2085年という“超未来”を見据えた全社運動「TANAKAルネッサンスプラン」
──本日は、田中貴金属の「超未来構想プロジェクト」について、未来創り本部のお二人と、その伴走支援を手がけた「Ridgelinez」のお二人にお話を伺います。まずは、自己紹介からお願いします。
田中培仁氏(以下、敬称略):Ridgelinezの「Creative Hub」をリードしているチーフクリエイティブディレクターの田中です。
Ridgelinezは、お客さまの変革を推進するために2020年に富士通グループの出島として設立された総合プロフェッショナルファーム(コンサルティングファーム)です。私がリードするCreativeHubは、成熟企業の全社変革を支援するために2024年1月に発足したクリエイティブ集団です。Creative Hubは、社会と企業、経営と現場など、企業活動を取り巻くあらゆる分断を、クリエイティブをハブに、人を起点にしたビジョン提唱型のアプローチで解消し、「愛されつづける社会をつくる」ことを目指しています。
平田昌大氏(以下、敬称略):田中と同じCreative Hubでクリエイティブマネジャーを務めている平田です。Creative Hubでは各プロジェクトのリード/アートディレクションを務めており、超未来構想プロジェクトでも全体設計から成果物の品質管理まで一貫して約3年間伴走させていただいています。
吉田一晴氏(以下、敬称略):私は田中貴金属グループの未来創り本部で本部長を務めている吉田です。未来創り本部は「TANAKAルネッサンスプラン(以下、TRP)」の推進を目的に、2023年に立ち上がりました。
今回お話しさせていただく超未来構想プロジェクトの背景にはTRPがあります。TRPとは、田中浩一朗(現・代表取締役社長執行役員)が2020年に社長に就任したのをきっかけに、2021年に策定した全社運動です。2085年の創業200周年を目標に、持続可能な社会や超長期の企業経営の実現を目指して、社員一人ひとりの自律性・創造性を醸成する組織変革を提唱しています。
TRPの特徴は、トップダウンによる組織やカルチャー変革ではなく、ボトムアップによる行動様式の実現を志向している点です。田中社長はTRPを「活動」ではなく、「運動」と位置付けており、社員一人ひとりが互いに刺激しあって未来に向けた組織変革に挑むムーブメントにしたいと考えています。そのため、TRPの推進を手がける私たちも「いかに社員たちの自発性を刺激できるか」という点を意識して取り組みに臨んでいます。

米井佑輔氏(以下、敬称略):私も吉田と同じく未来創り本部でTRPの推進役を務めています。具体的には、超未来構想プロジェクトにおけるコンセプトの設計から企画、施策運営、モノづくりまでの幅広い領域を手がけています。
未来構想を社員それぞれが自分ごと化するために
──本日のテーマである、超未来構想プロジェクトについてご説明いただけますか。
米井:超未来構想プロジェクトは、TRPの目標地点であり創業200周年にあたる2085年の超未来を社員の意志によって構想し、ステークホルダーとの対話を通じて実現へと近づけていくプロジェクトです。Ridgelinezさんとともに、幅広い部門の社員たちを巻き込み、2085年の未来像やそれを具現化したコンセプトルーム、Webサイトを作り上げていきました。

田中:「2085年」というお題をいただいたときは、正直なところ驚きました。
吉田:そうだと思います。ご相談している私たちも内心では「本当にそんな超未来を構想することできるのか⋯⋯」と半信半疑なところはありました。
平田:超未来構想プロジェクトは時間軸があまりにも長大なため、外部環境の変化から未来像を逆算するといった一般的な未来洞察のフレームワークではうまく機能しません。そのため、プロジェクトにあたっては、まず未来構想の起点となる事象や価値観を模索しました。そのときに、着目したのが、田中貴金属さまがTRPで掲げる「社員と社会全体の物心両面の幸せを創出」というフレーズでした。
Ridgelinezは「人」を起点にすべての変革を発想することをビジョンに掲げており、田中貴金属さまの「物心両面の幸せ」を追求する価値観には非常に共感するものがありました。そこで、プロジェクトにあたっては「2085年における幸せとは何か」を出発点に、超未来を構想することに決めました。