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シン・鬼十則

日本型イノベーションに適した仕組み「出島組織」とは──鳥巣氏が語る、起業家精神と「シン・鬼十則」

第6回 ゲスト:Better 鳥巣智行氏

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 昭和の時代に電通躍進の原動力となった「鬼十則」を、イノベーションの源泉となる「シン・鬼十則」として再発見する本連載。元電通マンで鬼十則を愛する蓮村俊彰氏が、令和の現代において「シン・鬼十則」的な活躍をしている方々に、その取り組みや考え方を伺っていきます。今回のゲストは鳥巣智行氏です。2008年、電通に新卒入社し、コピーライターとしてクリエイティブ局に配属され、広告の企画制作で活躍。その後、広告制作のスキルを、広告以外に活かすことをミッションとする部署を経て2021年に独立。現在は、出身地である長崎で株式会社Betterを立ち上げ、ビジネス、地域、教育などをより良くするプロジェクトに多数参画していらっしゃいます。

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電通のクリエイティブに宿る「仕事を創る」起業家精神

蓮村俊彰氏(以下、蓮村):鳥巣さんは、私と同じ平成20年(2008年)に電通へ入社されています。クリエイティブ局などで活躍された後、電通時代に“出島”ともされる電通Bチームに所属していたご経験をもとに、かつて本当に出島があった長崎の地歴を活かしたイベント「出島組織サミット」を開催。2024年2月には、『出島組織というやり方 はみ出して、新しい価値を生む』を共著で上梓されました。今日は、同書で書かれている「出島組織」という仕組みと鬼十則との関連性を伺いながら、大企業の変革のヒントを探っていきます。

 まず、なぜ鳥巣さんは電通を志望されたのでしょうか。同期を見渡しても軍隊式の雰囲気が強く、鬼十則を信奉している人も多かった中で、鳥巣さんには当初からそのような印象はありませんでした。

鳥巣智行氏(以下、鳥巣):高校時代からある写真家のことが好きだったのですが、その方が電通の写真部で働いていたことを知り、漠然と電通が気になっていました。その後、大学進学を機に長崎から上京し、千葉大学工学部デザイン工学科にてデザインを学びました。そして、大学院時代に電通のインターンシップを受けたことをきっかけに、コピーライターを志望するようになり選考を受けることを決めました。

 入社までは、あまり電通の評判を調べることはしませんでしたし、鬼十則の存在も知りませんでした。それよりも、自分が実際に接した電通の人たちが、みんな楽しそうに仕事をしているのに惹かれたんです。

蓮村:鬼十則というのは一見、私が電通で最初に所属していた営業局や、マスメディアからの広告枠買い付けを行う媒体局の専売特許のように思えるのですが、鳥巣さんはクリエイティブ局に配属されて、鬼十則をどのように受け止めたのでしょうか。

鳥巣:正直、最初はピンと来ていませんでした。電通に入って、部署は関係なく、仕事への楽しさと同時に、プロとしての厳しさも持ち合わせている人たちの一員として自分が働く自覚が芽生えるうちに、鬼十則を徐々に理解していったように思います。

 実は、蓮村さんが電通の社内研修で発表した論文にも触発され、鬼十則の1番目の「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。」を特に意識していましたね。蓮村さんは「この文言は“起業家精神”を表現したものであり、そこに立脚すると2番目以降のルールは有効に機能する一方、“請負業者”のようなマインドで鬼十則を受け入れると、単なるブラック企業になる」と見立てていましたが、それは非常に納得感がありました。

 従事していた広告制作でも、営業局や上司から依頼された仕事をただこなすだけではなく、いかに仕事を創っていくかを意識していました。それ自体に創造性を見出し、おもしろみを感じるような雰囲気がクリエイティブ局全体にあったと思います。

 その後、2012年に配属された「ビジネスデザインラボ」は、広告クリエイティブのスキルを使って広告以外のものを作ることがミッションでした。今でこそ珍しくない発想ですが、当時は電通における“出島”である新規事業部系のチームに入ったことで、仕事を自ら創っていく意識がさらに強くなりました。

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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