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テクノロジーが変える畜産業

「A5ランク」偏重の裏側にある牛肉産業の欠点──テクノロジーが提示する新たな評価軸とは?

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 SDGs(持続可能な開発目標)が注目されるようになりました。いま世界のリーダーたちは、“2030年までに達成すべき17の目標”を定めて実行しています。私が事業を行っている畜産業界をSDGsの視点から見ると「極めて厳しい状況」と言わざるを得ません。  本連載では、私が携わっている“牛”“食肉”に焦点を当て、畜産の現状と、テクノロジーによる解決策、そして畜産業の未来について考えていきたいと思います。

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「和牛ブーム」に隠された日本の牛肉に対する誤解

 一時期の盛り上がりから少し落ち着いたものの、日本では“和牛”“ブランド牛”“熟成肉”といったワードが街中に並ぶほどの牛肉ブームです。「日本の牛肉は世界に誇れる宝だ」「世界に対して輸出を強化していく」といった内容をニュース等で見ることも少なくはありません。「世界の中で日本の牛肉が秀でて優秀である」という過剰な表現を目にすることもあります。

 日本の牛肉が世界で高く評価されていることは事実ですし、歓迎すべきことです。しかし、日本の牛肉が世界に与える影響は世に言われているほど大きくありません。2017年には世界で6,625万トンの牛肉が生産されましたが、そのうち日本が生産した牛肉は47万トンと、約0.7%しか占めていません。また、輸出量でみると、世界の総輸出量が935万トンなのに対して日本の輸出量は2,700トン、わずか0.028%でしかないのです。この事実から考えれば、日本の牛肉が世界に及ぼすインパクトはとても小さなものといえるのではないでしょうか。

 これに対して「日本の和牛は美味しさで優っている」という意見があるかもしれません。しかし、“美味しさ”とは、非常に抽象的な価値基準で、ある人は美味しいと感じるものを、別の人は美味しいと感じないといった、個人間の差異が生じます。また、「A5ランク」のように牛肉の価値を示す指標がありますが、これは味ではなく“見た目”と“歩留まり”を評価するものです。

 たとえば、「A5ランク」の和牛に代表される「霜降り(サシ)」は、美味しくて価値のあるものとされています。しかし、霜降りに対する海外での反応は様々です。柔らかく溶けるような食感と甘い香りを楽しむ方もいれば、まるでフォアグラのようで好ましくないと評価する方もいます。

 ワインやコーヒー豆、カカオなどでは、味を表現する言葉が多くあります。これらの市場では、「美味しい」や「柔らかい」という表現ではなく、“どのように”美味しいのかを表す語彙が発達しているのです。一方、牛肉に関しては、味に関する語彙が豊富とは言えません。味覚に対して未成熟な市場であるため、現在、牛肉の生産に関して深刻な問題が発生しています。

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“見た目”偏重がもたらす弊害

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この記事の著者

中山 智博(ナカヤマ トモヒロ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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