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経済と文明の転換期に必要な“東洋思想”

予測不可能な未来を切り拓く東洋思想的発想──イノベーションのための3つのシフトチェンジ

第3回

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ものごとの本質を追い“顧客インサイト”をつかむ──「見える世界、データ主義」から「見えない世界、直観主義」へ

 前回、「機械的数字論」から「人間的生命論」へのシフトチェンジをご紹介しました。そこでもお伝えしましたが、現代を生きる私たちは「見えるもの」を信頼してきました。とりわけビジネスの世界では、「データ分析」「データ管理」のように、数字を使ってものごとを表すことが重視されてきました。

 一方で、「見えるもの信奉」や「データ信奉」の限界も現れはじめています。データを使って未来を予測するといっても、データはあくまでも“過去”なのです。

 猛烈なスピードで変化している現代では、過去の成功は全く意味を持たなくなっています。テクノロジーの急速な発展もあり、「過去と全く異なる未来」がやってくるでしょう。だからこそビジネスの世界では“イノベーション”が求められており、「過去から連続した未来」ではなく、「全く新しい未来」を描く必要があるのです。

 こうした現実を、スティーブ・ジョブズは次のように表現しています。

人は形にして見せて貰うまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ

 ジョブズが生み出したiPhoneはその後またたく間に世界を席巻しました。今では当たり前になっていますが、スマートフォンが当たり前になる世の中など、誰が予測したでしょう。

 すでに広く言われていることではありますが、大きなヒットを狙い、新規事業の成功を目指すのであれば、データや既存の顧客を振り返っても意味がありません。“顧客インサイト”という言葉が出てきているように、顧客の心の底までを見抜き、それに対して「あなたの欲しいものはこれでしょう」と提案することが大切です。「見えないもの」を見る、先回りして未来を感じ取ることができる感性こそが成否の要になるのです。

 見えない未来を感じ取るためは、東洋思想の精神が重要になります。東洋思想では、目に見えない“ものごとの本質”の探求を重視してきました。老子は“道(タオ)”と表していましたが、言葉で表すことのできない、すぐに理解することのできない“本質”を追うことを説いています。

視之不見、名曰夷。聽之不聞、名曰希。搏之不得、名曰微。此三者不可致詰、故混而爲一。(之を視れども見えず、名づけて微と曰う。之を聴けども聞こえず、名づけて希と曰う。之を搏えんとすれども得ず、名づけて夷と曰う。此の三者は致詰す可からず。故より混じて一と為る)

 ここでは、“道(=本質)”は、ただ見るだけ、聞くだけ、触るだけでは到底至ることのできないものだと説いています。

 説明可能な理屈だけでは未来を描くことは困難な時代になっています。そこで老子の時代から東洋思想に根付いている「見えないものを感じる」ことが、これからの未来をいち早く見抜き、描くためには必要になるのではないでしょうか。

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矛盾を乗り越え、イノベーションを起こす──「細分化・専門化型アプローチ」から「包括的アプローチ」へ

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この記事の著者

田口 佳史(たぐち よしふみ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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