたとしたら、同じような苦難に耐えなければならない人がいたはずだ。

 だが、いずれにしても、カルプやほかの取締役たちは、ラーメンやキャットフードで生き延びることはできなかっただろう。

 GEの分社化は、数十万人の人々と数千億ドルの資産に影響をおよぼす、壮大なスケールの決断だった。私たちがこれほど重要な決断をする機会はほとんどない。だが、ハイテク製造業から建物の保守管理までのあらゆる業界、人事管理から研究開発までのあらゆる機能部門、そして社員が10人以下のスタートアップから多国籍企業までのあらゆる組織において、経営者たちは基本的に似たような課題に取り組んでいる。

 本書は、どんなマネジメントの地位にも適用できる、時代を超えた普遍的な知識やスキルに焦点を当てている。

本書の概要

 これから12週間を掛けて本書を読むことで、読者はいくつかの概念を理解し、それを読書会の場や友人・同僚たちとともに探究する時間をもつことができる。だがそれだけではなく、仕事と生活において、ほかの冒険に挑む時間も十分にある。

 以下の概要は、主として、読者がいったん「休学」したあとで本書に戻ってくる際に参照する要約として活用できる。また、読者のこれまでの経験により、どの章を流し読みしたり飛ばしたりしても大丈夫かを判断する際の指標としても役に立つだろう。

 パートⅠは、企業のスコアボードに関連している。価値とは何か、どのように価値を創造するか、そしてきちんと成功しているか、それらをどうやって測定できるかを学んでいこう。

 第1章は、パートⅠの概要であり、株主価値と呼ばれる持続可能なキャッシュフローの源泉と、その3つの基本的なドライバー(原動力)である収益性、成長性、安全性について分析する。

 第2章から第4章では、それらのドライバーを1つひとつ精査する。

 第2章は、収益性を顧客のために創出された価値と、カスタマー・バリュー(顧客価値)を提供する際に消費された資源の観点から定義する。そして、収益性が損益計算書のなかでどのように報告されているかを見てから、収益性を上げるためにどんな方策を用いることができるかを検討する。価格(顧客が喜んで支払う額)とコスト(顧客価値を生み出すのに必要な額)をきちんと区別することが重要となる。

 第3章ではビジネスの規模を拡大させる重要性について説明する。また、市場の成長、マーケットシェアの拡大、新規市場への参入の違いを明確にして、企業がこれらの方策をどのように活用できるかを検討する。

 将来の成長を確定した未来として語ることはできない。語れるのは予測だけだ。予測とは、世界がどう発展するかについてのストーリーだ。投資家というのは、より信頼できるストーリーをより高く評価する。投資家の信頼は第4章のテーマであり、そこでは企業が(最終的には現金配当の支払いというかたちの)「約束」を履行する能力に対する投資家の信頼という観点で、安全性を定義している。キャッシュフローの予測可能性は、収益性や成長性とちょうど同じように、価値創造への重要なインプットとなる。

 第5章から第7章では、キャッシュフローに関する投資家の信頼というレンズを通して、ほかの2つの重要な財務報告書である貸借対照表とキャッシュフロー計算書を見ていく。

 第5章では、過去の取引の記録として、またさまざまなステークホルダーに対する将来のコミットメントの記録として、貸借対照表を分析する。

 第6章では、キャッシュフロー計算書の概要を説明し、「会計利益」と「キャッシュフロー」という厳しい現実のきわめて重要な違いに焦点を当てる。

 第7章では、企業の収益とキャッシュフローを乖離させる要因を示して、その洞察を深める。一見したところ成長を続けていて儲かっている企業が、実際は崩壊に向かっているという、奇妙な現象が起きているかもしれない。

 企業価値に大きな影響を与える価値のドライバーである収益性、成長性、安全性を検討したあと、第8章から第10章では、それらの相互作用について見ていく。

 第8章では、コスト構造(ビジネスモデルにおける固定費と変動費の相対的な重要性)について説明しよう。このコスト構造によって、企業の成長プロファイルが収益性の向上(または低下)に、あるいはリスクの増加(または削減)にどう結びつくのかが決まってくる。

 第9章と第10章は、企業評価の裏に潜む謎をあきらかにする。

 第9章はかなりテクニカルだ。企業の価値評価の背後にある枠組み─ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法【訳注/将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を評価する方法】─と、企業の本源的価値を計算するためにそれがどう使われるかを説明する。DCFを扱うことに疑問を持たれるかもしれないが、上位概念を理解するためには必要な内容だ。

 第10章は、あらゆる地位や機能部門のマネジャーが、収益性、成長性、 安全性という3つのドライバーを通して、いかに価値につながっているかを説明する。株主価値が、企業のより幅広いステークホルダーたち(投資家はもちろんのこと、顧客、従業員、コミュニティ、環境まで)の価値創造について教えてくれることについての考察でパートⅠを締め括ろう。

 パートⅠで紹介する概念は、利益追求型の組織では、組織の活動や意思決定がそれなしにはほとんど理解できないほど浸透している。それでも、仕事中につねに注意を引きつけることはないかもしれない。

 パートⅡのトピックについては逆のことが言える。パートⅡでは、第11章を土台に、他者を通して組織目標を達成し(第12章から第15章)、他者と協力して決断を下すことで複雑な分業体制における活動を調整する(第16章から第19章)。

 信頼はビジネスの基盤であり、信頼関係の構築には適切な期待値の設定が不可欠だ。これらは、パートⅠにおける投資家の信頼に関する議論を支えるテーマでもある。

 第12章ではそうしたテーマを取り上げて、しっかりとパートⅡの中心に据え、信頼構築に欠かせない基本的要素である経営者と従業員の関係を掘り下げる。調整された組織行動はその関係をよりどころとしている。

 第12章では相互の期待値を設定するための実用的なヒントを提供するのに加え、パートⅡに繰り返し登場するもう1つのテーマを紹介する。それはヒポクラテスの誓いの一節である「何よりも、害をなしてはならない」の経営者バージョンだ。

 日常業務において、信頼関係に「害をなす」最大の機会は、第13章のテーマである「フィードバック」を与える際に生じることがある。だが、現在の業績を達成し将来のための能力を育てるという2つの目標をマネジャーが追求するにはフィードバックが不可欠だ。

 第14章では、従業員のエンゲージメントとモチベーションに注目している。やはり「何よりも、害をなしてはならない」を最良の指針とする分野だ。ここでは、さまざまな内発的モチベーターとその維持方法、そして細心の注意と敬意をもって従業員に最良の成果を出させるために、それらを活かす方法を検討していく。

 リーダーシップは、非常に大きくてわかりづらいテーマだ。第15章では、リーダーシップの一般的な解釈のいくつかを経営と対比させてざっと見たあと、社会的ジレンマとされる集団行動の問題を克服するリーダーシップが要はどういうものかについて、見落とされている解釈を紹介する。

 第16章では、経営における主要課題の1つ、組織のあらゆる機能部門や地位における足並みのそろった意思決定とは何かをあきらかにする。その際は、チームを組織の基本的な意思決定単位とみなしている。そして、不確実性のもとでは、意思決定の質はその成果の質では決まらないことを示す。良質な集団的意思決定には、良質なプロセスがともなうものなのだ。意思決定を構造化するために、意思決定のための基本的モデル(定義し、 検討し、実行する)を紹介し、以降の章はこの3つの要素をもとにして議論する。

 第17章では、定義づけの段階を取り上げる。私たちの一般的な方法は、 意思決定の各段階で何がうまくいかないかをあきらかにするというものだ。チームは重要な意思決定の機会を逃したり、あまり重要でない意思決定に時間を掛けすぎたりする傾向がある。また魅力的な選択肢を見落として、誤った選択肢に固執し、利用可能なデータを活用できなかったり、分析麻痺【訳注/意思決定の過程で情報や選択肢が過剰になることで決断を下せなくなる状態】に陥ったりする。ここでは、こうした失敗を克服するためにチームが使うテクニックを検討する。

 チームが意思決定する際によく陥る落とし穴は、誰によって、どのようになされるかを明確にできないことだ。第18章では、3つの審議方法(合意、多数決、単独の決定者)に注目し、それぞれのメリットとデメリットを比較する。実行段階については、明確に定義されたプロセスを一貫して適用することで、たとえ全員が合意していなくても、チームが足並みをそろえていられるかを検討する。全員が合意していないのはよくあることで、全会一致などありえないと言ってもいい。

 第19章では、意見の相違が、集団の意思決定における障害ではなく、むしろ避けずに育むべき強力なツールであることを説明する。このためにも、いくつかの簡単なテクニックを提案し、チームにおける多様性の大切さを強調している。結論となる第20章では、「数値」と「人」という2つの要素を組み合わせることで、何が経営を価値とやりがいのあるものにするかに関する考えを、経営にともなう喜びや失望とともに、読者と共有する。

12週間MBA 現代のビジネスをリードするために必須なコアスキルを身につける

Amazon SEshop その他

 
12週間MBA
現代のビジネスをリードするために必須なコアスキルを身につける

著者:ビョルン・ビルハルト、ネイサン・クラックラウアー 翻訳:小金輝彦
発売日:2025年4月16日(水)
定価:2,970円(本体2,700円+税10%)

本書について

Abilitie社の「あらゆる経営者、あらゆる業界、あらゆる管理職」で必要とされるスキルと知識の習得に焦点をあてた、大人気プログラム“the 12-week mini-MBA program”のメソッドがついに書籍化!

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
翔泳社の本連載記事一覧

もっと読む

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X
  • Pocket

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング